ロシアついに軍事侵攻 狙いは?日本への影響は?

NHK
2022年2月25日 午前0:00 公開

ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を開始。

アメリカのバイデン大統領は「ロシアは、破滅的な人命の損失をもたらす戦争を選んだ」と強く非難し、事態は最悪の展開となってしまいました。

ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長ロシアの狙い、日本への影響などをお聞きしました。

※2月24日時点の情報です。

【ウクライナ全土の軍事行動に衝撃を受けた】

ーーロシアによる攻撃が始まりました。

第一報に接して、率直にどう感じましたか?

兵頭さん:

軍事作戦は、ロシアが一方的に独立を承認した東部の2州に限られるのかと思っていたが、ウクライナ全土に対するかなり大規模な軍事行動に踏み切ったことに驚きました

昨年末からロシア軍がウクライナの国境周辺に集結していたので予想されていた事態だが、目の当たりにして衝撃を受けています

2014年のクリミア併合と比べたら、ウクライナ全土を軍事行動の対象にしていることからすると、現状変更のレベルが極めて高く、そこにも衝撃を受けています

【狙いはウクライナ軍の無力化か】

ーーロシアは「特別な軍事作戦」と呼び、アメリカは「戦争」と言いました。

現状をどういうことばで評価するのが適切でしょうか?

兵頭さん:

まだ事態が進行中で、ロシアもウクライナ側も情報戦を展開しているので、いま何が起きているのか、双方の情報に接する中で慎重に見極めないといけないと思います。

ロシア国防省の情報だけでもだめだし、ウクライナ政府の情報だけでもだめだし。

ただ、今のところ接している情報からすると、ウクライナの軍事基地をロシアは軍事攻撃していると。

プーチン大統領も「ウクライナの占領を目指しているわけではない」と言っている、と。

これもどこまで信じるかというのはあります。

ここからは私の印象とすると、ウクライナ軍の無力化をいまロシアがはかろうとしているのではないか

まずはウクライナの中の軍事拠点複数をミサイル攻撃したり、その他のやり方で制圧する。

制空権を獲得して、ウクライナ軍が反撃してきて、そこでロシア軍との間で戦闘が激化しないようにオペレーションやっているのではないかと想像します。

【ロシアは自衛措置を主張】

ーーこの先、どの程度深刻な事態になるとみていますか?

兵頭さん:

東部2州の独立を承認してロシア軍を投入するというのは、今回のウクライナ全土への軍事攻撃のひとつのステップであったと思います。

つまり2州を独立承認した上で、2州からロシアに軍事支援が要請されたというたてつけになっていて、東部2州のロシア系住民がウクライナ政府軍から攻撃を受けているというのがロシア側の主張です。

それに対抗する形、つまり自衛措置ということでウクライナ全土の軍事基地を攻撃している、これがロシア側の主張とみられます。

ロシアの言い分からすると、東部2州のロシア系住民を保護する観点からウクライナ全土の軍事基地を攻撃しているという言い方になっているので、東部2州の独立承認の問題と今回のウクライナ全土での軍事行動は関連している。

ロシアの言い分の中でここが関係しているのだろうと思います。

【ウクライナ全土に戦闘拡大の可能性も】

ーーロシア側の意図はどう考えますか?

兵頭さん:

いまのところ、東部2州のロシア系住民がウクライナ政府から危害を加えられているというロシア側の主張に基づき、ウクライナの中の複数の軍事基地をロシアが攻撃している、というのがロシア側の主張です。

ロシア側の主張からすると、それ以外のところを無差別に軍事行動するということにはならないだろう、と。

ただ、ウクライナ政府軍がどの程度、ロシア軍に応戦しているのかちょっとまだわからないです。

同時に軍事基地に限らず、市街地に戦闘の動きが拡大することがないのか。

拡大した場合には当然、そこにはロシア軍も軍事基地以外の市街地に軍事行動する可能性が出てきます。

その場合はウクライナ全土に戦闘が拡大していくという可能性は排除されない

今後どういう軍事的な動きが展開するのかに依拠するので、ロシアが考えるように軍事基地だけを無力化するのか。

想定外の形で戦闘が拡大していくのか。

予断を許さないと思います。

【ギリギリまでアメリカの出方を見ていた】

ーーなぜこのタイミングだったのでしょうか。

兵頭さん:

いつ起こってもおかしくない状況でした。

アメリカが示していたXデーの2月16日から少し遅れてしまった。

ここはギリギリのところでアメリカの出方を見ていたのかもしれないです。

一時期は(米ロの)首脳会談とも言われていたし、24日には外相会談が設定されていたというところから、水面下ではギリギリの外交的やりとりあって、外交的な打開の糸口を探していたのかもしれないです。

軍事侵攻のシナリオは相当前からあったと、いつでもできうる状況にあった上で、実際にいつ実行するかというのはアメリカとの関係でロシアの要求をどのくらい受け入れるのかというタイミングだったと思います。

【ロシアには“次のカード”】

ーーアメリカは軍事行動を抑止できませんでした。

欧米の次の手段は?

兵頭さん:

アメリカが軍事的に直接対じする可能性が少しでもあればロシアはこうした行動には出なかっただろうが、欧米としては経済制裁しか手段はなく、今後も、制裁の強化しかないと思います。

それもわかった上で、プーチン大統領は侵攻に踏み切っているとみられ、軍事行動を封じるのは難しいでしょう。

さらにロシアには自国や、同盟国であるベラルーシに核弾頭を搭載できる中距離や短距離のミサイルを配備するという“次のカード”があります。

特にNATOに対し、核も含めた軍事力の増強を示唆しており、それを封じられるのかも気になります。

【日本にとっても“対岸の火事”でない】

ーー日本はこの事態をどんな視点で見ればよいのでしょうか?

兵頭さん:

ひとことで言うと、日本にとっても“対岸の火事”ではないことだと思います。

アメリカの国際秩序の維持能力、警察能力が縮小し、東アジア、中国の問題に集中しようとしている状況にあり、プーチン大統領もそこを見据えて、ウクライナにアメリカが直接、軍事的な対応をしてこないということは踏んでいたのだと思います。

力による現状変更の敷居が低下した、と。

そのインパクトは東アジアも無関係ではないだろうと思います。

日本としてもG7諸国と連携しこうした現状変更の動きは容認できないとして厳しい制裁措置に入る必要があると思います。

※インタビューは2月24日に行われ、読みやすいように一部修正をしています。