欧米を中心に患者の報告が相次いでいる感染症「サル痘」。専門家は、過去にも感染例はあるが、今回これまでにない広がりだと指摘します。いったいどんな症状なのか?
新型コロナウイルスのような感染拡大は、あり得るのでしょうか。
(5月23日放送)
22日スイスのジュネーブで行われたWHOの年次総会。
ここで「警戒が必要」だと取りあげられたのが…「MONKEYPOX(サル痘)」。
「サル痘」は、主にアフリカで見られるウイルス性の感染症ですが、今月5月に入ってこれまでにない事態になっています。
5月7日にイギリスで患者が確認されると…。
その後、ポルトガル、アメリカなど、ヨーロッパや北米で相次いで感染が確認。
WHOはこれまでに12か国、92人の患者が報告されたことを明らかにしました。
いずれもアフリカへの渡航歴はないケースだということです。
一方、日本ではこれまで、感染の報告はありません。
来日中のバイデン大統領も「十分対処できると思うが注意する必要はある」と警戒感を示しました。
サル痘とは、どのような感染症なのか。
1958年、「カニクイザル」で最初に発見されたため、「サル痘」と名付けられたウイルス性の感染症。
人への感染は1970年代に初めて確認され、その後、中央アフリカや西アフリカの熱帯雨林地域で散発的に感染が広がっているとされています。
国立感染症研究所によると、顔や体に特徴的な発疹が出るほか、発熱やのどの痛み、リンパ節が腫れるなどの症状が出ます。
致死率は、過去にアフリカで感染が起きた際には数%から10%程度に上ったと報告されています。
カニクイザルからみつかったこのウイルス。
感染経路は、ネズミやリスなど感染した動物にかまれたり、血液や体液、発疹に触れたりすること。
また、感染した人の発疹や体液に触れたり、飛まつを浴びたりすることで、ヒトからヒトに感染する可能性があるということです。
多くの場合、2週間から4週間程度で自然に軽快しますが、注意が必要なのは、幼児や妊婦、それに健康状態によって免疫が抑制される人など。
重症化する場合があるということです。
なぜ今、欧米で、「サル痘」の感染が広がっているのか。
サル痘に詳しい岡山理科大学 森川茂教授:
「これまでにない感染の広がりだと言える」
「今回みたいに(アフリカ以外で)80人、90人と広がるケースは初めて。これは少し警戒しないといけないのは明らかだが、なぜそんなことが起きているかはわかっていないので、解明が待たれるところだと思います」
「サル痘」の予防に効果があるとされているのが、天然痘のワクチンです。
ただ、日本では1976年、昭和51年に予防接種が中止されたため、若い世代は注意が必要だとしています。
森川茂教授:
「1976年、昭和51年は、接種率が落ちてますのでほとんどの人が免疫がないとそれより年配の方は少なくとも1回は受けていて、2回以上受けているようなケースでは数十年経っても免疫が残ると言われています」
藤重リポーター:
「新型コロナのような感染拡大は見込まれる?」
森川茂教授:
「飛沫感染もあるが多くは水疱が出て、最後かさぶたみたいになって、かさぶたのように乾燥したところにウイルスが大量にいる。汚染したところに触れることで感染するケースが非常に多くて、コロナほど急激に増えているわけではないのでコロナみたいに全世界に広がることは心配しなくていいと思います」
青井キャスター:
専門家によると、「感染していても発熱や発疹などの症状がない場合、検疫所で見つけることは難しい」ということです。
今後の対策について厚生労働省は、感染者が入国するおそれがあるとして、感染が疑われる患者が見つかった場合、速やかに報告することなどを自治体に通知しています。
(5月23日放送)