トンガの大規模噴火 火山学者にインタビュー

NHK
2022年1月18日 午後6:37 公開

トンガの大規模な噴火 火山学者インタビュー

元気象庁の火山噴火予知連絡会の会長で、東京大学名誉教授の藤井 敏嗣さんに、どのように理解、受け止めているか、今後の見通しについて、中道洋司リポーターが聞きました。(インタビューは1月17日、オンラインで。読みやすくするために一部修正しています。)

Q今回のトンガの噴火、先生はどういった点に注目されていますか。

この場所は昔から噴火を繰り返してる場所ですよね。

もともと2015年ぐらいの噴火で、今回噴火した場所に火山島ができ上がっちゃった。

2つの島の間に海底から噴火して、そのうち海上に頭を出して火山島になってたんです。それが2015年以降も何回か噴火をしていて、昨年の12月から今月の初めにかけてもやはり噴火が続いてた。

その時点まではちゃんとした火山島として残ってたんですけど、今回の大きな噴火の前前日14日にやはりそこでやや大きめの噴火があり、終わったあと見てみると島がなくなってた。その後15日の噴火が起こったんですが、15日の噴火のあとの衛星写真を見ると東側の島が随分小さくなった。古い島ですよ。ですからかなり大きな火口を作った可能性がありますね数キロぐらいの。

Q先ほど先生大きな噴火と指摘していました。地球規模全体でこの規模というのはどれぐらいと捉えていらっしゃいますか。

噴出物の量がはっきりわからないので正確なことは言えないんですけど、ひとつの手がかりは、人工衛星ひまわりから見た噴煙の形、噴煙の大きさなんですね。

あれが大体半径200キロから300キロぐらいの間にあるようなんですね。

それぐらいだと一般に数立方キロから10立方キロぐらいの噴出物を出す。今までの経験的には、その間で正確にそれでもちろん決まるわけではないですけど、おおよそそれぐらいの大きさになるので、1991年にフィリピンで起こったピナツボの噴火に匹敵するかやや小さいかなって思いますね。

やや小さいかなって思うのは、今回の噴火は海域での噴火ですから、噴火の際に水を大分周りの海水を一緒にあっためて水蒸気になって、それで噴煙が大きくなりがちなんですよ。

陸上で噴火した時に比べればね、水の方が膨らみやすいので、それでやや大き目になってる可能性もあるので、ピナツボと同じサイズかあるいはそれよりも小さいんじゃないかっていう感じがします。これはあくまで火山灰量として、ちゃんとはかられたあとに決まることなんですけどね。

Qいま先生のお話を伺ってわかったのは、見た目ですごく大きいとても高い噴煙が上がったと見えたんですが、まず噴出物がわかって、より正確に言えるそういったことなんでしょうか。

噴火の規模というのは噴出物の量で普通は決めるんですね。噴火によってどのくらいのマグマが地上に出たのかということで、最終的に火山灰の量や何か分からないと決まらないですよ。

ピナツボの場合も、火山爆発指数という規模を表す表示があるのですが、5であるという人と6であるという人とまだ確定はしてない。

5立方キロメートルから10数立方キロの間のどこかだと思われるんですがなかなか決まらないんですよ。そういう火山灰の調査なんてのは、倍半分の世界であんまり精密なことを言ってもしょうがないですから。

Qこれもそもそもから教えてください。ピナツボ火山の指摘がありましたが、こういった規模の噴火というのは、例えば何十年1回であったりとか100年にいったいどういったぐらいのペースで、発生するのでしょうか。

今言った1立方キロを超えるような噴火で、10立方キロメートルかどうかというような噴火でしたら数十年に1回、あるいは100年に数回ぐらいっていう感じですかね。

世界中で見ればね。

これはすでに91年に1回やってますし今回を含めて2回でしたね。30年ぐらいの間にだからまあ一応平均的な値じゃないかと思いますけどね。

そうすると数十年に1回の規模で起きるということは、何かこう特別なというよりも、地球の歴史から見ると定期的に起きている1つというふうに感じます。そんなとんでもない噴火じゃないですよ。だからこの程度の規模かこれよりもちょっと小さいやつはもっと頻繁に起こってますからそんなに珍しいものではない。噴煙がかなり大きく上がって見えたんですが地球の歴史から見ると一般的。最近でもそんなもんですよ。91年に起こって今回その間にもうちょっとだけ小さい噴火もチリだとかLAなんかでしょっちゅう起こっていますからそういう点ではそれほど珍しくはない。

Q実際に今回トンガでこういった規模の火山噴火がありました。人々の生活の影響どういったことが挙げられますか。

これぐらいのことが起こると数十キロの範囲に火山灰だとか軽石やなんかを降らせることになりますからね。生活者は非常に大変だと思いますし、それに今回海域で起こった上で火砕流が出たかどうか、よくわからないんですけれども、火砕流が出て海の中にもし突っ込んだ場合に、それによって津波が起こることもあるわけですから。トンガの島で津波が観測されてますけれども、あれはそういうたぐいの、火砕流なのかあるいは海底で地すべりが起こったのか。あるいは火砕サージみたいなもので海面が変動したかよくわかりませんけれども、そういう火山の近くで起こった津波だと思いますね。日本に来た津波とちょっと違う。

Qその点具体的に教えていただけますでしょうか。

日本に来た津波というのは、随分離れたところで起こってますよね。それで同じようなことはアメリカの西海岸でも、カリブ海でも小さな津波が起こっている。非常に早い時期に起こってますから、普通の津波の伝わり方ではないですよね。ですからこれは今いろんな人が言っているように、空振によって、気圧変動によって津波が起こった可能性があります。けれどトンガのほうに行った津波はもっと早い時期に発生していて、多分トンガとフィジーのあたりに行ったのは海底地すべりか、火砕流か。火災サージによるものなのか、断定はできませんけど、海域のそばで噴火した時に起こる津波のたぐいじゃないかと思いますね。

Q噴煙がかなり大きかったという指摘もありました。この噴煙が上がることによって私たちの生活にどういった影響あると考えられますか。

噴煙が高く上がるってことは、高く上がった噴煙から、次は石や石のかけらだとか火山灰が降ってきますよね。ですから近いところだと、数キロ以内だと直接石が大砲の弾のように飛んでくるんですが、数キロを超えて飛んだものは、いったん上空まで噴煙によってもたらされて、あとは噴煙が広がるとき、あるいは風に流されたときに地面に向かって落ちてくるんですね。それが近い場所ですと比較的大きな数センチぐらいの石が降ってくることもありますし。それに当たるとけがをしたりということは十分にありえますね。それから細かい火山灰が降ってくると、植物も、たまった灰の量にもよりますけど、枯れてしまったりとか、農作物は非常に大きな影響を受けます。

Qこの噴煙が上がったことによって日本の上空に到達するなど、今後の見通しをどうお考えですか。

硫酸ミストって二酸化硫黄と水とがくっついたものですけれども、そういう非常に細かなミストがばらまかれたかによる。それ次第では今後例えば数年ぐらい気温が下がることはあるかもしれません。

Qピナツボ火山の噴火の時は。

翌年から2年間ぐらい平均で北半球の平均気温が0.3度ぐらい下がっている。年間を通した平均気温が。そうすると冷害が起こったり飢きんが起こったりするんですよね。

今回のものはいま報告されているものが正しいとするとピナツボよりはやや少ない、いやかなり少ない量しか上空に行ってないので、それほど温度が下がらないかもしれない。

それから細かい火山灰は、1週間ぐらいは地球の周りを上空を漂うことになりますから、例えばトンガの辺りだけではなくて、反対側の例えば南アフリカの辺りとか、そういう場所でも細かい火山灰が漂ってる間は、飛行機が飛べないというようなことかもしれません。そういう例は結構あって、チリで2011年に火山が噴火したときに、オーストラリアとニュージーランドの飛行機が数日後に止まってしまったこともありました。

ですから1週間ぐらいの間は、航空路は気を付けなくちゃいけない。

Q今のお話に重なるかもしれませんが、今後私たちがこの噴火で気をつけなければならない点、注目したほうがいい点は何か挙げられますでしょうか。

今回の噴火で、たぶん北半球の我々が影響を受けるのは津波ぐらいだと思いますね。

火山灰は南半球のほうではかなり影響するでしょうが、北半球にあまり来ることないんじゃないかと思いますね。

Q今後例えば、また数週間後に同様の規模の噴火が起きる可能性、噴火の予測はできるものなんでしょうか。

今の時点では何のデータもないのでわかりませんけどね。

一般的には、噴火は長く続くことが、で次にまだ起こるかもしれない。でもたぶん、おそらく15日がクライマックスではないかと思いますが、可能性としては、あの辺でさらに海底の陥没、今回の噴火がきっかけになって、カルデラみたいな陥没、大きな噴火に至ることはないわけではない。まだ可能性は残されてると思います。非常に小さいと思いますけど、まだ完全に治ってるかどうかはとてもいまの時点では言えない。

藤井敏嗣(ふじい・としつぐ)さん

東京大学名誉教授 NPO法人環境防災総合政策研究機構(副理事長 兼 環境・防災研究所長)、山梨県富士山科学研究所長。元火山噴火予知連絡会長。元東大地震研究所長、元日本火山学会長)。