【第99回】「精神現象学」

NHK
2023年5月22日 午後4:29 公開

今回、スポットを当てるのは『ケシュ#203』

<プロフィール>

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)

仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに“「精神現象学」ヘーゲル”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

哲学における世界三大難書の一つである、ヘーゲルの「精神現象学」。

今回のキーでもある多様な見方を表現するために、すべての背景を、一面的ではない、色が重なりあうようなデザインでつくりました。

抽象的な題材の場合、頭で言葉を理解するよりも先に、目で直感的に理解できるような構成を心がけているのですが、今回はいくつかのパートで構成を作り直した箇所があります。絵コンテの段階では上手く表現できていると思ったものが、実際に動かしてみると意図が伝わりにくく、メタファーの意味を捉えられなかったため、絵コンテから内容を大きく変え、実際にキャラクターを動かしながら考えることになりました。さすが三大難書でした。

加えて、より理解を深めるため、人形のようなキャラクターのリアクションを細かいニュアンスまで仕上げることで、シーンとして描きたい方向性を明確にしています。

「精神現象学」では、当時の登場人物がほぼ男性とあって、現代パートに出てくる人物は積極的に女性にしました。

過去の作品に取り組む際、これは常に向き合わなくてはならない課題であり、古典を通して今をどう生きるかを考えるにあたって、そのなかで誰も排除せずに、表現してゆく方法を模索していきたいと思っています。

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