MC・小野正嗣も大興奮!! シスコ・ワンダーランド

NHK
2022年2月20日 午前9:00 公開

1995年の作品「NHKがやってきた」を鑑賞する小野正嗣さん

2022/2/20放送「シスコ・パラダイス〜塔本シスコの人生“絵日記”〜」(再放送2/27)に合わせて、コラムをお送りします。

50代から独学で油絵を始めた画家・塔本シスコの絵に初めて触れた小野さん、あんまり面白くて途中で止める事ができなくなって、最初から最後まで一気に観てしまいました。
小野さんの熱狂が伝われば!と、そのときの様子を、番組では未公開ですがこちらで紹介します。

2/20放送「シスコ・パラダイス〜塔本シスコの人生“絵日記”〜」

小野:
これ、僕にはすごい不思議なんだけど。この人、女性に見えるんだけど、ヒゲ生えてますよね(笑)
いいなと思ったのが、ロケ隊も全員女性に見えません? 
割と描いているのが女性多くないですか?
登場人物を見ると、女性が主人公というか。
美術の世界でもどこでも、どうしても男性が歴史の中で場所たくさん占めてるじゃないですか。この人、絵の中に女性が多い。子どもたちも女性に見える。
中性的というか、より女性的な人物たちがたくさん描きこまれているところも素敵だなと思いますけども。

カメラマンも音声さんもみんな女性!?

世界と溶け合っていくシスコ

作品に添えられたシスコの文章を朗読する小野さん

小野さん、作品のキャプションボードに書かれた塔本シスコの文章を声に出して読み始めました。

『今日はぶらんしゅうでシスコのパアテイデスヨ トテモみな様たちがシスコのためにおいで下さいましテトテモニギヤカナハーテイデシタノでシスコモハリキリオテモヤンナドウタイマシテトテモタノシイパーテイテシタヨ ぶらんていの先生から、デコポンヲ下さいましたのでエにかキマシタヨウ。本當に有りがとう御ざいましたシスコはトテモウレシク思いました 夢のようデすヨウありがとうございます シスコ、はまた夢のようですよう さようなら、さようなら ありがとうさま シスコ、は何といつてよいやら シスコ、にはわかりませんですよう 夢がいつまでもさめませんようにおねがいします さようならしますね』

小野:
これ、文章すごくないですか。文章すばらしい。カタカナと漢字と、旧字もありますけど、ひらがなが、シスコさん独自のルールで、入れ替わりながら文章がつくられている。「さようなら、さようなら ありがとうさま シスコ」。シスコさんはたぶん、こういう風に書かないと消えてなくなるんじゃないですか。世界の中に溶けて広がって。世界を抱擁するような自我だって言いましたけど、むしろ何か抱擁すると同時に、すごく簡単に輪郭をほどいて世界の中に広がっていくような自我じゃないかと思うんですよね。
だから、「シスコ、はなんていってよいやら、シスコにはわかりません」、そういう風にその思考とか感覚の出どころをしっかり言わないと、消えてなくなるって。自分が。だから今描く、っていうか。
文章もそういう感じだなあと。こういう文章は書きたいけど書けないですよね。

塔本シスコが絵柄を手描きしたオリジナルの着物

小野:
えっ、自分で着物描いてるの?
本当だ、すごいすごい。
自分で描いてるんだ。
着物にこんなペイントできるんだ?
これって、アクリル絵の具でこんな描いていいんですか?
洗えないじゃないですか。
でも描かずにはいられないんだな、この人。
94年だから80歳くらいじゃないですか。
これ朝顔ですね。こっちはアゲハチョウ。これアゲハチョウなの?
独特の世界観。世界の見え方が。全然違うというか。

「私の絵」ではなく「これが私」

「枚方総合体育館前のコスモス畑」(1996年)の前で

小野:
絵に本当に、エネルギーがありますよね。
全部、絵の中にリズムがあって、フォルムと色が踊ってますよね。お互いに。
もちろん人物もいるんだけど、すべての存在が一緒になって、絵の中の世界をつくっている。
すべてが一つの絵をつくるのに参加してるって感じがしません? 全部が。
花も、人間も、子どもたちも、みんなで一緒にやっているというか。
それは素晴らしいですよね。
どの部分も、絵の中で、どの細部も、全体にとって必要であるっていうか、そういう感じがしますね。

「これが私の絵」ではなく、「この絵が私です、シスコです」って思っていたのではないか? そう語る小野さん

小野:
この人はこれを私が描きました、っていう意味で名前を刻んでいる感じはしなくないですか?
「私が描いた」じゃなく、「これが私」ってことなんじゃないですか。
絵が自分なんですよ。僕はそんな感じがしますけどね。
普通絵を描いたときに、つくった人は誰ですか、って言って、たとえばピカソとか描くわけじゃないですか。
でもこの人の場合は、この絵がシスコ。これはシスコです、ということだと思うんですね。
名前を描くということは、これは自分のものだと、たとえば鉛筆に、名前描くじゃないですか。筆箱とか、傘とか。
そのものが自分の所有物だってことを示すために描くわけですよ、名前って。
でもシスコさんの場合は、そのために名前が描かれている感じがしない。
じゃあ何のために名指す行為をしているかというと、「これは私です」「この絵は私、シスコです」っていうことを言っているんじゃないかと思うのです。
  
  

展覧会情報

◎「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記」は熊本市現代美術館で4/10まで開催中です。

その後、下記の美術館に巡回します。

岐阜県美術館 4/23-6/26
滋賀県立美術館 7/9-9/4