原油価格再び高騰 専門家インタビュー 要因、今後は?

NHK
2022年1月24日 午後10:29 公開

原油価格が再び上昇しています。

日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員に背景と見通しを伺いました。

(日本エネルギー経済研究所 小山 堅 首席研究員に1月24日午後、オンラインでインタビューしました。読みやすいように一部修正しています。)

Q原油価格が上昇している要因をどう考えていますか?

原油価格上昇の一番基本的な要因は、石油の需要と供給が引き締まってきたということだと思います。

それは世界の石油在庫が2020年の5月以降、急速に低下して、今は世界の5年間の平均よりもずっと下にあるというところに表れています。

なぜ在庫が下がってきたかというと、コロナの影響で、原油価格が大暴落したあと、「OPECプラス」という産油国のグループが、ずっと協調減産を続けて今に至っています。

その減産した結果、在庫が減ってきた、そして結果として昨年1年間を通じて原油の値段がずっと上がり続けているところが基本だと思います。

Qただ、昨年の11月に一度原油価格が下がるということがありました。

昨年の11月に、原油価格が1バレル=80ドル台を超えていたところから月末にかけて、一気に60ドルにまで大きく下がったことがあります。

その一番の原因は、オミクロン株の脅威というのを石油市場が強く意識した結果でした。都市封鎖とか移動制限がかかるんじゃないか、世界経済がおかしくなるんじゃないか、という心配が出てきて原油価格が大暴落したんですね。

しかしですね、確かに今にいたるまでオミクロン株は世界中でどんどん感染が広がっています。日本でもそうです。ただ感染は広がっているんですけど、いわゆる重症化リスクというのは相対的にはあまり高くないのではないかという見方が出てきました。そうなると心配ではあるんだけれども世界経済への影響はわりと軽微かもしれない、あるいは移動制限や都市封鎖みたいな強力な措置はとられないかもしれない。そうすると世界の石油需要は増加し続けるだろう、であれば、原油価格はしっかり上がっていくというような、特に今年に入ってからそういう見方がだんだん強まってきました。

Q他に考えられる要因は?

石油市場、原油価格というのは地政学の問題を割と意識するんですね。例えば中東情勢が安定化するか、イランの問題がどうなるか、常に意識して参りました。現在の状況だと地政学リスクに関して言うと、ロシア、ウクライナ情勢について市場は関心を持っていると思われます。この先どういう展開が起こるかわかりませんけども、ロシアがウクライナに侵攻するということがあれば、ロシアと欧米の間の緊張は一気に高まる。ロシアは非常に重要な産油国ですが、それ以外にもヨーロッパに大量の天然ガスを輸出するエネルギー大国であって、そのロシアと欧米、世界市場の関係がどうなるかわからないという不安感がエネルギー価格全体を押し上げる要因として、その代表である原油価格に影響しています。

今の原油価格の上がり方は、単純に需給要因だけで説明できるかというと、それを超えて相当上がっているなと感じています。供給の不安とか、今後の需給が厳しくなるということを予想して上がってきているという面もあるので、このまま1本調子で上がり続けるかどうかは率直に言ってわかりません。ただし地政学リスクが現実のものになる、ロシアがウクライナに侵攻して欧米との関係が非常に悪くなるとか、このままオミクロン株の心配がどんどん後退していって、世界経済が好調さをどんどん取り戻していくとなると、原油の値段が高いまま、場合によってはさらに上がるという展開はありえると思います。

他方で、原油の値段が高くなると、基本的には供給が増える可能性があるんですね。一番重要な例は、アメリカのシェールオイル、これはコストが高い石油なんで、原油の値段が高くなると、だんだんと供給が増えてきます。今年はおそらく今の状況でも前の年に比べて、1日あたり100万バレル以上生産が増えると思っていますので、アメリカの生産がぐっと増えてくると、むしろ供給は増えていって、原油価格は落ち着いていくということもありえますし、オミクロン株の影響が軽微かもと申し上げましたが、やはりこれはたいへんだということになったり、世界経済が中国とか米国の経済の先行きが不安になったりすると、一気に原油価格が下がるという可能性もある、非常に不安定な状況にある。というのが特徴で、当面はこの高い価格は警戒しないといけないが、ずっと上がり続けるという単純な状況ではないと思います。

Q今後の見通しは?

もちろんウクライナ情勢のような地政学的なリスクや、他の産油国からの供給という問題はありますけれども、1つの大きなポイントは、オミクロン株の影響がどうなるかということに注目する必要があると思います。オミクロン株の影響が軽微で、このまま世界経済が順調に成長し続けるということであれば、石油の需要がしっかりと伸び続けますので、原油価格が高い状況をずっと維持する可能性があります。

その時にさらに供給に問題があるということになると、一段と高くなる可能性がありますから、日本にとって消費者にとっては注意、油断はできないということで、これから先の将来を考えていく必要があるかなと思います。

Qレギュラーガソリンの小売価格が、全国平均で1リットルあたり170円を超えれば、政府は補助金を使って、ガソリンや灯油などの小売価格の上昇を抑える初めての対策に乗り出すことになります。どのように考えますか?

昨年の後半以降、世界的にエネルギー価格が非常に高くなって、世界の主要国、欧米、そして日本がですね、次々に高価格に対応する政策を出してきているんですね。これは逆にいうと先進国といえども高価格に対しては、政府が何かやらなくちゃいけない、やるべきだというような認識が非常に強くなって、ヨーロッパでもアメリカでも、そして日本でもガソリン価格の補助制度といったものが導入されてきた。それだけエネルギー価格の高騰を深刻にとらえているということだと思います。

これはコロナの問題から日本経済も徐々に回復する過程にある、そこにこのエネルギー価格のダメージがあったらどうするのか、そして市民生活に大きな影響が出たらどうするのか、政府が政策的に対応せざるを得ないという、そういう意識が非常に高まった結果として取られたものだと思います。

この制度そのものについては、まさに初めて導入されて、これから実施されていく可能性のあるものですから、実際どのような効果を持つかどうかについては、まだよくわからないところがあります。その意味ではどのように制度が運用されて、しっかりと効果が出てくるかどうか、このあともよくみて検証していく必要があると思っています。(終わり)