【第83回】金子みすゞ詩集

NHK
2022年1月24日 午後5:04 公開

今回、スポットを当てるのは『ケシュ#203』

<プロフィール>

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)

仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに「金子みすゞ詩集」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回のアニメーションは、生前詩集を刊行できなかった金子みすゞに捧げるような気持ちで作りました。

アニメーションは、金子みすゞの生い立ちパート、詩の解説パートの2つで構成されています。生い立ちパートで大切にしていたのは、事実を忠実に再現することではなく、みすゞが見ていた世界を想像し、フィルターを通して表現することでした。

まず色彩設計では、大正時代の童話雑誌を参考に、コントラストを高く、ビビットな色合いを使用し、黒の代わりに濃紺を使用することで時代の軽やかさを表現しました。

詩の解説パートは、雑誌の紙面をイメージして枠をもうけ、また、登場する人物は岡本帰一のようなシルエット絵にするなど抽象性を出しました。『詩のなかの人物は開かれている』という意味も込めています。

金子みすゞ自身のキャラクターについては、従来の儚い女性像よりも確固たる文学者であることを強調するために、強い意志を感じられる瞳にしました。その大きな瞳には、初めは温かな故郷仙崎の景色が映りこんでいましたが、しかしやがて、未来の象徴である帆船が消えた水平線が映るようになります。

女性を周縁化するのではなく、ひとりの人間として正当に評価する。ただ、それだけのことがこんなにも難しい世の中で、金子みすゞの詩はより一層響いてきます。その詩が伝わる一助になれば幸いです。

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