🆕ウクライナ侵攻の中で…沖縄県民に愛される歌「月桃」に特別な思いを込めて

ニュースウオッチ9
2022年7月1日 午前11:00 公開

沖縄戦の悲しみを伝え、平和への願いが込められた歌「月桃」。

月桃は、沖縄戦が続いた4月から6月の時期に花を咲かせる沖縄では身近な植物です。

この歌は、毎年、慰霊の日が近づくと県内各地で歌われますが、ことしは、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、特別な思いを込めて歌われました。

(取材:沖縄放送局 西林明秀記者、ニュースウオッチ9 松田大樹ディレクター)

(沖縄慰霊の日の6月23日の放送を記事にしました。ニュースウオッチ9の公式ツイッターで歌の動画を公開しています。URLは文末に。全歌詞も文末に)

【誰もが口ずさむ平和の歌「月桃」】

「月桃」の歌について沖縄の人に聞くと…すぐに歌詞を口ずさんでくれる人がいたほか、小学生のころから知っていると話してくれる人もいました。

男性2人組も大きな声で歌ってくれました♪ いかに県民に愛されているかがわかります。

【歌に込めた思い】

この「月桃」の歌は海勢頭豊さん(78)が作詞・作曲しました。

海勢頭さんにとって沖縄戦は1歳半のとき。直接の戦禍は免れたものの、戦後5年以上たっても、家族の戦死の知らせを受け、悲しみに暮れる人々の姿があり、当時のことが記憶に残っているといいます。

海勢頭さん:「毎日のように葬儀の列が続いていく光景をみながら、いったい人間って何だろう、なんで戦争をするんだろう」

沖縄戦は、住民を巻き込んだ激しい地上戦で20万人以上、沖縄県民の4人に1人が亡くなりました。

海勢頭さんがこの曲を作ったのは今から40年前。激戦地となった沖縄本島南部を訪ねたときのことでした。一家が全滅した屋敷の跡で目にしたのが、力強く咲く月桃の花。沖縄戦の悲しみと二度と戦争を繰り返さない決意を込めてこの歌を書き上げました。

海勢頭さん:「この花はものを言わないさ、戦争の時も皆散っていったんだでも生き残った花たちもいた.物言わない花でもたくましく生きているので…子どもたちに伝えていかなければと思った」

いま、海勢頭さんはこの曲に込めた思いをさらに強くしています。変わっていってしまう、人の心。ロシアによる軍事侵攻と重ねていました。

歌詞の一節

「海はまぶしい喜屋武の岬に寄せくる波は変わらねど変わる果てない浮世の情け~♪」

「寄せくる波」のように変わらないものがある一方で、「浮世の情け」、人の心は変わりやすく、悲しみを忘れてしまえば、戦争が繰り返されてしまうと戒めた部分です。

海勢頭さん:「ウクライナのような状況が来るから気をつけなさいよということで4番の歌詞をつけたんだよ。勇気を持って戦争をしないという心を約束して初めて、沖縄戦で亡くなった人たちの鎮魂になると.約束なんだよ」

【子どもたちへ ウクライナ侵攻と重ねて】

慰霊の日が近づくなか、海勢頭さんは地元の小学校の音楽クラブで指導しました。子どもたちに歌詞に込めた思いを伝えました。

海勢頭さん:「沖縄戦というのは地獄のような戦争だった。鍾乳洞の中に何か月もこもってじっと耐えて終わるのを待っていたのですが、ちょうど今ウクライナで同じ状況です」

「いつの間にか気がついたら戦争のにおいがしてくるような危険が迫る状況を、“変わる果てない浮世の情け”としたんです」

いまも世界から無くなることのない争い。

海勢頭さんが沖縄から伝えたいのは変わらぬ「誓い」です。

児童:「一番大切にしている歌詞って何ですか?」

海勢頭さん:「“変わらぬ命変わらぬ心”これは平和を願って望んで生きる、きれいに咲く命、変わらぬ心、平和を願う心それを皆さんが歌って伝えていく役目をする」

慰霊の日の前日、沖縄の人たちからの寄付を集めてつくられた「月桃」の歌碑の除幕式が行われ、式典では海勢頭さんが指導した子どもたちが歌いました。

歌詞より

「海はまぶしい喜屋武の岬に寄せくる波は変わらねど変わる果てない浮世の情けふるさとの夏~♪」

児童:「今まで練習してきたように歌詞の意味に気をつけて歌いました」

児童:「いま戦争をしているロシアとウクライナだったりそれ以外にもこれから戦争を起こさないでって伝えたい」

海勢頭さん:「沖縄から戦争をしない方法を世界のひとたちに伝えたい。ウクライナにも早く届けたい。皆がはっと目覚めてくれればいいと思う」

青井キャスター:「これからも戦争を起こさないでと伝えたい」。歌い終えた、沖縄の小学生が言ったその言葉。そこから、沖縄が歩んできた歴史、そして、まさに今に向けた、平和へのメッセージだと受け止めました。

(ニュースウオッチ9の公式ツイッターで歌の動画を公開しています) (※NHKサイトを離れます)

「月桃」歌詞

月桃揺れて 花咲けば
夏のたよりは 南風
緑は萌える うりずんの
ふるさとの夏

月桃白い 花のかんざし
村のはずれの 石垣に
手に取る人も 今はいない
ふるさとの夏

摩文仁の丘の祈りの歌に
夏の真昼は青い空
誓いの言葉 今も新たな
ふるさとの夏

海はまぶしい喜屋武の岬に
寄せくる波は 変わらねど
変わる果てない 浮世の情け
ふるさとの夏

六月二十三日待たず
月桃の花 散りました
長い長い 煙たなびく
ふるさとの夏

香れよ香れ 月桃の花
永遠に咲く身の 花ごころ
変わらぬ命 変わらぬ心
ふるさとの夏
ふるさとの夏

取材:

沖縄放送局 西林明秀記者

2015年入局。松江放送局を経て、2020年から沖縄放送局で県政取材を担当。
取材のきっかけは、同世代のうちなーんちゅが月桃を歌っていて、「良い歌だ」と思ったこと。いま、上司には「沖縄のヒップホップを聴きなさい」と勧められている。  

ニュースウオッチ9 松田大樹ディレクター

2015年入局。長崎放送局で原爆や国境離島を取材。首都圏局で五輪パラ、コロナ禍の教育現場などを取材し、2021年からニュースウオッチ9。
ことしの猛暑を乗り切るため、「月桃」の取材時に初めてかりゆしシャツを購入。かなり気に入っている。