【第94回】「古代研究」

NHK
2022年10月25日 午後7:31 公開

今回、スポットを当てるのは『川口恵里(ブリュッケ)』

<プロフィール>

演出・イラスト:川口恵里(ブリュッケ)

多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

川口恵里さんに“「古代研究」折口信夫”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回の「古代研究」のアニメパートを担当するにあたって難しいと感じたことの一つは、 この難解な書の鍵概念と言われる「マレビト」をどのように描くかという点でした。番組 でもあったように、「古代研究」の「古代」という言葉は、純粋に年代としての古代では ないため、特定の年代に絞って服装等を描かないようにすることと、神と人との境界が必ずしも明確でない考え方ということもあったので、どこまで人を感じられるように描くか?という点についても悩みました。

悩んだ末に、顔や肌を黒い影として描くことで、表情や性格、人種、人柄の見えない姿として描き、服装についてはディレクターと話をし、蓑と笠を被っているだけとしました。 個人的感覚ですが、少し怪しくすらみえる「マレビト」も 簑と笠をかぶっているだけで 悪いものでは無い気がしますし、それを身につける「マレビト」も なんとなく、人の手 によって守られているように思いました。

全体の絵を構成する際も、そんな人でも神でもあるような表現で描いた「マレビト」が、恐れられるような存在ではなく、ただ、そこに実在するだけと感じられるように静かな絵作りを心がけたつもりです。

次に、難しいと感じたのが、「マレビト」がその土地に住む住民たちのしあわせを願い唱える「呪言」をどのように描くかという点でした。「呪言」は元々、意味をなさない音の反復だったものが、徐々に意味や音が整理されて、「五七五七七」のような律分の形をとっていったようです。 この変化をアニメーションで描くにあたり、最初は、波長が揺らめいている様を描き、それが楽譜のような感じに変化することで、音階を持っていくイメージを出し、最後に、 「五」や「七」の漢数字を出すことで、律分に進化していくことを表現してみました。

以上の箇所も 少し気にして見て頂けると嬉しいです。

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