ウクライナ情勢 オリガルヒ・ハンターの異名を持つ人物 インタビュー

ニュースウオッチ9
2022年5月26日 午後9:00 公開

プーチン大統領に近いとされ、欧米各国が制裁を強めている「オリガルヒ」と呼ばれる富豪たち。このところ不審な死が相次いで報じられています。

一体何が起きているのか、キーパーソンに話を聞くことができました。

(5月25日放送)

NHKプラスで6月1日まで視聴できます。

ダボス会議が行われているスイス・ダボスで取材に応じた、イギリスのビジネスマン、ビル・ブラウダー氏。

「オリガルヒ・ハンター」の異名を持つ人物です。

ロシアに関係する投資などを行うヘッジファンドを1990年代後半に設立。10年以上にわたりロシア財界との深い関係を築いた一方で、プーチン政権やその周辺で不正行為が横行している実情を目の当たりにし、追及を行うようになりました。

ブラウダー氏:

「私はオリガルヒたちの信じがたい汚職や詐欺、そして殺人を目にしてきた」

「私の顧問弁護士だったセルゲイ・マグニツキーはオリガルヒや官僚の不正を暴き、政権に拷問され、殺されたのです。私自身も2017年にはここスイスで拘束され、よく年にはマドリッドで、ロシアが出した令状により逮捕されました。いずれも、ロシアに送られることにはなりませんでしたが…」

オリガルヒの実態に精通するブラウダー氏。

現在は、欧米各国の政府や捜査当局に、対ロシア制裁についての情報提供や助言を行っているといいます。

「オリガルヒ」は、巨万の富を築いている超富裕層で、多くがプーチン大統領に忠誠を誓い、ロシア経済の中枢を占めています。

ウクライナへの軍事侵攻以降、欧米各国がオリガルヒへの制裁を発動。

世界中でオリガルヒが所有する「スーパーヨット」と呼ばれる豪華船が次々と差し押さえられています。

さらに、制裁の実効性を高めるため、2014年にプーチン大統領と離婚した元妻のリュドミラ氏や、娘のマリヤ・ボロンツォワ氏。それに、もう1人の娘のカテリーナ・チホノワ氏といったプーチン大統領の親族も制裁の対象となっています。

ブラウダー氏:

「プーチン大統領自身を制裁対象に加えても、あまり意味はありません。プーチンの資産はオリガルヒ名義で管理されているからです。だからこそオリガルヒの追及がプーチンを追いつめることになるのです」

「元銀行家、家族と自分を殺害」

ロシアの経済紙に掲載された見出しです。

いま、ロシアではウクライナ侵攻と前後して、オリガルヒの人々あわせて7人が相次いで死亡し、注目を集めています。

ブラウダー氏は、その背景について、こう分析します。

「私の経験から言いいますと、ロシアの富豪が『死亡した』とされた際、大体は何者かに殺されたということを意味します。自然死や自殺、心臓発作などとされますが、たいていの場合は殺害なのです。制裁の影響で、縮小した国内の資産を奪いあった結果、殺人に至っているのだと考えています」

制裁が厳しさを増す一方、それを逃れようという動きも出ています。

中東、UAE=アラブ首長国連邦の最大都市ドバイでは…。

豪華なリゾートマンションや戸建て住宅が立ち並ぶこの高級住宅エリアに、軍事侵攻以降、ロシアの富裕層が殺到しています。

海に面し、プールや、大きなテラスも付いた物件、価格は日本円にして4億円以上。ロシアの富裕層が好んで買っているということです。ロシアとの親密な関係を維持するUAEに制裁や差し押さえを逃れようと資産を移しているとみられます。

不動産仲介会社のCEO:

「ドバイはまだロシアからの投資に開放されている。制裁や投資への障壁は何もないので、資産を守るためドバイに移しているのだろう」

こうした「制裁逃れ」とも言える現実に、どう対応すればいいのか。

ブラウダー氏:

「まるで“もぐらたたき”のように、1か所で資金をおさえようとしても、すぐに別の場所に移されてしまう。プーチンやオリガルヒたちの“抜け穴”はたくさんあります。各国が一致してこうした抜け穴となりうる国々に協力を促していかなければなりません」

その上で、今後もプーチン政権につながる資金の流れを追及していく意義をこう強調しました。

ブラウダー氏:

「多くの富を政権につながる限られた人たちが独占しているという構造はロシアにとって大きな“弱み”の1つと言えます。追及は困難を伴いますが、資産や、資産隠しをする人物が無限にいるわけではありません。アメリカやEU、イギリス、カナダ、そして日本の司法当局の力に期待しています」

山内キャスター:

ゼレンスキー大統領はNHKのインタビューで「ロシアへの制裁に効果が出始めている」と話していましたが、オリガルヒへの制裁も意味があるということですね。

田中キャスター:

VTRにあったような制裁の抜け穴をいかに、ふさいでいくかのが今後の鍵です。ブラウダー氏は、プーチン政権を追い詰めるためにこう述べています。

オリガルヒへの対応に加えて、「ロシア産の石油の輸入を止めるなど欧米各国は、ロシアにもっと厳しい制裁を科すべきだ」とも訴えています。効果的な制裁をどう強めていくのか。まさにこれからが重要です。

5月25日放送

ロンドン支局 松崎浩子 ドバイ支局 山尾和宏 

ニュースウオッチ9 鈴木健吾 和田将輝