シャイな私がキャプテンに パリ五輪を目指すホッケー・永井友理選手が見つけた主将像

NHK
2023年9月25日 午前5:01 公開

新たに人をまとめる立場になったとき、どうコミュニケーションを取るか、試行錯誤している方も多いのではないでしょうか。

「どのチームよりも目立たないキャプテンがいい」と話すのは、ホッケー女子日本代表”さくらジャパン”の永井友理選手(31)。優勝チームに来年のパリオリンピック出場権が与えられるアジア大会(9月23日に中国で開幕)に臨みます。

自身の性格をシャイと表現する永井選手。キャプテンとしてどう振る舞うか。試行錯誤しながら見つけ出した、自分なりの主将像で、勝負の大会に挑みます。

(おはよう日本 スポーツキャスター 西阪太志)

東京オリンピックの悔しさを晴らすために

「お久しぶりです!」と笑顔で挨拶をしてくれた永井選手。筆者は岐阜放送局に勤務していた2016年に永井選手を長期間取材させてもらったことがあり、今回は久々のインタビューになりました。

永井選手は日本代表として200試合以上に出場しているフォワード。チームトップクラスの運動量、巧みなポジション取りが持ち味です。オリンピックにもリオデジャネイロ、東京と2大会連続で出場。しかし、結果を残せなかった悔しさが強いといいます。

こちらは、東京オリンピックでの女子日本代表の結果です。

予選リーグは全敗でしたが、5試合中4試合が1点差負け。

①日本3-4中国

②日本1-2ニュージーランド

③日本0-1オーストラリア

④日本1-2アルゼンチン

⑤日本1-4スペイン

永井選手も得点を決めるなど奮闘しましたが、勝利にはあと1歩、届きませんでした。

永井友理選手:東京オリンピックは結果を残せなかった悔しさがすごくあって。その思いを晴らすために3回目のオリンピック(出場)に挑戦しています。ホッケーという競技の未来のためにも、オリンピック(出場)を決めて、そこで結果を残したい。

「シャイな私」が見つけたリーダー像

パリオリンピックを目指し新体制となった日本代表で、新監督からキャプテンに指名された永井選手。

オリンピックで結果を残したいという強い気持ちの一方で、当初は不安もあったといいます。

永井選手:性格的にシャイな部分があるし、あまり自分の気持ちを表に出すタイプではないので、そこは不安もありました。そういう部分で、たけた選手は他にもいるので、自分がやって大丈夫かな、みたいな。

リーダーとしてどのように自分の気持ちを伝え、仲間とコミュニケーションを取るか。スポーツに限らず、世のリーダーにとっては共通のテーマです。永井選手は、元々は失敗することが嫌いで、「人前に立った時に何か違うこと言っちゃったらどうしよう」と考える性格だといいます。それでも、「そこから逃げたらキャプテンはできない」と声をかけるタイミングや言葉の選び方を試行錯誤したといいます。

永井選手:伝えたい言葉があるんですけど、言い方、ニュアンスをどうするか。この言い方はまずかったなとか、これはちょっと間違えたなという失敗を何回もしました。例えば、年齢が上の世代には(この言い方で)伝わるけど、下の子にその言い方はちょっときつかったかな、これだと自信をなくしちゃうんじゃないかなとか。伝えた後で反省するということを繰り返しました。

「しっくりくるまで1年くらいはかかった」という永井選手。今は、自身のキャプテンとしての理想像を明確に語ります。

永井選手:一番どのチームよりも目立たないキャプテンがいいなと思っていて。キャプテンが表に立って一番目立つのではなく、支えるキャプテンでありたい。みんながイキイキとプレーしてくれる空気感をつくることを大切にしています。

そんな永井キャプテンをチームメイトはどう感じているのか、聞いてみました。

西阪:友理さんはどんなキャプテンですか?

坪内萌花選手:みんなのことをすごくよく見てくれている。うまくいっていないときにさりげなく(肩をトントンたたく)。見てくれている、分かってくれているというのを感じる。

西阪:永井キャプテンは、ふだんからは言わないけれど、よく見ていて必要なときに声かけをしている?

永井選手:変化は分かります。「ちょっと変だな」とか「こう思っているな」とかは分かるので。でもあからさまには行かないです、シャイなので(笑)

西阪:見てくれているなというのは皆さん感じますか?

全員:感じます。

永井選手:汗かいたー。言われ慣れてないから。

”さくら満開”を目指して すべてを出し切りたい

われわれが取材にお邪魔した日も、チームメイトとセットプレーの動き方について話していた永井選手。

年下の選手がほとんどの中、一方通行にならないために心がけているのは、「アドバイスではなくディスカッション」だといいます。

永井選手:年齢が上だから全部正解っていうわけではないので。「その時どう思っていたのか?」「こうしたかった」という考えを聞いて、そのうえで決めていければと思って。

西阪:そうしたコミュニケーションを積み重ねた先のチームの姿はどう見えていますか?よくチームスポーツでは『同じ絵を見る』というような言葉も聞きますが

永井選手:同じ絵っていうのは、さくらジャパンはみんな見ていると思うんです。そのうえで本当に細かい部分、例えば同じピンクでも薄いピンクなのか濃いピンクなのか?そういう違いもなくして、全員が本当に細かいところまで一緒の方を向けるというのが大事なのじゃないかなと思います。 

9月2日、3日には東京でフランス代表との強化試合を行った女子日本代表”さくらジャパン”。2試合とも勝利を飾り、アジア大会に向けて弾みをつけました。

取材の最後に、改めて永井選手に意気込みを聞きました。

永井選手:年齢的にも、自分にとって(パリオリンピックは)ラストチャンスだと思っています。「あの時言っておけばよかった」「こうしておけば」ということをなくして、すべてを出し切りたい。全員がさくら満開。そんなチームでありたいと思っています。

(取材後記)

「チームのことをいつも考えていて心配になるくらい」とチームメイトが話す永井選手。東京オリンピックが終わり、年齢が近い選手で現役を退く選手もいる中、現役を続ける原動力は、私が取材を始めたころから変わらない、ホッケーという競技への強い思いです。

「ホッケー界の未来を変えて、支えてくれた、たくさんの人に恩返しがしたいんです。自分もホッケーを長年やってきて、オリンピックに出るけれど、結果が出なかったら認めてもらえないというか。それがすごく悔しくて。自分が今できることはオリンピックで結果を残してホッケーっていうスポーツを知ってもらうこと。歴代ホッケーをやって来た先輩方、やめていった仲間、今ホッケーを頑張っている子供たちのために。ホッケーってすごいんだぞって、見せられるような結果を出したい」と今回の取材でも話してくれた永井選手。

その第一歩として重要なのが今回のアジア大会。オリンピック出場権を獲得して、笑顔で大会を終えられることを、1人の取材者としても、ファンとしても願っています。頑張れ!さくらジャパン!