諏訪大社ゆかりの仏像

NHK
2022年11月13日 午前9:00 公開

諏訪大社上社本宮(かみしゃほんみや)

11/13「よみがえる諏訪の仏たち」放送詳細はこちら

日曜美術館HPでは放送内容に関連した情報を定期的にお届けしています。こちらは11/13放送「よみがえる諏訪の仏たち」に合わせたコラムです。

明治以前、日本では神道の神々と仏教の仏を一体のものとして考える、「神仏習合」と呼ばれる信仰のあり方が定着していました。神社の中に神宮寺と呼ばれるお寺があり、仏像が安置され神と共に信仰されていました。

しかし明治はじめ、新政府による神仏分離の政策がきっかけで神宮寺はなくなり仏像は散逸してしまいます。ただ仏像の一部は近隣の寺院にひそかに引き継がれ守られていたのです。「諏訪神仏プロジェクト」はかつて神宮寺内にあったそうした仏像たちに再び光をあて一斉公開する取り組み。本プロジェクトの実行委企画局長・石埜三千穂(いしのみちほ)さんに話を聞きました。

――なぜ神仏習合にスポットをあてようとされたのでしょうか。

諏訪大社に限らず日本全国において歴史の長い神社には必ず多様性があり複雑さを抱えています。もともと日本の信仰は神と仏は対立する概念ではまったくなく、渾然一体のものでした。外来のものを取り入れていく柔軟性を持っていたのです。今回のプロジェクトがそんな日本人特有の文化について見直すきっかけのひとつになればと思います。

普賢菩薩騎象像(佛法紹隆寺) 旧蔵/上社神宮寺普賢堂

――諏訪大社4座(上社本宮、上社前宮、下社秋宮、下社春宮)、関連の深い諏訪地域の寺や神社、さらに博物館も加わり27か所の寺社・ミュージアムを連携し、それぞれの場所でゆかりの神仏が公開されていますね。

ええ。地域調査を数年かけて行ってきて、諏訪大社の周辺寺院に引き継がれた仏像については一通り確認ができました。今回はそうした神宮寺由来の仏像といちどきに出会っていただくことができます。ただ時代の趨勢の中で失われた仏像も相当数あると思います。今回のプロジェクトがきっかけになって新発見のものが出てくるようなことがあれば画期的ですし、さらなる調査の足がかりになることが願いです。また神仏分離が引き起こした状況は諏訪だけではなくて日本全国に共通することですから、それぞれの地域で調査が進むきっかけにもなれば嬉しいです。

――諏訪大社は上社(かみしゃ)と下社(しもしゃ)からなりますが、その両方の本地仏(※)が揃うということでしょうか。

上社神宮寺の本尊であった普賢菩薩騎象像は佛法紹隆寺にて見ることができます。神仏分離の際にこちらに引き継がれました。ただ象の部分は鎌倉時代につくられたものですが、その上に乗っている本尊の普賢菩薩は室町時代の作です。織田信長の軍によって壊されたからです。織田軍が諏訪大社を焼き討ちにしたことはよく知られています。

十一面観音菩薩立像(平福寺) 旧蔵/諏訪大社下社秋宮三精寺 写真提供:諏訪神仏プロジェクト

下社の本地仏は千手観音です。その本尊は諏訪大社下社の近隣にある照光寺に引き継がれています。12センチほどの千手観音像なのですが厨子の中に納められており、通常は60年に一度だけ御開帳される秘仏。この度、特別に期間中に御開帳されることになりました。かなり貴重な機会と思います。

下社は秋宮(あきみや)と春宮(はるみや)の2つの宮がありますが、春宮だけの本地仏もあり、こちらは薬師如来。下諏訪市にある敬愛社宝光院に金銅薬師如来立像が引き継がれたとされています。今回は諏訪湖博物館の企画展の中で特別公開されます。

※本地仏(ほんじぶつ)……神仏習合において神道の神様は実は仏神であり、本来の姿である仏の姿が存在するという考え方。

――神仏分離前には諏訪大社・上社の境内に壮大な規模の神宮寺があったということですね。五重塔があって仁王門があって……。上社にあった仁王門から移されたという仁王像なども見ることができるそうですが。

仁王像(善光寺) 旧蔵/諏訪大社上社神宮寺仁王門 写真提供:諏訪神仏プロジェクト

諏訪の善光寺には上社の下り仁王門から移された仁王像と、上社本地仏・普賢菩薩騎象像の脇侍と伝えられる毘沙門天立像、不動明王立像も引き継がれていて、いずれも迫力満点です。仁王像は損傷が激しく痛々しい姿ですが運慶・湛慶作という伝承もあり、優品であることは見ればわかります。

――諏訪大社を周辺の寺院と一緒に巡るという観光のあり方が新鮮ですね。

展示は11月27日で終わりますが、今回、御柱祭の年に合わせての開催としましたので、今後も御柱祭のタイミングに合わせてこうした機会をつくれないかと話をしています。これまで諏訪観光において寺、仏像というイメージはあまりなかったのではないかと思いますが、この機に新たに諏訪観光の魅力のひとつとしても認識してもらえたら嬉しいですね。

※御柱祭(おんばしらさい)……平安時代から現代まで続く諏訪大社最大の神事。申と寅の年に行われる。諏訪大社の社殿の四隅にある御柱を建て替える神事で、その祭りには約20万人の氏子が参加する。16本のモミの巨木が山から里、里から宮へと運び出す勇壮なお祭り。

不動明王坐像及び両脇侍像(真秀寺) 旧蔵/諏訪大社上社如法院 写真提供:諏訪神仏プロジェクト

展覧会情報

◎11/27まで「諏訪信仰と仏たち〜諏訪上下社神宮寺由来仏像一斉公開~」が開催中。会場は、諏訪市博物館、下諏訪町立諏訪湖博物館、諏訪地域社寺25か所です。