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大企業も中小企業も・・・対応迫られる“人権問題”

NHK
2021年10月18日 午後1:43 公開

人権問題への企業の取り組みに、世界で厳しい目が注がれています。最近では、中国の新疆ウイグル自治区の綿製品に強制労働の疑いがあると批判が広がったほか、各地で児童労働などが問題になっています。大企業はもちろん中小企業も対応を迫られています。

調達先の現地調査など対策に力 大手食品メーカー

大手食品メーカーの味の素はタイから養殖エビを調達しています。タイでは7年前、養殖エビの価格を抑えるために、出稼ぎ労働者の強制労働で作られた餌を使用している問題が表面化し、会社も対応を迫られました。

会社ではこの苦い経験を踏まえて、SDGsの専門部署が現地の支社やNGOと連携して人権対策を進めています。

すでにタイの養殖エビや鶏肉について調達先の調査を実施。今後はブラジルのサトウキビ農家の調査も行う計画です。コストと人手をかけてでも人権対策を徹底したいとしています。

サステナビリティ推進部の渡邊裕見子・社会グループ長は「経営層そして工場の生産に携わっている方、また地域住民といったコミュニティーに関してもヒアリングをかけていく計画をいま詰めている」と話します。

高いハードルも…対策に乗り出した中堅・中小

一方、中堅・中小企業にとって人権対策は高いハードルです。ノウハウが十分でなく、コストも重い負担になるからです。

長野市の樹脂加工メーカー「ニッキフロン」も、そうした企業の一つです。この会社は半導体の製造装置に欠かせない部品を作っています。今後ヨーロッパの大企業に自社製品を売り込もうと考えていることもあり、人権対策に乗り出しました。

会社は不足する情報やノウハウを入手しようと、政府が主催する人権対策セミナーに参加しました。

セミナーではまず、国ごとに異なるリスク情報を入手する必要があるとアドバイスを受けました。

セミナーの担当者は「脱炭素の動きはかなり意識が高まってきたが、人権に関しては、大企業・皆さまの取引先のいちばん大きい所がいま急に目が覚めて、突然要求を変えつつあるタイミングだ」などと現状を説明しました。

メーカーの春日孝之社長は10月、社内に対策チームを発足させました。人事や総務の担当者が兼務で人権対策に当たります。

対策チームとの打ち合わせで春日社長は「意識の高さで続けていくレベルではなく、きちんと行動指針として掲げて」と指示しました。

ただ、対策は一筋縄ではいきません。この会社の直接の取引先はおよそ50社あります。2次3次と続く供給網ではその数はさらに多くなります。

生産拠点は海外にもあり、調査費などの対策コストが大きく膨らむことも想定されます。

春日社長は「人権ということになると、あらゆるビジネスにおいて共通の課題。コストというよりは必要な投資という捉え方をしている」と話しました。

中小企業の支援は政策課題

中小企業では人権対策が不十分だと大企業などと取り引きできなくなるおそれもあり、国もそこが政策課題だと考えています。

経済産業省ビジネス・人権政策調整室の門寛子室長は「中堅・中小企業からすると、(大企業から)『価格を抑えてほしい』『でも人権にはしっかり配慮して』と。現場は苦しい。しっかり政策的に支援しなくてはいけない」と話しています。

国も動き出したばかりですが、世界各地の動きを国が詳しく把握し、中小企業に情報提供する仕組みなどを整える必要があると思います。

(経済部 記者 早川俊太郎)

【2021年10月18日放送】

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