ウクライナ侵攻【ダイジェスト版】今知っておきたい3つの言葉

NHK
2022年3月1日 午後5:00 公開

ニュースウオッチ9では連日、「ロシアによるウクライナ侵攻」のニュースをお伝えしています。最近、よく出てくる3つのことばの解説をコンパクトにまとめました。

①ロシアのサイバー攻撃

ロシアに対して経済制裁に踏み切った日本は、大企業とつながっている中小企業もロシアから狙われやすいとして、警戒レベルを引き上げるべきだとNTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストの松原実穂子さんは指摘。

②SWIFT  

ロシアをSWIFTから排除することは「最大限の経済制裁措置」と野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんは解説。

③ノルドストリーム2

稼働に向けた手続き停止の意味について米ウィルソンセンターのウィリアム・ポメランツ氏の見方。

①ロシアのサイバー攻撃

世界各国でサイバー攻撃のリスクが高まっています。日本でも経済産業省が2月23日から各企業に注意を呼びかけました。

NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストの松原実穂子さんは、欧米とともにロシアに対して経済制裁に踏み切った日本は、大企業はもちろん、つながっている中小企業も大企業と同じ情報や技術を持っているので狙われやすいと指摘します。

※2月25日現在の情報。

松原さん:

インターネットは国境がないので感染はいったん広がってしまうと、どこまでいくのか予想がつきにくい。

だからこそ、早め早めに、今までロシアがどのようなサイバー攻撃を行って来たのか、どういう対策をとらなければいけないのか。早め早めの対策を取っていくことが重要だと考えます。

「今までロシアが行ってきたサイバー攻撃」とは何か?

2015年12月には電力会社がサイバー攻撃を受けてウクライナ西部で数十万世帯が停電。2017年には「ノットペトヤ」と呼ばれるウイルスによって、ウクライナの政府機関や金融機関が深刻な被害を受け、銀行のカードが利用できない事態に。

松原さんによると、2月にもウクライナで政府機関などに対して2度にわたって大規模なサイバー攻撃が発生しているということです。

【懸念はドミノ型サイバー攻撃】

松原さん;

ウクライナなどで見つかったコンピュータウイルスは、これからどこまでその感染が広がっていくかにもよりますが、その機能が発動されれば、当然、その組織だけではなく業種、あるいはその業種のサービスや製品を使っているサプライチェーンなどドミノ式での悪影響が世界に及ぶ可能性があります。

ですので、やはり今、ウクライナだけではなく、世界の国々が心配しているのは、そういったドミノ型のサイバー攻撃の被害が世界的に広がってしまうことだと思います。

【連絡体制、危機対応体制の見直しを】

松原さん:

まず、お願いしたいのが脆弱性対策がきちんと行われているのか、早急な見直しです。

それからサイバー攻撃の被害がサプライチェーンを通じて自分が直接受けてなくても、間接的に及ぶ可能性がありますので、危機が発生した場合、誰に何を通報しなければいけないか。

それは政府、お客さん、パートナーの企業に対してもしなければいけません。

そういった連絡体制、危機対応の体制を見直す必要があると思います。

【情報を持つ中小企業も狙われる可能性】

松原さん:

日本の場合は中小企業が日本のものづくり、技術革新を担っています。

大企業と同じ情報を持ち、同じ技術を持っているので、サイバー攻撃で狙われる可能性は十分にあります。

実際サイバー攻撃は中小企業を最初に狙う確率が非常に高いということをわかっていただいた上で、パスワードを強いものを使っているのかどうか。脆弱性対策をしているのかどうか。アンチウイルスソフトを使っているのか。

中小企業にもなるべく実践していただきたいです。

【経済安保の点からも供給網リスク管理を】

それから、金銭的、財政的な支援は政府からの支援も必要になってくると思います。

日本もこれだけビジネスがグローバル化している中、きちんと対策を立てることがサプライチェーンにリスクの管理というのが今、経済安全保障、それから国家安全保障で非常に重視されています。

日本のサイバーセキュリティー対策をどこまでできるのかというのは世界から見られています

②SWIFT

SWIFT(スウィフト)はベルギーに本部があるSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunications、日本語では「国際銀行間通信協会」という団体が運営する決済ネットワークです。

約200の国と地域の1万1000以上の金融機関が国をまたぐ貿易などの決済や送金に使うシステムで、1日当たり4200万件の送金情報を取り扱っています。

決済額は1日当たり5兆ドル、日本円でおよそ575兆円にのぼります。

SWIFTを利用できなくなると、その国の企業は貿易の決済が困難になるため、アメリカはこれまでたびたび経済制裁にSWIFTからの除外を盛り込んできました。

ロシアをSWIFTから排除する意味について野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんは「ロシアに対する最大限の経済制裁措置」だと言います。

※2月23日現在の情報。

【ロシアは通貨危機に】

木内さん:

制裁措置として一番厳しいのはSWIFT=国際銀行間通信協会のネットワークからの排除ではないでしょうか。

SWIFTは銀行間の国際的な送金決済を担っている銀行の組織なんですね。

送金に伴う情報を伝える役割を果たしているが、この協会に入っていないと国際的な送金ができないということです。

組織はヨーロッパにありますが、事実上アメリカが牛耳っていて、従来テロ国家に経済制裁をかけるときに、そこの銀行をSWIFTから排除することで他の国と貿易をできなくしてしまう。

最終手段という感じがするんですけど、ロシアの貿易もかなりの部分はドル建てでされています。

特に原油や天然ガスといったエネルギー関連はドルだと思うんですが、SWIFTはドル建ての国際決済をほぼ握っています

そこからロシアの銀行が排除されるとエネルギー関連とか食料、小麦、ほとんどすべての製品の輸出入ができなくなってしまう可能性があります。そうするとロシア経済はかなり混乱する形になります。

ロシアの銀行が排除されるということは、

▼銀行がルーブルをドルに換える、

▼ドルの調達、

▼ユーロの調達が難しくなって、ルーブルというロシアの通貨に対する信用が急激に落ちますので、おそらく通貨危機のような状況にロシアは見舞われます。

木内さん:

ロシアの経済金融に対して最大限の制裁措置になってきます。ただ、その場合も“ブーメラン効果”で先進国も大きく傷ついてしまいます。

【石油、小麦、パラジウムが値上がりか】

石油、小麦、パラジウムなどの輸出がロシアからできないとなると、世界的に供給不足になりますので価格がもう一段上がってくることになります。

パラジウムは自動車産業で使われるのでサプライチェーンが混乱して自動車の生産に大きな制約になってきます。

詳しくはこちら。

緊迫ウクライナ情勢 経済制裁とは SWIFTとは

③ノルドストリーム2

【原発運転停止のドイツにとって重要】

ノルドストリーム2」は天然ガスの生産量で世界2位の資源大国ロシアにとっては国家財政を支える重要なプロジェクトです。

ロシア最大の政府系ガス会社のガスプロムが進めています。

ロシアからバルト海の海底に全長約1200キロのパイプラインを整備し、ロシア産の天然ガスを直接ドイツへの輸送するものです。

2011年に「ノルドストリーム」が稼働を開始。

「ノルドストリーム2」は、2018年9月に建設が始まり、去年9月に完成。

稼働の承認を待っていました。

年内にすべての原発の運転停止が予定されるドイツにとっても天然ガスは重要なエネルギー源と位置づけられています。

ドイツは天然ガスの輸入ではおよそ55%をロシアに依存し、「ノルドストリーム2」の計画を推進してきました。

こうしたロシアとドイツの状況に以前から強い警戒感を示してきたのがアメリカです。

2018年に当時のトランプ大統領は「悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない」と発言。

アメリカは、ヨーロッパがロシアにエネルギーを依存することは、アメリカとヨーロッパの結束の弱体化につながると考え、「ノルドストリーム2」などを対象にした制裁を相次いで打ち出してきました。

【大きなばくち】

対ロシア政策に詳しい米シンクタンク「ウィルソンセンター」のウィリアム・ポメランツ氏は、天然ガスをめぐるドイツとロシアの関係については「ロシアはノルドストリームで得る収入なしにやっていけるのか、そしてドイツがロシアの天然ガスなしにやっていけるのか。この駆け引きは双方にとっての大ばくちだ」と言います。

2月22日、ドイツのショルツ首相が記者会見で、ロシア産の天然ガスをドイツに送る「ノルドストリーム2」の稼働に向けた手続きを停止する考えを表明。

プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派が事実上、支配している地域の独立を一方的に承認したことを踏まえた判断でした。

※詳しくはこちら。

ノルドストリーム2とは?ウクライナ情勢はエネルギー問題でもある 経済制裁の行方