ノルドストリーム2とは?ウクライナ情勢はエネルギー問題でもある 経済制裁の行方

NHK
2022年2月16日 午前11:00 公開

緊迫するウクライナ情勢をめぐり、アメリカは仮にロシアが軍事侵攻した場合には経済制裁を発動する姿勢です。さらにヨーロッパの同盟国のドイツに足並みをそろえるよ迫っています。

その最大の焦点となっているのがロシアとドイツを結ぶ「ノルドストリーム2」というロシア産の天然ガスを送るパイプラインです。建設はすでに完了。あとはドイツ当局による承認を待つだけの状況です。

ウクライナ情勢を見ていく上で外せないのがエネルギーでありこの「ノルドストリーム2」をめぐる問題です。

11日(金)に放送された動画はこちらから。

事態は一気に悪化しかねない」

10日に始まったロシア軍とベラルーシ軍による合同軍事演習

この日、アメリカのバイデン大統領は「アメリカ人はすぐにウクライナから退避すべきだ。 これまでとはまったく異なる状況で、事態は一気に悪化しかねない」と退避を呼びかけました。

ロシアが演習を名目にウクライナに侵攻するのではないかと警戒を強めているNATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長はイギリスのジョンソン首相と会談。

また、ロシアとウクライナ、それにドイツ、フランスの4か国の高官による協議など外交的解決に向けた努力も続けられていますが、大きな成果は出ておらず、緊張緩和に向けた道筋はみえていません

制裁①金融制裁

こうした中、仮にロシアがウクライナへ侵攻した場合に備えアメリカ検討しているのが経済制裁です。

その1つが金融制裁

バイデン大統領は「ロシアの銀行はドルが利用できなくなり、ロシアは壊滅的な被害を受けることになる」と述べています。

制裁②ハイテク製品の輸出規制

さらに、バイデン政権の高官はアメリカの先端技術が使われた製品の輸出規制も検討しているとしています。

制裁③エネルギー規制

そして、経済制裁の議論の中で注目されているのがロシアからドイツへ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」をめぐる動きです。この「ノルドストリーム2」は天然ガスの生産量で世界2位の資源大国ロシアにとっては国家財政を支える重要なプロジェクトです。

ドイツのロシア依存

一方、年内にすべての原発の運転停止が予定されるドイツにとっても天然ガスは重要なエネルギー源と位置づけられています。ドイツは天然ガスの輸入ではおよそ55%をロシアに依存し、「ノルドストリーム2」の計画を推進してきました。

アメリカとドイツの温度差

こうしたロシアとドイツの状況に以前から強い警戒感を示してきたのがアメリカです。

2018年に当時のトランプ大統領は「悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない」と発言。

アメリカは、ヨーロッパがロシアにエネルギーを依存することは、アメリカとヨーロッパの結束の弱体化につながると考え、「ノルドストリーム2」などを対象にした制裁を相次いで打ち出してきました。

今回、バイデン政権は「ロシアはエネルギーを武器として利用している」と非難するとともに、新たな制裁を科すことも辞さない構えを示しています。

バイデン大統領は7日、「ロシアの戦車や兵士がウクライナ国境を越え侵攻したら『ノルドストリーム2』の計画はなくなるだろう」と述べ、ロシア経済に打撃を与える考えを示しました。

これに対し、ドイツは難しい立場に置かれています。

戦略的曖昧さ

ショルツ首相は、「ロシアがウクライナにこれ以上侵攻すれば、それは“政治的・経済的に深刻な結果”をロシアに招くだろう。ヨーロッパの安全のため、私たちはロシアと真剣に話し合う用意がある」と述べていますが、これまでのところ「ノルドストリーム2」ということばは口にせず、稼働の停止についても明言していません

ショルツ首相は今月、有力紙ワシントン・ポストとのインタビューの中で、「戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)」の必要性を指摘し、何が制裁に含まれるのかをすべて明らかにしないことがロシアに対して有利に働くという考え方を示しました。

「ノルドストリームは大ばくち」

アメリカとドイツの温度差について、対ロシア政策に詳しいアメリカのシンクタンク「ウィルソンセンター」のウィリアム・ポメランツ氏は「ドイツのショルツ首相はバイデン大統領のように単刀直入には言っていないが『ロシアがウクライナを攻撃すれば、ドイツはノルドストリーム2の操業を認めない』ということでは、両者の意見は一致している」と分析。

その上で、「天然ガスをめぐるドイツとロシアの関係については「ロシアはノルドストリームで得る収入なしにやっていけるのか、そしてドイツがロシアの天然ガスなしに      やっていけるのか。この駆け引きは双方にとっての大ばくちだ」と言います。

ウクライナ情勢は天然ガスとNATO拡大の問題

ウクライナ情勢を読み解いていく上で、この天然ガスの問題NATOの拡大と並んで、極めて重要なテーマです。

ロシア産のガスへのヨーロッパの依存度は約40%に上るとも言われています。アメリカはエネルギーの依存が続く限りロシアはヨーロッパの同盟国を揺さぶり続けると見ています。

エネルギーをめぐる動きを丁寧に見ていくことはウクライナ情勢の理解に欠かせません。