今回、スポットを当てるのは『川口恵里(ブリュッケ)』
<プロフィール>
演出・イラスト:川口恵里(ブリュッケ)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。
川口恵里さんに“「独裁体制から民主主義へ」ジーン・シャープ”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。
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「独裁体制から民主主義へ」というタイトルを見ると、自分には遠い存在というか少し他人事のように感じる方も少なくないのではとおもいます。少なくとも、私は、その一人で、正直この本が民主主義の国向けに出版されているのが少し不思議でもありました。
ただ、番組中にもあった老人と猿のエピソードにふれると、独裁体制というのは国家に限らず会社や地域コミュニティなど、私達が所属する環境においても存在しうることを感じますし、本書にある非暴力行動の中には、そのような環境でも実践可能そうにみえるものもあり、段々と自分にとっての本書の価値というのに気づくようになりました。
そう言ったことも含めて、今回のアニメを進めるにあたって特に意識したのは、特定の国で起こっている事象と見えるような描き方を極力避けたという点です。
デモや抗議運動に参加したり、また、それにより当局に拘束される市民を沢山描きましたが、それらを描く上で、年齢、国籍、性別などが偏らないよう全体的に抽象的な人型にしつつ色や柄を沢山使いカラフルな現代の身近なこととして見えるよう意識しました。
もし、番組を見ている方々にとって、自分ごととして考えるための後押しの一要素となったら嬉しいです。
また、もう一つ意識して描いたのは、軍隊や警察です。
独裁者と軍隊・警察等の機関は、一枚岩のように見えますが、軍隊・警察に所属する人々は、家庭では一般の人であり、常に独裁者に忠誠心を持っているとは限りません。
そんな個々の集合体でも、ひとたび職務についた彼らは、市民から見れば 恐ろしい存在になります。そんな様子を個人を意識させずに描くために、重々しいテクスチャ等を用い、どこか仮面をかぶってるような恐怖を感じられるようにしました。