ロシア軍事侵攻 次はポーランドか ウクライナへの連帯と危機感 駐日大使語る

NHK
2022年3月23日 午後1:00 公開

ロシアによる軍事侵攻が始まってまもなく4週間。ウクライナから国外に避難する人は増え続けています。UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、21日の時点で353万人を超えています。その半数以上にあたるおよそ211万人が身を寄せているのが隣国のポーランドです。

空前の数の避難民を受け入れているポーランドの現状はどうなっているのか。日本駐在のミレフスキ大使に田中正良キャスターが聞きました。

※文末に関連記事のリンクがあります。そちらも参考にしてください。

3月22日に放送された動画はこちら。3月29日までご視聴いただけます。

ポーランドのミレフスキ駐日大使は執務室で迎え入れてくれました。胸元にはウクライナの国旗の色、黄色と青色のハンカチーフがあり、ウクライナへの連帯の思いを示したといいます。

👀インタビューのポイント

○ポーランドが寛容な姿勢で避難民を受け入れるのは、戦争の残虐さを知っているから

○ポーランドもウクライナもソビエトに“占領”されたという共通の歴史がある

○ロシアによる軍事侵攻は「いつの日かポーランドの番が来る」という危機感がある

○プーチン大統領は全く予測不能のため、その戦術に極めて注意深くあるべき

【ポーランド国民は寛容な姿勢で受け入れ】

ーー大使、ポーランドでは何が起きているのでしょうか?

ミレフスキ駐日大使:

状況は非常に困難です。

ポーランドだけでなく、ウクライナに隣接する他の国々にとってもです。

興味深いことでもあるのですが今の時点でポーランドにはいわゆる“難民キャンプ”が1つもありません

多くを女性や子供が占めるウクライナからの避難民を、ポーランド国民は非常に寛容な姿勢で受け入れています

ポーランドでは避難してきたウクライナの人々を、市民が積極的に、自宅などで受け入れているほか、政府も18か月間の滞在許可を与え、就労を認め、医療や教育も受けられるよう支援していると言います。

大使:

これは本当に、ヨーロッパの歴史上でもまれなことです。

これだけ短い間にこれだけ多く生じた避難民をこれだけ寛容な精神で受け入れる

しかも、“難民キャンプ”ではなくてです。

【ポーランド人は戦争の残虐さを知っている】

ーーポーランド国民の寛容さはどこからくるんですか?

大使:

なぜ、ポーランド人がウクライナの避難民にこれだけ寛容なのかと多くの人が私に尋ねます。

その答えは極めてシンプルです。

ポーランド人は戦争の残虐さを理解しているからです。

ポーランドもウクライナもソビエトに“占領”されていたという共通の歴史があります。

【プーチン大統領の意図は明確】

ーー第2次世界大戦では、ナチス・ドイツと当時のソビエトに侵攻され、冷戦期にはソビエトの影響下におかれてきた歴史がありますね。

大使:

1989年に共産主義体制を脱し、完全に民主化した主権国家となって以来、ポーランドは30年以上、その体制を維持してきました。

東側に隣接する国々が民主的な主権国家であることは私たちにとって極めて重要なことです。

今回の戦争は、第2次世界大戦後のヨーロッパにおいて、他に例のない戦争であり、プーチン大統領の意図も明確です。

西側諸国はそのことをよく理解するべきです。

ポーランドが抱く、ロシアの野望に脅かされる国々への連帯の思い。それがよく現れているのが3月15日、ポーランドの首相みずから、チェコやスロベニアの首相とともに、ロシア軍による攻撃が続くウクライナの首都キエフを列車で訪問したことです。ポーランドのモラウィエツキ首相は「我々はウクライナと共にある」と述べました。

実は、ポーランドは、過去にも同じことをしたことがあると言います。2008年、ロシアがジョージアを侵攻した時のことです。このときも、当時のカチンスキ大統領みずからジョージアを訪問しました。

【侵略、いつの日かポーランドの番が来る】

大使:

ここで大統領はとても重要な言葉を述べました。今もよく覚えています。

きょうロシアに侵略されるのはジョージア、あすはウクライナ、あさってはバルト諸国かもしれない。そしていつの日か、ポーランドの番が来る」と。

ポーランド国民にとって、プーチン大統領の帝国の野望がいかに理解しやすいかがわかるでしょう。

だからこの戦争は絶対に受け入れられないのです。

【プーチン大統領は全く予測不能】

大使:

EUやNATOの加盟国の中でも、ポーランドやバルト諸国など中・東欧の国が、ロシアの侵略を受けたり攻撃されたりするシナリオは排除すべきではありません

プーチン大統領の戦術には極めて注意深くあるべきです。

なぜなら彼は全く予測不能だからです。

【田中キャスターのひとこと】

ミレフスキ大使は、プーチン大統領の考え方や行動パターンについて、ロシアを知り抜くポーランドの警告を欧米各国が聞き入れず、危機感が乏しかったと指摘していました。

警告の背景にあるのは、厳しい歴史を生き抜いてきたポーランドの経験です。もう少し真剣に、耳を傾けていれば、現状は異なるものになった可能性もあります。

※インタビューは3月18日に都内の駐日ポーランド大使館にて英語で行われ、読みやすいように一部修正しています。