名著120「砂の女」安部公房

NHK
2022年5月23日 午後4:52 公開

安部公房「砂の女」は、戦後文学の最高傑作の一つとも称される作品です。世界20数か国で翻訳、戯曲化や映画化も果たし、今も国内外で数多くの作家や研究者、クリエイターたちが言及し続けるなど、現代の私たちに「人間を縛る生の条件とは何か」「自由とは何か」を問い続けています。番組では、戦後日本文学の代表者ともいえる安部公房(1924-1993)の人となりにも触れながら、代表作「砂の女」に安部がこめたものを紐解いていきます。

舞台は、とある海岸に近い砂丘の穴の中に埋もれかかった一軒家。休暇を利用して新種のハンミョウを採取すべく昆虫採集に出かけた学校教師・仁木順平は、女が一人で住むこの家に一夜の宿を借りることに。ところが翌朝外界へ出るための縄梯子が何者かによって取り外されていました。彼は、村人たちによって砂を掻き出す作業員として幽閉されたのです。その後、さまざまな方法で脱出や抵抗を試みるも、ことごとく挫折。やがて彼はその環境に順応し始めるのでした。果たして砂の穴に閉じ込められた仁木の運命は?

漫画家・文筆家のヤマザキマリさんによれば、この小説には、過酷な現実から逃れようともがく主人公の模索を通して、絶えず自由を求めながらも不自由さに陥ってしまう私たち人間の問題が描かれているといいます。それだけではありません。安部が戦後社会の中で苦渋をもって見つめざるを得なかった「自由という言葉のまやかし」が「砂の女」という作品に照らし出されるようにみえてきます。この作品は、私たちにとって「本当の自由とは何か」を深く見つめるための大きなヒントを与えてくれるのです。パンデミックによって、移動や交流の自由が著しく制限されている私たち現代人にも示唆することが多いといいます。

番組では漫画家で文筆家のヤマザキマリさんを講師に迎えて「砂の女」を現代の視点から読み解き「私たち人間が逃れようのない生の条件」や「自由の問題」「不条理ともいえる社会の中で人はどう生きればよいか」といった普遍的な問題について考えます。

<各回の放送内容>

第1回 「定着」と「流動」のはざまで

【放送時間】

2022年6月6日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】

2022年6月7日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ

2022年6月13日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

※放送時間は変更される場合があります

【指南役】ヤマザキマリ(漫画家)

【朗読】町田啓太(俳優)

【語り】小口貴子

「砂の女」の舞台は海岸に近い砂丘の中に埋もれかかった一軒家。休暇を利用して新種のハンミョウを採取すべく昆虫採集に出かけた学校教師・仁木順平は、女が一人で住むこの家に一夜の宿を借りることに。そこで繰り返されるのはひたすら砂を掻き出す単純労働。常に流動し定着を拒む「自由の象徴」と仁木が思い描いていた「砂」は、この場所では人間の自由を阻む壁として立ちはだかっていた。第1回では、安部公房の人となり、「砂の女」の執筆背景などにも言及しながら、安部公房が描こうとした、人間がもたざるを得ない限りない自由への憧れと、それを阻害するものとの葛藤について考える。

第2回 揺らぐアイデンティティー

【放送時間】

2022年6月13日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】

2022年6月14日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ

2022年6月20日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

※放送時間は変更される場合があります

【指南役】ヤマザキマリ(漫画家)

【朗読】町田啓太(俳優)

【語り】小口貴子

女の家で一夜を過ごした仁木は、翌朝、外界へ出るための縄梯子が取り外されているのに気づき驚愕する。彼は、村人たちによって砂を掻き出す作業員として幽閉されたのだ。彼は女に「外へ出て自由になる気はないのか」と問うが、女は超然とその気がないことを示すのみで、まるで自ら自由を手放しているかのよう。女の態度に苛立ちつつ、仁木は脱出や抵抗を試みるが、ことごとく挫折。あげくに自分が忌避していたはずの戸籍や所属証明を楯に女や村人たちを恫喝するのだった。第2回は、「砂の女」という作品に象徴的に描かれた「アイデンティティ―の揺らぎ」を読み解き、自由へのあくなき拘泥が逆に人間を束縛するという逆説について考える。

第3回 人が「順応」を受け入れるとき

【放送時間】

2022年6月20日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】

2022年6月21日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ

2022年6月27日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

※放送時間は変更される場合があります

【指南役】ヤマザキマリ(漫画家)

【朗読】町田啓太(俳優)

【語り】小口貴子

仁木の三度目の脱走は成功したかに見えたが村人たちに捕縛される。手ひどいダメージを受けた彼は、徐々にその環境に順応し始める。やがて、日々繰り返される砂との闘いや日課となった手仕事に対してささやかな充実感を覚えるまでに。仁木は、最初は拒絶していた砂丘の村を、生きていくために受け容れようとする。そこにはどんな心境の変化があったのか。第3回は、過酷な環境に順応していく仁木の姿を通して、「何かに帰属しなければ生きていけない人間の性」について考える。

第4回 「自由」のまやかしを見破れ!

【放送時間】

2022年6月27日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

【再放送】

2022年6月28日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ

2022年7月4日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

※放送時間は変更される場合があります

【指南役】ヤマザキマリ(漫画家)

【朗読】町田啓太(俳優)

【語り】小口貴子

もはや外界に出ることを諦めたかにみえる仁木は、ある作業の虜になる。鴉をつかまえるための罠づくりだ。だが、その仕掛けは、全く予想もしない機能をもつに至る。常に水が不足する穴の底にあって蒸留水を溜める装置として使えることがわかったのだ。そんな折、女が子宮外妊娠していることが発覚、緊急入院のため女は外へ運び出されることに。どさくさの中で縄梯子はかけられたまま放置された。逃亡する最大のチャンスだったが、仁木は外へ出ようとはしなかった。果たして仁木の選択の意味とは何だったのか? そして完全に現実社会から失踪した仁木は、果たして「自由」を得たといえるのか? 第四回は、仁木の創造行為や最後の選択の意味を問うことを通して、私たちにとっての「自由」の意味をあらためて考察する。

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