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広がる“レジリエンス投資”

NHK
2021年10月1日 午後1:22 公開

レジリエンス(resilience)”は英語で「回復力」「復元力」を意味する言葉です。この“レジリエンス”を強化するための投資が日本企業の間で広がろうとしています。なぜ今、企業に“レジリエンス”が求められるのか。神子田章博キャスターが解説します。

コロナ禍で広がる“レジリエンス投資”

“レジリエンス投資”の広がりの背景にあるのが、コロナ禍が企業の生産活動に大きな影響を及ぼしていることです。

例えば、自動車業界は以前から半導体不足で生産に支障が生じていました。さらに最近は、東南アジアで新型コロナウイルスの感染が広がったため、現地で部品が調達できなくなり、日本国内での車の生産が計画どおりにできなくなる事態が起きています。トヨタ自動車やホンダなどは計画から大幅な減産になっています。

海外拠点・仕入れ調達先の分散・多様化に力

企業の間では、こうした外的なショックへの対応力を強める動きが広がっています。

日本政策投資銀行が2021年夏に行ったアンケート「新型コロナを受けたサプライチェーン見直しの具体的な内容(検討を含む)」の結果を見ると、「海外拠点の分散・多様化」や「海外仕入れ調達先の分散・多様化」を進めようという企業が、20年に比べ大幅に増えています。

また「海外拠点の国内回帰」を考える企業も20年に比べて増えています。それだけ、内外の生産拠点や調達先をどう分散すればショックにより耐えられるようになるかを考えているということです。

米中対立や自然災害のリスクも

さらに最近では、米中対立といった地政学的な問題で部品の調達が滞るリスクもあります。

また日本では自然災害のリスクもあります。生産設備が地震で壊れる、河川の氾濫で工場が水につかってしまう、土砂災害で道路が寸断されて部品の調達ができなくなる、などのリスクを抱えています。

こうした中、日本政策投資銀行のアンケート結果では、具体的な“レジリエンス投資”の内容について「サプライチェーンの見直し」に加え、「水害対策・耐震補強」「非常用電源の確保」「物流拠点の増強」といった対応策を挙げる企業が少なくなかったといいます。

供給が途絶えるリスク「頻度高まっている」

こうした対応の重要性は以前から指摘されてきましたが、なぜ今“レジリエンス投資”が広がっているのでしょうか。日本政策投資銀行の産業調査部長の足立慎一郎さんは次のように説明しています。

例えば風水害でも20年に1回、50年に1回、そういう頻度で起こる規模の災害が毎年のように起きているというのがあると思う。同時に新型コロナのパンデミック、あとは地政学リスク

これまでの頻度であれば、本格的な拠点とか仕入れ調達先の複線化・多元化まではいかなかったところが、本格的に社会的責任を企業が果たしていくうえで、供給が途絶えるリスクが目の前の危機として迫っているという意識になっている

一時的な動きでなく、本格的に腰を据えてやっていこうという動きが高まっている

「企業の“打たれ強さ”が試されている」

専門家の話で「企業の社会的責任」という言葉が出てきました。消費者にとっては、工場の生産が止まれば、日常生活で当たり前に買えると思っていた商品が買えなくなるということですから、企業が社会からの批判を浴びることにもなりかねません。

企業にとっては、コストのことを考えれば1か所で大量に生産・調達するほうが安く済みます。しかし、さまざまな要因で頻繁に工場の生産が止まるようなら、コストをかけてでも複数のルートを確保しておくほうがいいと考える企業が増えているのだと思います。

私が“神子田流”に“レジリエンス”を訳してみると、「打たれ強い企業になる」ということだと思います。企業にとっては、しなやかで強力な事業基盤の再構築が求められていると考えます。

【2021年10月1日放送】

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