【第100回】「ショック・ドクトリン」

NHK
2023年6月27日 午後5:54 公開

今回、スポットを当てるのは『川口恵里(ブリュッケ)』

<プロフィール>

演出・イラスト:川口恵里(ブリュッケ)

多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

川口恵里さんに“「ショック・ドクトリン」ナオミ・クライン”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

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今回「ショック・ドクトリン」のアニメを進めるに当たって、全体がドキュメンタリーの雰囲気でもあることから、シリアスな印象の画作りをベースとして作業を進めました。ほぼ全編を通して、自然光を浴びた通常の世界ではなく、「闇」をベースに描き、その闇に浮かび上がる人物はある程度一般化するために顔ははっきり描かないが、姿形はサーモグラフィのような表現で逆に強い存在感が与えられるようなビジュアルにしました。

また、電気ショックを用いた人体実験の箇所ですが、ここはそもそも精神疾患の患者への治療方法が一線を越えて利用されたところなので、敢えて被験者の過去のトラウマについては精神疾患の患者がイメージできるような具体的な記憶を描きました。治療法が次第に度を越えて悪用された流れを感じ取って頂けたら嬉しいです。

ニューオリンズのチャータースクールの箇所においては、解雇された公立学校の先生たちが、大きい箱を抱えて瓦礫の教室を去り チャータースクールの前を通りますが、そのチャータースクールではすでに新しい先生が教えています。解雇された先生たちが持っている箱には、彼らが従来の教育制度で先人から引き継ぎ自分たちでも培ってきたノウハウも入っていて、この新制度への急転換がそれらを置き去りにしたかもしれないというイメージを表現したつもりです。

最後のモーケン族の話が出て来た時は、より具体的に風土や海を描き込むことで闇より光の面積が増え明るい画になるようにしました(当事者の方々にはいろいろな思いがあり、すべてが明るく解決したわけではないと思いますが…)

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