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脱炭素 命運かける“最新高炉”

NHK
2021年10月13日 午後1:22 公開

鉄鋼業界が直面する“脱炭素”という課題。日本国内で排出される二酸化炭素(CO2)は、鉄鋼業界だけで全体の15%に上ります。このため鉄をつくる高炉から出る大量のCO2を減らす技術開発がオールジャパンで進められています。業界の命運がかかる開発の現場を取材しました。    

水素使った新技術 高炉から出るCO2を削減

日本最大級で1日1万トンの鉄をつくっているという千葉県君津市にある製鉄所。

その敷地の一角に、鉄鋼メーカー3社などが協力して取り組む試験高炉があります。実際に生産を行う高炉より小型のものです。今回、試験操業が停止されている期間に特別に撮影ができました。

プロジェクトリーダーの野村誠治さんが鉄の製造工程を説明してくれました。「CO2が大量に出るのは高炉」だといいます。

高炉は、原料の鉄鉱石から鉄を取り出す製鉄所の中心的な設備です。鉄は1400度以上になるので、近くにいるとかなり熱さを感じます。

試験高炉では、鉄を取り出す過程に新たな技術を導入して脱炭素を進めようとしています。

鉄鉱石には酸素が含まれていて、鉄にするためには酸素を取り除かなければなりません。現在は炭素を含む石炭を使い、この2つを反応させることで石炭に含まれる炭素が酸素を奪い取って鉄ができます。しかしこの時に大量のCO2が発生してしまいます。

一方、新たな方法では石炭の代わりに一部、水素を使います。すると酸素の一部が水素と反応して水になりますその分、CO2の発生を減らせるようになったのです。

プロジェクトリーダーの野村さんは「試験高炉サイズで10%以上のCO2削減に成功したのは、世界で初めてだと認識している」と話しました。

技術的課題 まだ「極めて大きい」

ただ、実用化に向けては課題も多く残っています。水素は炭素に比べて温度が上がりにくく、水素の量を増やすと思うように鉄鉱石が溶けないのです。水素を吹き込む量やタイミングについて、最適なバランスを探らなければなりません。

そして最終的には、試験高炉よりもはるかに巨大な高炉でこの技術を実現しなければならないのです。

プロジェクトリーダーの野村さんは「技術的な課題は極めて大きいが、世界に先駆けてこの技術を開発するために、オールジャパンで解決してカーボンニュートラルに貢献したい」と話しました。

鉄鋼業界 “脱炭素”が国際競争の命運を握る

鉄鋼業界は2050年までにCO2の排出を実質ゼロにする目標を掲げています。

そのためには、開発中の技術で設備をつくり直していく必要があります。最大手の日本製鉄1社だけで少なくとも4兆円の設備投資が必要になるといいますが、脱炭素の国際競争には何としても勝ち残らなければならないとしています。

日本製鉄の鈴木英夫常務執行役員は「(脱炭素を)早く実現することによって世界のリーダーシップをとれる。もし出遅れ、技術でもマーケットでも先に(海外の)企業にとられてしまえば、鉄鋼産業のリーダーシップはとれなくなってしまう」と話しました。

ライバルの中国やヨーロッパも今、脱炭素の実現に力を注いでいます。今回取材した現場の人たちは「資源の少ない日本は技術で勝つしかない」と話していました。オールジャパンで前に進んでほしいと思います。

【2021年10月13日放送】

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