ニュース速報

JAL・ANA 社長2人が異例のタッグで訴えたこと

NHK
2021年11月2日 午後1:56 公開

日本航空の赤坂祐二社長と、全日空の平子裕志社長。ライバル航空会社のトップ2人が同席してNHKのインタビューに応じました。異例の対応の背景には、航空業界が迫られている「脱炭素」の課題があります。2人はそろって強い危機感を訴えました。

脱炭素のカギ「SAF」とは?

航空業界の脱炭素のカギは「燃料」です。石油からつくられる燃料を、植物や廃棄される食用油などからつくられる代替燃料に置き換えていこうとしています

この代替燃料は「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字をとって「SAF(サフ)」と呼ばれています。SAFを導入すれば、製造段階も含めてCO2をおよそ80%削減できると言われています。

導入進まない日本 強い「危機感」

インタビューで開口一番に飛び出したのは、日本で代替燃料の導入が進んでいない現状への焦りでした。

日本航空 赤坂祐二社長

(日本は)率直に遅れている。遅れているというよりも、まだ始まっていないと言ったほうがいいかもしれない

全日空 平子裕志社長

今から第一歩を踏み出していかないと間に合わないのではないかという危機感はある

危機感の背景にあるのは、環境意識の高いヨーロッパの動きです。代替燃料を一定の割合で使うよう義務づけを検討している国もあり、守れない航空会社は将来、乗り入れを拒否される可能性も出てきたといいます。

日本航空 赤坂社長

例えば2030年、10%のSAF(が入った燃料)でないと飛んではいけませんとか、そういう各国の規制が入ったときにそれが達成できないと飛べなくなってしまう

全日空 平子社長

CO2の削減義務を課されている(海外の)航空会社は、日本でSAFが調達できなければ飛んでこないことになる。物流とか人の流れが止まってしまう。つまり日本産業全体の話になってくる

各国航空会社で“奪い合い”に

現在、両社は海外で生産された代替燃料の調達に乗り出しています。代替燃料の生産は世界でもまだごくわずかで、各国の航空会社が奪い合う状況になっています。  

全日空と商社の打ち合わせでは、全日空の担当者が「SAFの調達量を今後増やしていきたい」と話したのに対し、商社の担当者は「特にアジアや日本に(SAFを)持ってくるのはそう簡単ではない」という認識を示しました。その上で「(他社との)取り合いに負けないようにしっかり取り組めていけたら」と応じました。

国産代替燃料を「オールジャパンで」

こうした状況の中で重要になるのが代替燃料の国産化です。日本でもミドリムシから油を抽出する取り組みや、古着を原料にしたユニークな代替燃料の研究開発が進んでいます。

しかしまだ量産できる体制にはなく、必要な量を確保できる状況になっていません。

一方欧米では、代替燃料を商用化できるプラントがすでに開発され、自国の航空会社が活用できるように先手を打ち始めています。

両社の社長は、日本でも国産の代替燃料を大量生産するための体制を構築することが不可欠だと訴えます。

全日空 平子社長

国産であることが非常に大事。しっかりとSAFを製造できる体制、サプライチェーンをいかに早くつくっていくか

日本航空 赤坂社長

いろんな手を使って代替燃料をつくらなければいけない。そのために非常に多くのプレーヤーが必要になる。そういう意味でもオールジャパンの体制でこの課題を捉えていただけるといい

2人の社長は、代替燃料を安く大量に生産する技術を確立できれば、日本がいわば“産油国”のような存在になれる可能性もある、ぜひチャレンジしてほしいと繰り返し訴えていました。それだけ世界の流れに乗り遅れることに強い焦りを感じていることが伝わってきました。

(経済部 記者 加藤ニール)

【2021年11月2日放送】

この記事は動画でもご覧いただけます(ココをクリック)

あわせて読む

航空業界の出向者 新たな一歩をつかみ取れ

ANA国際線の担い手はいま

電動化へ課題 EVスタンドが減る理由

海でも脱炭素 “国内発の水素船”