👀対ロシア最前線 世界遺産の美しい島 NATO加盟申請スウェーデンの危機感

ニュースウオッチ9
2022年5月20日 午後6:00 公開

ロシアへの警戒の高まりは、周辺諸国の対応をさらに加速させています。

NATOへの加盟を申請した北欧2か国。このうち、スウェーデンは。一見するとロシアから、離れているようにも見えます。

実は、バルト海を挟んだすぐ対岸にロシアの「飛び地」で、重要な軍事拠点となっているカリーニングラードがあります。

つまり、ロシアの脅威は目の前にあるのです。

対ロシアの最前線とも言えるこの地域で、今、何が起きているのか?。

そしてNATOへの加盟申請はヨーロッパの安全保障にどんな影響を与えるのか、取材しました。(ロンドン支局長 向井麻里、ニュースウオッチ9 和田将輝)

バルト海に浮かぶスウェーデン最大の島、ゴットランド島。

中世の町並みが残る美しい景観はユネスコの世界遺産に登録され、アニメ映画「魔女の宅急便」の参考にされたともいわれています。

いま、この美しい島で緊張が高まっています。

スウェーデン軍が市民兵による射撃訓練の様子を公開しました。

兵士は、これまで年に8日程度の訓練を受けていましたが、ウクライナ情勢が緊迫するなか、40日にわたってより実践的な訓練を受けることが必要となりました。

ふだんは大工として働く市民兵は「この5週間追加訓練を行っている。ふるさとや家族、国のためなのでやりがいがある」と話していました。

一般の住民の間でも有事に備えた動きが広がっています。

ゴットランド島在住のウルリカ・ブローションさんは、日持ちする食料や水などの備蓄を増やしました。

島では、本土からの支援が届くまでに時間がかかることが多いためです。

さらに、有事の際に市民が必要な情報を提供するボランティア組織にも登録したということです。

ブローションさんは、「私たちは互いに助け合うことに慣れています。みんなそれぞれのやり方で協力したいと思っています」と語りました。

ゴットランド島の重要性について、スウェーデン国際問題研究所のグニラ・ヘロル氏は「ゴットランド島はバルト海の真ん中にあり、ここを制するものが制空権を制するとも言われてきた。そのためゴットランド島を安全に守ることがスウェーデンとって必要不可欠なのだ」と述べました。

島で高まるロシアへの警戒感。

その背景にあるのが、バルト海の対岸に位置するロシアの領土カリーニングラードの存在です。

第2次世界大戦後、ドイツから旧ソビエトに編入されたカリーニングラード。

その後、バルト三国が独立し、ロシア本土から切り離された「飛び地」となりました。

いまもロシア軍のバルト艦隊の拠点が置かれ、NATOに対抗する重要な戦略拠点となっています。

プーチン政権は、核弾頭を搭載できる短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」のほか、最新鋭の地対空ミサイルシステム「S400」を配備するなど、軍備の増強を推進。

5月4日には、短距離弾道ミサイルの模擬発射訓練を行ったと明らかにしました。

また、前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は、4月、「両国(フィンランドとスウェーデン)がNATOに加盟すれば当然ロシアは国境を強化しなければならない。地域の非核化はありえない」とSNSに投稿。

核戦力をちらつかせて警告しました。

スウェーデンのNATO加盟を強く警戒するロシアについて、安全保障に詳しい防衛省防衛研究所・兵頭慎治政策研究部長は、ゴットランド島の戦略的価値の大きさが背景にあると指摘します。

(防衛省防衛研究所・兵頭慎治政策研究部長)。

「現在、このゴットランド島というのは、スウェーデンの領有している島でありますけれども、スウェーデンがNATOに加盟してしまって、今度はそのNATOとしての軍事的な拠点になっていけば、それはロシアからするとバルト海全体でロシア軍が自由な行動ができなくなっていくということになりますので、このゴットランド島がNATOの軍事拠点になることに関しては相当な危惧をロシア側は抱いているのだろう」

ロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合したのは2014年です。

これを受け、スウェーデンは国防費を増額し2018年に廃止していた徴兵制を復活。

ゴットランド島への部隊の駐留も再開させ現在、300人規模の陸軍の部隊が駐留しています。

ロシアによるウクライナ侵攻直後には、部隊を一時、2倍に増強したということです。

部隊を率いるマグナス・フリクバル陸軍大佐は、「プーチン大統領が政治的な目標の達成に向けて軍事力を利用したため、われわれはゴットランド島の軍事力を予定よりも急ピッチで増強している」と強調しました。

フィンランドと共にNATO加盟を申請したスウェーデン。

現在、加盟国の一つトルコが難色を示しています。

防衛省防衛研究所・兵頭慎治政策研究部長は、トルコが最終的には加盟を認めることになるだろうと言います。

「トルコのエルドアン大統領もおそらく自国の利益を追求するという条件闘争をやっているとみられます。ただ、将来的には今の姿勢をとり続けていくと、NATOの中で孤立していく可能性がありますので、最終的にはトルコもこの2か国の加盟は認めるのではないか。NATO側の多くの国もそのように認識をしているようです」

今後のロシアの行動について兵藤部長は「ウクライナとの戦い」から「NATOとの戦争」に位置づけていくことを指摘しました。

「ロシアが政治的、経済的、軍事的な圧力をかけたとしても、両国のNATO加盟をロシアが阻止するということはできないと思われますので、あくまでも加盟に至るまでの間、揺さぶりをかけていくということだと思います。ただ、(両国の加盟の)政治的な影響というのは予想されまして、プーチン大統領が今のウクライナの軍事侵攻を『ウクライナとの戦い』というよりも、むしろ『NATOとの戦争』であると位置づけをしながら、ロシア国内に対してロシア軍の軍事的な動きを正当化していく。世論対策の観点から政治的に利用して行く可能性というのは高いんだろうと思います」