プーチン大統領 支持率8割超えの背景は 調査機関研究部長分析

NHK
2022年4月9日 午前0:00 公開

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ロシアのプーチン大統領の支持率が、ウクライナへの侵攻後、高まっているという調査があります。

ロシアの独立系の世論調査機関「レバダセンター」によると、侵攻前、60%台で推移していた支持率は先月(3月)、83%にまで上昇しました。

言論統制が行われていることもありますが、非常に高い数字です。

なぜいま、プーチン大統領はこれほどの支持があるのか。

レバダセンターの幹部で、ロシア社会について独自の分析を続ける、ロシア人の社会学者はどう読み解いているのか。

政府からの財政支援を受けない独立系の世論調査機関「レバダセンター」は、2016年、プーチン政権によって「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながら活動を続けています。

「レバダセンター」の元所長で研究部長のレフ・グドゥコフ氏は、、ロシア社会について独自の分析を続けています。

その「レバダセンター」が行っている世論調査で、「プーチン大統領の活動を支持する」と答えた人は、先月、およそ4年ぶりに80%を超えました。

グドゥコフ氏は、その背景に、戦争を恐れていた国民を「正義の戦争」へと駆り立てた戦略があると分析しています。

独立系の世論調査機関 「レバダセンター」 レフ・グドゥコフ研究部長:

「支持率が上がっているのは軍事的な脅威が高まっているからだ。NATOはわれわれの国境に接近し、新たな戦争の脅威となっている。国民は戦争を望まず恐れていた。そこでウクライナの“非ナチ化”ということばを作る必要性が出てきた。それによって国民が(政権の決定を)認めるようしむけたのだ」

「非ナチ化」という言葉

プーチン大統領がたびたび言及してきた「非ナチ化」という言葉について、グドゥコフ氏は第2次世界大戦で大きな犠牲を払いながらナチス・ドイツに勝利した歴史が、ロシア人としての誇りやアイデンティティーを支えているといいます。

プーチン政権は、ウクライナのゼレンスキー政権を一方的にナチス・ドイツになぞらえ、「非ナチ化」の必要性を繰り返し強調しています。

ウクライナ、ブチャでの惨劇について話し合われた、先日の国連安保理でも、ロシアの大使がこう発言しました。

レフ・グドゥコフ研究部長:

「プーチン大統領は“ナチズムとの戦いに勝利した”ということばを使えば、ロシア人の集団意識やアイデンティティーといった国民感情に訴えかけることができると考えています。実際、“ナチズム”や“ファシズム”ということばを使って、相手を批判するやり方はロシア社会をまとめる上で効果的です。こうした表現や、うそを並べたてての大衆の扇動が、プーチン大統領の政策を支持させるために不可欠だとみているのでしょう」

さらに、政権の意図をすり込むため重要な道具として利用されているのが国営メディアだといいます。

レフ・グドゥコフ研究部長:

「重要なのは、今回の軍事作戦を誰が支持しているのか、ということです。支持する人の多くは、高齢者や農村部に住む人たちなどで、彼らの唯一の情報源となっているのが、政権のプロパガンダを伝える国営放送なのです」

”怖いからこそ尊敬される国家”

グドゥコフ氏は、プーチン大統領の発想について、その根源には旧ソビエトの情報機関KGB=国家保安委員会での経験があると指摘します。

レフ・グドゥコフ研究部長:

「プーチン大統領はひねくれ者で、確固たる信念があるわけではありません。KGB出身の彼は軍の司令部などと手を組み、恐れられる強力な国家を夢みています。怖いからこそ尊敬される国家です。“恐怖による支配”こそが国家を形成すると信じていて、“核兵器を保持している”ことが世界から尊敬される理由になると考えています」

一方で、この発想こそ今回のウクライナ侵攻における“誤算”を生むことになったとも見ています。

レフ・グドゥコフ研究部長:

「全てを力によって解決できると考えているのでしょうが、そのために、国際社会の批判を軽視し、理解できなくなっています。欧米諸国は、時間をかけて、プーチン政権の危険性を認識するようになりました。そうした国々からの強い批判は、プーチン大統領にとって全くの予想外だったのです」

想定通りに作戦が進まない中、プーチン大統領はどう行動するのか。

レフ・グドゥコフ研究部長:

「都市を破壊するための空爆など、戦う必要がなくなったと確信するまで、攻撃を続けるでしょう。プーチン大統領はウクライナへの憎しみと異常なまでの執着によって、明らかに目が曇ってしまっていますから」

青井キャスター:

「怖いからこそ尊敬される国家」 情報や言論統制など、プーチン大統領の情報機関での経験をもとに、それが力での国家運営に反映されていると思うと、がく然とします。

田中キャスター:

そのロシアの国民に向けて、イギリスのジョンソン首相がひとつ手を打ちました。何かといいますと、みずからロシア語を使ってビデオメッセージを出したんです。この中では、「あなたたちの大統領は、戦争犯罪を行ったとして非難されている。彼があなたたちの名前のもとに行動したとは私は信じていない」と呼びかけているんですね。ロシアのような特殊な環境の中で、いかに事実を伝える情報空間を確保していくのかも、このたたかいでは、重要になっています。