「100分de名著」では、放送の3倍強の収録が行われ、抜群に面白いにもかかわらずカットされてしまうトークも数多くあります。ゲスト講師からも「もっとしゃべりたかった」「あの話が面白かったのにもったいない」という声も。そこで、こぼれてしまったとっておきの面白解説、企画から制作過程までの裏話など、テレビでは語れなかった珠玉のお話を、司会の名物講師+プロデューサー+ゲスト講師で徹底トーク。もちろん番組を知らない初めてのリスナーに対しても取り上げる名著の基本情報なども丁寧に紹介し、ラジオ番組だけで完結して楽しめる内容でお届けします。
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5年ぶりの「ゆりこ’s EYE」です!皆様、いかがお過ごしでしたか?
いつも「100分de名著」をお楽しみいただき、ありがとうございます。
この度、ラジオ特番「101分目からの100分de名著」に進行役として出演しました。
収録当日は、午前10時にNHK入りし、収録前の軽い打ち合わせ、収録、お昼休憩などを挟んでまた収録を行い、全て終わったのは夕方5時過ぎでした。ラジオでも、テレビでも、番組は放送時間の何倍もの時間をかけて作り上げられるということを思い出しました。収録した音声を編集するのにも、膨大な時間がかかります。番組制作は織物のようだと私はよく思います。全体のデザインから始まり、様々な色の糸を丁寧に織り込んで細部まで神経を使う、根気のいる作業です。
私は、NHKでアナウンサーとして20年ほど勤めましたが、今回のようなラジオのトーク番組は、実はほとんど経験がありませんでした。ラジオの7時のニュースのキャスターなど、ニュースを読む仕事は多かったんですけどね。ですから、どんな雰囲気で収録が進むのか心配でもありました。
テレビと圧倒的に違うのは、スタジオの「リラックス感」。テレビ番組では3、4台のカメラが常に自分の方を向いています。「見られている」「撮られている」という意識が頭にありつつ話をするわけです。ゲストの方も私共も、緊張感が抜けません。ところがラジオはカメラなし。スタジオによってはガラス窓のすぐ向こうにスタッフが見えるのですが、今回は窓も無く、テレビモニターに小さくスタッフの様子が映るのみでした。ふと気づけば、ちょっと広めのレストランの個室(あ、NHKのスタジオなので豪華さはありませんが)でお話を伺うような状態に。
他の人の視線を気にせずにするトークは、なんと自由で楽しいことでしょう!打ち合わせで決めていた質問事項以外にも、「いやそうは言っても、、、」と食い下がってみたり、自分のこともついペラペラと話してしまったり。話している人の表情が見えない、というのは、番組をお楽しみになっている方にとってはマイナスの事もあるかもしれません。でも話す方からすると、顔を見られていないからこそ、ちょっと照れ臭いことも、ちょっと言いにくい事も口にしやすくなる効果があるような気がしましたよ。ゲストのお三方も、時にはちょっと肘をついて「うーん」と宙を見ながら考えていらしたり、身振り手振りをつけて答えてくださったり、「100分de名著」で拝見していたお姿より、少しリラックスした表情でお話いただけたのが、とても嬉しく貴重な時間でした。
そんなリラックスした様子が一番見られたのが、皆さんからの質問コーナーだったんです。普段の番組では難しい、視聴者の皆さんとの繋がりを感じられたからこそ、今回のラジオ特番は活き活きとしたとしたものになった気がします。ご質問やリクエストをお送りくださった皆さん、本当にありがとうございました。また、こうした機会があるかしら?その日まで、私も番組の一ファンとして、楽しみたいと思っています。
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【放送時間】
2023年5月4日(木)8時5分~9時55分/ラジオ第1
【司会】
若松英輔(番組最多出演の批評家)
島津有理子(100分de名著・元司会者)
【アシスタント】
秋満吉彦プロデューサー(番組担当者)
【ゲスト】
安田登(能楽師)
中江有里(俳優・作家・歌手)
斎藤幸平(経済思想家)
写真撮影:新田みのる(JETSET)