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企業の“パーパス” なぜいま注目?

NHK
2021年11月15日 午後0:40 公開

企業経営で「パーパス」という言葉が注目され、関連のビジネス書が続々と出版されています。パーパスは「会社の存在意義」と訳され、社会にどんな価値を提供したいのかを、客や投資家、従業員などに分かりやすい言葉で表した会社の“志”のようなものです。なぜ今パーパスが注目されているのでしょうか?

“志”は課題解決 従業員に浸透図る

大手食品会社の味の素は2020年、新たにパーパスを策定しました。それまでの会社のビジョンは「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニーへ」。世界の食品企業のトップ10入りを目指すというものでした。

しかし、その言葉は従業員や経営陣に十分に浸透していなかったと言います。西井孝明社長は「40人ほど役員が集まる合宿があって『今のビジョンを言ってみてくれ』と言ったら、みんな覚えていなかった」と振り返ります。

そこで西井社長は経営陣を集め、「会社の存在意義は何か」を話し合いました。売り上げや事業規模の拡大だけでなく、食品会社が社会に果たすべき役割を改めて問い直したのです。

2年かけて練り上げたパーパスは「食と健康の課題解決企業を目指して」。食習慣の改善や健康寿命を延ばすことが会社の役割だと示し、従業員などと共有しました。

西井社長は「グローバル企業でこのぐらいの規模になりたいという目標のビジョンから、『2030年にはこういう課題を解決していたいね』というアウトカム(成果)になった。だからスッと腹落ちしたということだと思う」と話します。

会社では従業員にパーパスの説明会を開いたり、貢献度が高かった人を表彰したりして、浸透を図っています。

表彰された従業員の一人で研究開発部の大山秀樹さんは、パーパスについて「全員が同じ目標や事業化に向けて一丸となってやっていく。モチベーションがより高まった」と話しました。

商品・事業提案が集まりやすく

関東を中心にホームセンターを展開するカインズは2年前、「くらしに、ららら」というパーパスを掲げました。鼻歌を口ずさむような楽しい暮らしを客に提供することを会社の存在意義としたのです。    

パーパスを策定したことでやるべきことが明確になり、従業員から「洗濯物が楽に外せるハンガー」のような新しい商品の提案や、事業の提案が集まりやすくなったといいます。

従業員の発案で、店の地元の農家が育てた野菜をPRするイベントも始めました。店を地域の交流の場にすることで楽しい暮らしを提供していこうというねらいです。

高家正行社長は「われわれは何者なんだ、どんな価値を社会に提供していくんだと、この先10年20年僕らが追究していくべき事業であり価値だと思っている」と話します。

変化の時代に必要とされる 会社の“軸”

一橋大学ビジネススクールの名和高司客員教授は、会社の志を端的に表すパーパスが、気候変動やコロナ禍によって大きく変化する社会に対応していくためにも必要だと言います。

利益主義みたいなものが資本主義の原点だったけれども、それが地球の破綻や社会の破綻を生んでいることにみんなが気づき始めて、今までの右肩上がり成長という時代から、もう一度目的を探し直す時代に変わっている」と話します。

ほかにもさまざまな企業が「世界を感動で満たす」「服の領域で社会を支える」「より良い習慣づくりで人々の毎日に貢献」「豊かで快適な住まいの実現」などといったパーパスを掲げています。

社会の変化に直面して、会社を変えなければならないという動きや、従業員が働き方を模索する動きが起きています。そういう時だからこそ「何を目指すか」を見定めるため、軸となるパーパスを再確認する必要が生じているのかもしれません。

【2021年11月15日放送】

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