全国各地、「そこでしか見られない」杉本博司のアートワーク

NHK
2022年7月10日 午前9:00 公開

「小田原文化財団 江之浦測候所」(神奈川県小田原市)

7/10「杉本博司 江之浦測候所奇譚(きたん)」放送詳細はこちら

日曜美術館HPでは放送内容に関連した情報を定期的にお届けしています。こちらは7/10放送「杉本博司 江之浦測候所奇譚」に合わせたコラムです。番組では杉本博司が自らの集大成として取り組んでいる江之浦測候所にスポットをあてましたが、HPでは日本の各地にある、杉本博司関連の「その場所でしか見られない」作品について紹介します。

小田原文化財団 江之浦測候所(神奈川)

番組で紹介した江之浦測候所は、事前予約の上で見学が可能です。定員入れ替え制のため、希望する来館日の2日前までにオンライン予約が必要です。詳しくは「小田原文化財団」ホームページでご確認ください。

神奈川県小田原市江之浦362-1
午前の部(10時~13時)、午後の部(13時30分~16時30分)
8月限定:夕景の部(17時~19時)(事前予約制)
休館日 火・水曜/年末年始/臨時休館日あり

究竟頂(東京)

「究竟頂」(東京都港区)(c) Hiroshi Sugimoto/Courtesy of New Material Research Laboratory

東京・表参道交差点近くのビル、2階に上がると古代の石室を思わせる空間が現れます。「究竟頂(くっきょうちょう)」と命名されたその空間の天井から吊り下がるのは全長6mにも及ぶ、ステンレス無垢材削り出しからなる杉本博司の彫刻。杉本が2002年から取り組んでいる数理模型(数式が表している内容を視覚化した立体模型のこと)の作品です。この模型は「負の定曲率局面」と呼ばれる双曲線関数を用いて数式化される「無限遠点」を視覚化していると言います。究竟は仏教用語で「無上」を意味する言葉です。

※建物のエントランス部分にある作品なので、いつでも自由に観覧可能です。

東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道2階

MOA美術館の展示空間設計(静岡)

「MOA美術館」(静岡県熱海市)の展示空間

2008年、杉本博司は建築家・榊田倫之と共同で建築設計事務所「新素材研究所」を設立。以降、建築的な作品は「新素材研究所」の仕事として発表しており、熱海にあるMOA美術館の展示空間設計もそのひとつです。言うまでもなくMOA美術館は尾形光琳「紅白梅図屏風」や野々村仁清の「色絵藤花文茶壺」など、名だたる日本美術の至宝と出会える場所。その展示室において鑑賞者は作品と自分の間にあるガラスの存在を忘れる程、作品に集中することができます。低反射ガラスが採用されていることと、鑑賞者の背後の壁全面が黒漆喰で塗られているからです。また展示室への入り口には敷き瓦とひのきの扉がしつらえられ数寄屋建築に誘われるかのよう。仏像の展示台には樹齢1500年の屋久杉が使われています。

静岡県熱海市桃山町26-2
休館日 木曜(祝日の場合は開館)
開館時間9時30分〜16時30分

両足院の襖絵と掛け軸(京都)

「両足院」(京都府京都市)の襖絵

京都の禅寺、両足院に2021年秋、杉本博司の「放電場」シリーズをモチーフにした計8面からなる襖絵が納められました。「放電場」は意図的に起こした放電現象をフィルムに焼き付けるという実験的な作品ですが、杉本いわく「描き出す模様が(中略)我が国固有の絵画形式である大和絵に似ている」(『アートの起源』より)。2021年の特別公開時、稲光の襖絵が周りを囲み、杉本が書で「日々是荒日」と書いた掛け軸も一緒に掛けられましたが、不安に見舞われることの多い日々のなか危機の時代に備える心を問われているかのごとく身が引き締まる、と副住職の伊藤東凌氏は語りました。

※今後の一般公開については調整中。情報は両足院ホームページで告知される予定です。

京都府京都市東山区小松町591

護王神社の神殿と地下石室(香川)

「護王神社」(香川県香川郡直島町)

杉本博司が建築を手掛けるようになった原点と言える作品。香川県の直島に古くよりある神社「護王神社」(起源は室町時代)の再生を行い2002年に公開しました。もともとの本殿は朽ち果てていたため、全面的に建て直されました。伊勢神宮の建物に代表される神明造の本殿に、古墳内部にあるような石室を組み合わせた神社を表現。地下の石室と地上の神殿を結ぶ階段は光で結ばれるとして、カメラのレンズにも使われる光学ガラスが使用されています。自然物が神の降臨する場所と考えられてきた日本の古代史を踏まえ、本殿の前には24トンの巨石が置かれています。地下の石室は、コンクリートのトンネルを通って訪ねることができ、また同じ道をたどって戻っていくと、いきなり目前に瀬戸内の海と光が目に飛び込んできます。

※本殿と拝殿はいつでも自由に鑑賞・参拝が可能。ベネッセアートサイト直島「家プロジェクト」の鑑賞チケットで10時〜16時の間は中に入ることが可能です。

香川県香川郡直島町本村地区

今回は5つのスポットを紹介しましたが、それ以外にもその場所だけで見られる杉本博司の作品があります。機会があればぜひ調べて足を運んでみてください!

展覧会情報

◎兵庫県姫路市の書寫山圓教寺で「圓教寺×杉本博司 Five Elements 五輪塔—地 水 火 風 空」と題した展覧会が開催中です。前期は8月31日まで。普段は非公開となっている圓教寺常行堂(国指定重要文化財)を会場に、本尊丈六阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)の周りに杉本博司の光学ガラス製五輪塔18基を配置するインスタレーションが公開されています。

また9月17日からの後期展示「Noh Climax 能クライマックス—翁 神 男 女 狂 鬼」では、圓教寺と姫路城を舞台とする杉本博司監督の映像作品《Noh Climax》を堂内で上映予定(12月4日まで)。同日より姫路市立美術館でも個展「杉本博司展 本歌取り」が(11月6日まで)行われます。