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半導体なくして日本の成長なし

NHK
2021年7月15日 午後1:06 公開

先端半導体について、政府は6月にまとめた成長戦略で「生産拠点の国内立地を推進し、確実な供給体制を構築」することを盛り込みました。なぜ半導体が日本経済の成長に不可欠なのか?どのような戦略で臨むのか?(1)デジタル社会に欠かせない半導体(2)米中対立の中の経済安全保障(3)どうなる日の丸半導体の行方という3つのポイントから考えます。

デジタル社会に欠かせない半導体

半導体はパソコンやスマホをはじめ、エアコンや自動車、冷蔵庫など身近なものに使われています。中でも自動車は、1台に約1000個の半導体を搭載。また、新型コロナで必要とされている人工呼吸器などの医療機器にも半導体が組み込まれています。

さらに、5Gで高速大容量の通信技術が発達して取り扱うデータの量が増えたり、車が自動運転になったりすると、より高度な半導体が今まで以上に必要になります。デジタル社会を実現するうえで、半導体が重要なカギを握ることになるのです。

米中対立の中の経済安全保障

しかし、この半導体を今後も安定して確保できるのか、という不安が出てきました。背景にあるのが、アメリカと中国の対立です。

世界の半導体産業を見渡すと、最先端の半導体の設計図はアメリカで作成。「TSMC」という台湾の会社が製造を担ったり、この会社が中国に工場をつくったりして、世界各国・地域で分業をしてきました。

日本は必要な半導体の8.9%を中国から輸入していますが、米中が国家体制の違いから激しく対立する中、今後も中国から安定して調達できるのか不安が出てきたのです。

政府は成長戦略で、半導体などの技術について、経済安全保障の確保、すなわち安定的に確保することの重要性を強調しています。

中国では、中国政府による事実上の補助金のもとで猛烈な勢いで半導体の開発が進められていて、より価格の安い中国製品が世界の市場を席巻する可能性もあります。そうなる前に、日本としても国内で必要な半導体を調達できる態勢を整えようとしています。

どうなる日の丸半導体の行方

では、半導体を調達できる態勢をどのように整えるのでしょうか。残念なことに、かつて世界をリードしていた“日の丸半導体”は、最先端の分野でとても追いつけないほど外国企業との差が開いてしまっています。

先端半導体については“日の丸”にこだわらず、外国企業でも日本でつくってくれるならいいとして、先端技術を持つ「サムスン」、「インテル」、「TSMC」などの外国企業を日本に誘致しようとしています。

一方、日の丸にこだわっている部分もあります。半導体製造に欠かせない素材や、半導体の製造装置です。これらの分野では、日本メーカーが世界の半分以上のシェアを持つところが少なくありません。

こうした日本企業の競争力を維持するためにも、先端技術を持つ半導体メーカーとともに装置や素材の研究開発を行うことが必要です。海外から半導体メーカーを誘致するねらいは、そこにもあります。

ただ、半導体メーカーをめぐっては、アメリカやEUも数千億円~1兆円規模の資金を用意して誘致しようとしていると言われています。日本政府は、対抗するために「他国に匹敵する取り組みを早急に進める」と強調。政府高官によると、誘致には“4桁億円”が必要との見方もあり、財政事情もひっ迫する中でどこまで予算が出せるかは不透明です。

日本政府が民間企業の活動に口を出すことに冷めた見方もある中で、巨額の予算を使ってでも半導体を確保することが、日本の成長にとって必要だということを、国民に広く理解してもらえるかどうか。それが、新たな半導体戦略が成功するかどうかのカギを握ると思います。

【2021年7月15日放送】