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“空の脱炭素”にサプライチェーンも直面

NHK
2021年12月7日 午後1:48 公開

アップルやフォルクスワーゲン、日立製作所やホンダなど、世界的な企業が二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目標に掲げていますが、こうした目標には取引先の部品メーカーなどを含むサプライチェーン全体が含まれます。

対応を迫られる部品メーカーにとって、製品を海外に届ける際の“空の脱炭素”が 課題となっています。

物流の脱炭素に“厳しい目”

自動車やスマホ向けの電子部品を手がける「太陽誘電」は、太陽光発電の電力を増やすなどCO2削減に積極的に取り組んでいます。

しかし、いま懸案となっているのが物流の脱炭素です。取引先の約9割は海外のメーカーで“厳しい目”が向けられ始めているのです。

環境対策を担当する廣鰭伸行部長は「物流での排出は、われわれの手から離れた間接的なCO2の排出となる」と指摘したうえで「(海外メーカーからの)要求は強まってくる」との見方を示しました。

代替燃料に注目も…供給量、コストに課題

この会社がいま注目しているのが、植物などから作った航空機の代替燃料(SAF)です。従来の空輸よりCO2の排出を8割程度抑えられるといいます。

会社は9月、大手航空会社が運航するSAFを使った貨物便を初めて利用し、ドイツまで製品を輸送。CO2を150キロほど削減したという証明書を取得しました。

一方で、SAFの貨物便を手配する物流会社「近鉄エクスプレス」との話し合いでは課題も見えてきました。SAFの生産量は現在、世界全体の航空燃料の1%未満にとどまり、確保自体が簡単ではありません

物流会社の担当者は「供給量が現時点では少ないので、どれくらい(の時期)から利用できるか不明」と説明しました。

さらに「輸送コストは高くなってくる」とも説明。SAFは製造コストがかかるため、価格が従来の燃料の数倍にもなります。

物流会社は今後、大手航空会社などに調達を働きかけていくことになりました。

太陽誘電の廣鰭部長は「物を送るとなると空路に頼らざるを得ない。SAFの量がそんなに多くないので、コストも下がって使えるようになることに期待している」と話しました。

航空会社 SAF確保に「横断的取り組みを」

SAFを使った航空便のニーズがサプライチェーンにまで広がる中、航空会社は大手商社と手を組み、何とか対応しようとしています。

全日空と三井物産の打ち合わせを取材すると、三井物産の担当者は「SAFを製造していくことが脱炭素の取り組みに資する」などと話していました。

SAFの事業は始まったばかりですが、日本企業が脱炭素の流れから取り残されないためにも、その確保は待ったなしの状況です。

全日空の調達部の吉川浩平さんは「航空会社の中だけにとどまらず製造が追いついてくるように、まさに産業横断的な取り組みをリードしていく必要がある」と話しました。

工場など生産段階でのCO2削減は自分たちの工夫でできますが、輸送の脱炭素をどうするかは、資源が少なく島国の日本にとって大きな課題で、産業の競争力にも直結することになりそうです。

(経済部 記者 加藤ニール)

【2021年12月7日放送】

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