1月放送開始の大河ドラマ「どうする家康」。
乱世を生き抜いて、太平の世を築いた徳川家康が主人公。
演じるのが大河ドラマ初主演の松本潤さんです。
今回描かれる徳川家康からは、新たなリーダー像を見いだすことができるという松本さん。混迷の中で迎えた2023年。時代を切り開くカギはどこにあるのか、インタビューでたっぷりと聞きました。
-大河ドラマの主演、そして徳川家康役ということですが、オファーが来たときはどういう気持ちでしたか?
びっくりしました。誰もが知る、僕も小学生のころ、歴史の授業の教科書で読んでいた、あの徳川家康公を自分が演じるとは本当に思っていなかったので。自分に務まるのかという思いもあり、すぐには返事ができなかったですね。
-なぜ、やろうと思ったのですか?
今回の大河ドラマに織田信長役で出て下さっている先輩の岡田准一君に、『大河ドラマのオファーが来たんですけど…』という話をさせてもらったときに、『もし自分がもう一度大河ドラマの主演の話をもらったら、僕はやるかな』とおっしゃっていたので、『そうか、そんなに魅力的なんだ』ということもあって、そのひと言にもすごく背中を押してもらいましたね。
※岡田准一さんは2014年 大河ドラマ「軍師官兵衛」で主演
大河ドラマ「どうする家康」で描かれる徳川家康は、後世、東照大権現と呼ばれ、神様扱いされるような、完璧な人物ではありません。強国に囲まれる弱小国に生まれた、ひとりの少年。ピンチになると逃げ出すような、頼りない姿が描かれます。
-そもそも松本さんは、徳川家康という人はどういう人だと思っていましたか?
“たぬき親父”と形容されていたり、したたかだったり、ある種、棚ぼたと言いますか、『信長が居て、秀吉が居て、その後に生きていたから天下を取れた人』と言われるような印象ですかね。
-そのイメージと、今回の大河ドラマで家康を演じてみて、何か変化はありましたか?
もうガラッと変わりましたね。現時点で、僕も台本を読んでいて、『この少年が天下を取るのか?』と疑問に思うような少年なので、『どうする家康』じゃなくて『大丈夫?家康』じゃないかと。三河・岡崎のすごく小さな土地に生まれた、かよわきプリンスというふうに描かれているので、ある種、すごく人間っぽい少年が、どうやって乱世を終わらせるのかというところが、すごく魅力的に描かれています。
-歴史の教科書で見てきたのは、家臣に命令をするような強い家康のイメージでしたが、もしかしたら違うのかもしれない?
そうかもしれないですね。家臣に対して上から物を言うんじゃなくて、『俺にはできないから、これはあなたにやってほしい』ということをやっていたんじゃないかと。そして、彼がすごいのは、誰をどこに置けばどういう風になるとか、その選択の目はすごくたけていたんじゃないかと思うんです。みんなの上に立つ人というよりは、フラットに仲間意識が強い人だったのかもしれないと僕は思っています。
-松本さんは今、長として大河ドラマを率いていく立場ですが、今の時代に求められるリーダーとは、どんな存在だと思いますか?
“リーダー”という言葉からイメージするリーダー像は、今の時代にはあまりフィットしていない気がしています。家康は、1つの物事を1人の人でやるというよりは、シェアしながらみんなでどういうふうに進んでいくのかを考えているという意味では、非常に現代らしいなと思っています。
-ご自身は、引っ張っていくタイプか、与えて動かすタイプか、どうですか?
巻き込んでいくタイプですかね。“引っ張っていく”というと、先頭にいる感じじゃないですか?というよりは、現場にいる感じですね。『よし、みんな集まろう』と言って、ごちゃまぜになって、そこから渦って生まれるものだと思うので。大河ドラマの撮影をしているときにも、今この瞬間にどこで問題が起きそうなのかとか、ここがクリアになるとスピード感が上がるとか、気持ちよくなるとか、どこにポイントがあるのかを見て、首を突っ込んでいって、『ちょっとやろうか』と言って、やる、みたいな感じです。
-松本さんのマインドが家康に近いという印象を受けます。うまく人を使うとか、愛されるとか。
合っているのかもしれないですね。
-撮影を進める中で見えてきた松本さんにとっての家康像について、キーワードがあれば教えて下さい。
“悩み続ける人”。生きるか死ぬかの選択をしているので、最後の最後までやっぱり悩んでいるし、家臣に『じゃあ、こういうふうにしよう』と言ってからも、ずっと悩んでいるんだろうなと思います。
-家康はいろいろな状況で選択を迫られていく訳ですよね。
人生って本当に選択の連続だと思うんです。極端な話をいえば、きょう何を食べるかから、きょう何時に起きて何時に寝るのかとか、そういうことの積み重ねで、その人の人生ができあがっていく。家康の場合は、特に戦国時代で、強国に囲まれた弱小な大将だということで、本当に困難な選択の連続だし、彼がどのような選択をしてきたかが、未来につながっていく話なので、そこは現代にも通ずると思います。ある意味、自分ともリンクするというか、撮影現場に行って芝居をすることも、やっぱり選択の連続ですし、本当に日々選択なので、ベストなチョイスができているかはわからないですけど、前に進むことができるチョイスのしかたって言うのを、守らずにやるという感じですかね。
-守らずにやる?
守りすぎるとつまらないので。
-今回の大河ドラマ、ここを観てほしいというポイントを教えて下さい。
いろんな事があって、先が見えづらい今の環境の中で、どうその状況を打破して、先に進んでいこうとするのかという部分が、見て下さる方に爽快感だったり、希望だったり、ポジティブなものを届けられたらなと思います。何より、戦国オールスターズが全員出てきますので、戦国時代という大河ドラマらしいエンターテインメントも同時に楽しんで頂けたらと思います。