【制作でこだわった点】 ＲＹＵＪＩさんが、父親の“故郷で米作りを再開したい”という思いを初めて知るシーン。家族それぞれの意見がぶつかるのですが、お父さんの思い、それを“難しい”というお母さんたちの意見、どちらの気持ちも良くわかり、福島の「正解のない現実」を突きつけられた思いでした。 番組づくりを通して自問自答したのは“故郷とは何か？”です。まだ若く、就職で地元を離れ、実家にもたまに帰るくらいの自分。故郷はいつでも帰ることができる当たり前の存在でした。そんな当たり前のものを失った時、自分はどう思うのだろう？ＲＹＵＪＩさんやご家族のお話をうかがいながら、それをずっと考えていました。 【番組の見どころ】 ＲＹＵＪＩさんが故郷の浪江町を語る言葉からは、「風景や匂いや空気」が伝わってきます。それは、復興を表す様々なデータからは伝わってこない、そこに暮らしていた人たちひとりひとりの心の中にある、実感を伴った浪江町の姿なのだと思います。 それは、番組の中で、父親の止男さんの表情が、何よりも雄弁に語っています。多くを語らない止男さんですが、避難先での表情と浪江町を訪れた際の表情の変化は、どんなに言葉を使っても説明することができない、心の内を映しだしています。 そして、その言葉にならならない大切な思いを、何とかして伝えようとする時に、人は歌をうたうのかもしれません。 ＲＹＵＪＩさんのラップから、そして画面に映し出されるＲＹＵＪＩさんやお父さんの表情から、故郷とは違う「空」の下で生きざるをえない人々の切実な思いが、それぞれの「空」に生きるみなさんにも伝わることを願っています。