【制作でこだわった点、もしくは、苦労した点】 これまでの１年間の取材で、私がかかわっただけでも３人の方がお亡くなりになりました。そうした現実を目の当たりにして、終末期、食べることの難しさを痛感しながら、日々悩んで、悩んで取材やロケを進めてきたように思います。 生と死が混在するなかで、当初思い描いていたことが覆ることも日常茶飯事。立ち止まってもしょうがないので、とにかく現場に足を運び考えようと、カメラを回さない時でも取材相手のもとに通い続けました。そうした足掻きの中で、本当に小さな発見を自分なりに大切にしながら、番組を作るうえでの考えをまとめていったように思います。 【取材をする中で印象に残った言葉】 在宅医療チームの谷合久憲医師が言っていた「食べる、食べないではなくて、食べてもらう過程を家族と共有することが大事」という言葉が印象に残っています。常々、谷合医師は「食べる取り組みは、結果ではない」ということを強調されていました。それは取材を始めた当初、なかなかその意味を理解することができませんでした。ただ取材を進めていくうちに、この取り組みの本質的な部分は、谷合医師の言葉に表れている通り、食べるための過程を通じて患者だけではなく、家族にも、何か喜びを与えるということなのだと、理解できるようになりました。病気で食べることがつらそうにしていた人が、一口をほおばることで笑顔になる。それは本人の満足感だけではなくて、日々を支える家族にとっても大切な瞬間につながっているのだと、取材を通じて感じることができました。 【番組の見どころ】 登場する人たちの“表情”に、ぜひ注目してほしいと思います。食べる取り組みを通じて変化していく患者さんはもちろんですが、家族や、医療チームのメンバーも含めて“表情”の豊かさが印象的な番組です。