戦争が続く中の「終戦の日」 「平和とは何か?」動きだす若者たち
ことしの8.15は、ロシアによるウクライナ侵攻という、現実に戦争が続く中で迎える終戦の日、戦後77年となりました。
こうした中、日本の中高生たちが、戦火に見舞われている同世代のウクライナの若者たちと、「平和とは何か」、ともに議論を重ねました。
この夏、若者たちが考える平和とは?
日本とウクライナの若者が議論 平和とは何か?
(ウクライナから避難/スヴィトラナさん)
「2月24日は、朝4時40分ころに目が覚めました。大きな爆発やサイレンの音がしたからです」
8月、都内で、中高生たちが、ウクライナの避難者から、軍事侵攻による体験を聞くイベントが開かれました。避難者からは思い出の場所が破壊されたことに悲しみの声が聞かれました。
(ウクライナから避難/カテリナさん)
「(破壊されているのは)ショッピングモールの跡です。高校時代の友達とボウリングに行っていた場所です。ブチャの地元の市場には、以前は父が毎週、果物や野菜を買いに行っていました。私の隣人は、井戸に水をくみに行き、ロシア軍に殺されました」
私たちは“聞けない世代” だからこそ直接対話を
この会を主催したのは、高校生の都築マリ彩さんです。
都築さんたち中高生のグループは、この夏、クラウドファンディングで資金を集め、全国5か所でイベントを開催しました。理由の1つに、日本での戦争の記憶が風化していると感じたことがあります。
都築さんには、戦争を体験したひいおばあさんがいましたが、都築さんが生まれる前に亡くなったため、直接、話を聞くことはできませんでした。
そうした中、都築さんの高校で、ウクライナから避難してきた大学生の話を聞く機会があり、開催を決意したのです。
(都築さん)
「自分たちと同じ世代のウクライナの学生がこんなにひどい目にあってて、つらい経験をしているんだと考えると、とても胸が苦しくなりました。(日本で起きた戦争について)私たちの世代では、生の声を、聞けない。戦争の話というのを忘れかけているのではないかというのも思います」
今回の会の目的は、ウクライナの学生と直接、対話し、具体的な議論に深めていくことです。
(参加した中学生)
「ウクライナに物資の供給をしてほしいという話がありましたが、物資の供給、特に武器をたくさん供給したら、いつまでたっても戦争は終わらないと思うのですが、そこはどう思いますか?」
(スヴィトラナさん)
「武器の供給は必要なんです。それは、武器がないと、ウクライナの民間人が死んでしまうからです」
(参加した中学生)
「なんていえばいいのかよく分からないんですけど…。すごい…、戦争って一筋縄ではいかないんだなと」
さまざまな意見が出ましたが、戦争をなくすための答えは導き出せませんでした。
(都築さん)
「これから戦争を繰り返さないようにしようって、みんな同じことを言ってるのに、結局繰り返してしまうっていう。戦争があるっていうのはなぜであろうということを、もっと深めていきたい」
唯一の被爆国だからこそ出来ることは?
次に都築さんたちが向かったのは、広島。
唯一の戦争被爆国だからこそできることを話し合いたいと考えたからです。
(原爆について説明する都築さん)
「爆弾が落ちて多くの人がやけどし、水を求めて川に飛び込んだが、最終的に多くの人が亡くなったんです」
(アリシアさん)
「(ウクライナで核兵器が使われる)可能性があると考えると怖い」
都築さんたちは、被爆者の話を直接聞いた経験がある地元の生徒たちと、戦争について議論しました。
(都築さん)
「広島っていうのは、原爆の被害を受けた地ですけれども、そういう意味でウクライナの戦争と比較してみると、どういうことを戦争について思いますか?」
(参加した高校生)
「いま言ってもらったとおり、戦争が起こった原因っていうのは違うと思うんですけど、やっぱり同じなのは、原子爆弾を落とされたりとか、一般市民の人たちが巻き込まれて苦しんでるっていう」
生徒たちから上がったのは、苦しめられるのは、昔も今も、市民たちだ、という声。
ウクライナの学生からは、軍事侵攻の長期化で、人々の暮らしが深刻化するという声も上がりました。
(リリアさん)
「これから冬になると寒いうえに食料も多くはない。どうすることもできない」
「平和とは?」答えの難しい問い 向き合い続ける
そして、議論は、どうすれば平和を築けるのかへと向かいました。
(参加した高校生)
「実際体験した人の話を発信するのが、戦争がなくなる未来のために一番必要」。
(参加した高校生)
「広島とか長崎もやっぱり原爆を落とされて、被爆者の方のお話とか、いかいろいろやってきたはずなのに、国連もあったはずなのに、今もいろいろなところで戦争が起きたり、ウクライナの現状もあるっていうのは、やっぱりまだ情報発信がたくさん必要だろうなと思います」
「平和」という、簡単に答えの出ない問い。
都築さんたちは向き合い続けようとしています。
(都築さん)
「私たち中高生がこうやって機会を作ることによって、私たちの伝えたいメッセージ、平和とは何なのか。1人1人の戦争はどれだけつらいものなのか。大人になってもこのような機会を作って、日本だけにとどまらず、世界にも届けていきたいと思っております」
都築さんたちは、これまでの議論の結果を「平和への宣言」にまとめました。
「戦争と平和」とは何か、常に考え続ける。
正しい情報を発信し、戦争の真実を伝える。
これらをSNSで発信したそうです。
答えを出すことが難しくてもお互いに意見を交換して「考え続ける」こと、この普遍的な価値を大切にしていきたいですね。