緊迫ウクライナ情勢【ダイジェスト版】なぜ今?最新情勢をわかりやすく

NHK
2022年2月22日 午後6:00 公開

ウクライナ情勢について関心があるけど、もっとコンパクトに読みたい!という声を受けて、最近の4つの記事のダイジェスト版をつくってみました。

※22日午後10:00更新

ロシアの見方は?

~日本に駐在するロシアのミハイル・ガルージン大使のインタビュー

ロシアの安全保障に詳しい専門家の見方は?

~東京大学先端科学技術研究センター専任講師・小泉悠さんのインタビュー

米ワシントンのシンクタンクが考える

ロシアが取り得る6つのシナリオ

▼想定される経済制裁は?

さらに焦点の「ノルドストリーム2」って何?

2月14日(月)に日本に駐在するロシアのミハイル・ガルージン大使が駐日ロシア大使館でインタビューに答えました。

※2月14日時点の情報です。詳しい記事へのリンクは文末に

【軍事技術的な措置を取ることも可能だ】

田中キャスターが「ズバリお聞きします、ロシアはウクライナに侵攻するんでしょうか?しないんでしょうか?」と質問したところ大使は

結論から言えば、いえ、もちろんロシアが戦争をする意図もないし、計画もないです。そして、ラブロフ外相を引用しますと、我々次第であれば『戦争はない』ということを明確にしていますので、そういうことはない、と。

つまり我々の方からは攻撃とか戦争がないということをズバリと言いたいと思っております」と述べました。

インタビューで「ウクライナに対する軍事力行使はない」と繰り返し語ったガルージン大使

一方で、「もしNATOが我々の提案を拒否するならロシア側としては自分の安全を守るために軍事技術的な措置を取ることが可能です」とも述べました。

軍事技術的な措置」とは何か?

具体的な内容については「今は言えません」とのことでした。

【経済制裁は手をこまねいて眺めない】

仮にロシアがウクライナへ侵攻した場合に備えアメリカが検討しているという経済制裁についてガルージン大使は

欧米が制裁に再び訴えるなら、欧米自身が外交を忘れて、力による解決を優先することを確認するもうひとつの実例となります。

それはたいへん遺憾に思います」と述べました。

さらに「もし先方からいわゆる制裁を発動されるなら、もちろん私はその都度対応するしかないと思っています。

どうするかわかりませんが、いままでわれわれは制裁に対して、いつも、対抗措置をとってきました。よくご存知の通りです。

今回も無視することはない、手をこまねいて眺めることはないと思います」と述べました。

16日(水)、ロシア政府がベラルーシから一部部隊の撤退を発表したことを受けて、田中キャスターはロシアの安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センター専任講師・小泉悠さんにオンラインでインタビューしました。

※2月16日時点の情報です。詳しい記事へのリンクは文末に

【西側とは緊張緩和 ウクライナには圧力】

この中で小泉さんは

「今回その軍の撤退という話をするのとほぼ同時にロシアの下院ではウクライナ東部のドネツクとルガンスクを国家承認しちゃうという話に関しても採決が行われて、圧倒的多数で承認されているわけですよ。

ということはロシア側がウクライナに対しては、早くロシアの要求をのまないと東部の紛争地域を永久に独立させてしまうよと。

もう二度と回収できなくなるぞと脅しをかけているようにみえるわけですよね」と指摘しました。

西側諸国と外交は続ける姿勢を示していることについて小泉さんは「なんとなく西側を敵に回すんじゃないんです、と。

だけど、ウクライナに対しては、圧力は依然として加え続けますよという姿勢であるようにみえます」と話しました。

さらに小泉さんは「ウクライナに対してサイバー攻撃が大規模に行われているであるとか、まだやっぱりロシア軍が撤退していないというのは、何となくつながっている感じがするんですね。つまり西側とは緊張緩和

だけどウクライナに対しては依然として圧力もかけていて、部分的にはもしかしたらサイバー攻撃の形でもう実力行使におよんでいるのかもしれない。そんなふうにみています」とも。

【情報戦は新しい展開に】

小泉さんは今回、アメリカが積極的に情報を公開したことについても注目していました。

アメリカが非常に積極的に情報公開しているのはおもしろいなと思うんですよね。

やはりアメリカの持っているインテリジェンス能力を使えば、ロシア軍の移動なんかは、相当早い段階からつかめていたんでしょうし。

さらに今回おもしろいのは、アメリカ側から“こんな動きがあるぞ”、“こんな兆候があるぞ”と言うと、世界中のシンクタンクとかマスコミが“じゃあ見てみよう”と自分たちで衛星画像を見てみるとか、それから現地のTikTokの動画を見てみるとか。

いろんな形で自分たちで、じかにアメリカの言うことを検証できるようになったというのがすごく新しい展開だったと思うんですよね。

そういう意味で、アメリカは社会全体を巻き込んで、広くうまいこと世論づくりというか、ロシアの振る舞いを社会全体で抑止するようなことをなんかやった感じがしております」ということです。

ロシアが態度を変えるかと言えばそうではなく「ロシアの方の振る舞いっていうのは、こういう現状を変えようとしているのはロシアの側であるわけですよね。

ですから何かを抑止しようとか、秩序を保つというよりは、今ある秩序を撹乱する、あるいは事実をわからなくするための情報戦ということだと思うんですよね」と位相の違う情報戦を展開していると指摘しました。

その上で小泉さんは「ロシアが情報戦やるっていうときには、特に軍事的な危機事態でやる情報戦ていうのは、伝統的にマスキロフカ、偽装ということが非常に重視されてきたわけですね。

自分たちの本当の意思を隠す、あるいは今起こっていることをわからなくする、敵の判断を誤らせる

そういったことをロシアの軍事思想の中では非常に大事だよと言ってきたわけです。ですから非常に意地の悪い見方をすると、今回のロシア軍撤退というのも、本当に撤退なのか、あるいは隠すためにこういうことを言っているのかという疑いも、当然浮かんできてしまいます」とのことです。

【ロシアが取り得る6つのシナリオ】

緊迫化するウクライナ情勢について米シンクタンクのCSIS=戦略国際問題研究所は1月下旬、“ロシアが取り得ると6つのシナリオ”を示しました。

①ウクライナの東側を占領

1つめのシナリオは、ウクライナの中央部を北から南に流れる「ドニエプル川の東側まで占領する」というものです。

ドニエプル川を境にウクライナを東西に分割し政権を破壊工作などで崩壊に追い込むことが狙いだといいます。

②ウクライナ全土を占領

2つ目のシナリオは、「ウクライナ全土を占領する」というものです。東側を占領するだけでなく西側まで侵攻するというのです。

報告書は1月にまとめられましたが、実際、ロシアはすでにウクライナ全土への攻撃に必要な兵力の70%を配置したという情報もあります。

③黒海沿岸を占領

さらに、ウクライナの南にある「黒海沿岸を占領する」というシナリオもあります。

黒海沿岸はウクライナの貿易の拠点にもなっており、ここを奪うことでウクライナ経済に打撃を与える狙いもうかがえます。

④黒海沿岸+東側を占領

「黒海沿岸を占領」するシナリオに加えて先ほど見た「ドニエプル川の東側の国土も占領する」シナリオもあります。

黒海の西には、ロシアの影響力が強い「沿ドニエストル地方」があり、ウクライナの隣国モルドバから一方的に独立を宣言し、ロシアが軍を駐留させていて、ここを足がかりに占領するというのです。

⑤親ロシア派武装勢力支配地域に部隊派遣

ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力が支配する地域に部隊を派遣する」というシナリオもあります。

この場合、本格的な戦闘は行われませんが、ウクライナ政府に揺さぶりをかける狙いがあるものとみられます。

⑥サイバー攻撃

国境周辺から地上部隊を撤収させる一方、「サイバー攻撃」というシナリオも考えられるということです。

【ウクライナの東西分裂も】

この6つのシナリオについてCSISのセス・ジョーンズ上級副所長は、①の「ウクライナの東側を占領する」シナリオと⑤の「親ロシア派の武装勢力の支配地域に部隊を派遣する」の2つのシナリオの可能性が高いと指摘しています

その上でジョーンズ上級副所長は「東西ドイツあるいは北朝鮮と韓国のようになるかもしれない一方が親欧米で、もう一方がロシアに支配されたウクライナである。

ロシアによる侵攻は新しい“鉄のカーテン”が設けられる決定的な瞬間になるかもしれない」と話しています。

【想定される経済制裁は?】

仮にロシアがウクライナへ侵攻した場合に備えアメリカが検討しているのが経済制裁です。

その1つが金融制裁

バイデン大統領は「ロシアの銀行はドルが利用できなくなり、ロシアは壊滅的な被害を受けることになる」と述べています。

さらに、バイデン政権の高官はアメリカの先端技術が使われた製品の輸出規制も検討しているとしています。

そして、経済制裁の議論の中で注目されているのがロシアからドイツへ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」をめぐる動きです。

【ノルドストリーム2】

この「ノルドストリーム2」は天然ガスの生産量で世界2位の資源大国ロシアにとっては国家財政を支える重要なプロジェクトです。

年内にすべての原発の運転停止が予定されるドイツにとっても天然ガスは重要なエネルギー源と位置づけられています。

ドイツは天然ガスの輸入ではおよそ55%をロシアに依存し、「ノルドストリーム2」の計画を推進してきました。

こうしたロシアとドイツの状況に以前から強い警戒感を示してきたのがアメリカです。

2018年に当時のトランプ大統領は「悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない」と発言。

アメリカは、ヨーロッパがロシアにエネルギーを依存することは、アメリカとヨーロッパの結束の弱体化につながると考え、「ノルドストリーム2」などを対象にした制裁を相次いで打ち出してきました。

【大きなばくち】

対ロシア政策に詳しいアメリカのシンクタンク「ウィルソンセンター」のウィリアム・ポメランツ氏は天然ガスをめぐるドイツとロシアの関係については「ロシアはノルドストリームで得る収入なしにやっていけるのか、そしてドイツがロシアの天然ガスなしにやっていけるのか。

この駆け引きは双方にとっての大ばくちだ」と言います。

そして22日、ドイツのショルツ首相が記者会見で、ロシア産の天然ガスをドイツに送る新たなパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働に向けた手続きを停止する考えを示しました。

プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派が事実上、支配している地域の独立を一方的に承認したことを踏まえた判断です。

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