【取材のきっかけ】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　取材のきっかけは、去年の緊急事態宣言を受けて、東京の旅館ホテルを訪ねたことでした。 お話を聞くうちに、コロナ禍の厳しい現実と共に、“老舗宿屋”の方々が、戦後、東京の発展を支えてきた側面があることを知りました。特に、１９６４年の東京五輪が開かれた当時、高度経済成長の中で、宿屋は朝から晩まで働き詰めでした。そして、幾多の不景気を乗り越え、コロナ前はインバウンドの受け皿として期待されていました。しかし、新型コロナで客が去り、混迷の中で迎えた五輪。宿屋はどんな未来を描くのか、知りたいと思いました。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 【見どころ】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　緊急事態宣言下で開かれた東京五輪。開幕した直後から、当初の想定を超えて感染が拡大しました。その中で、澤の屋旅館の３代目・澤新さんは、先代の老い、次世代への継承という課題に直面します。その姿を見つめていると、単に「客が来なくて大変だ･･･」というだけではなく、コロナ禍で、私たちは“誰のために”、“何のために”頑張るのか、それを考えさせられます。私たちが本当に大切にすべきものとは何か？東京五輪とは何だったのか？宿屋の姿を、少し自分と重ね合わせながら見て頂けたらと思います。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【制作で印象に残ったこと】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宿屋を取材していく中で、特に印象に残ったのは、地域や同業者とのつながりを大切にしながら、「生業」を営んでいる姿でした。緊急事態宣言が発出され、東京に人が来ない中でも、お互いの店を紹介し合ったり、町内会で支え合ったり、都市からは消えようとしているコミュニケーションがそこにはありました。まさにこのコロナ禍だからこそ、「つながりを大切にする」というシンプルな命題を、私たちは改めて意識する必要があるのではないかと思います。宿屋の姿の中に、そのヒントを感じて頂けたら幸いです。