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災害復旧へ保険金支払いを急げ

NHK
2021年8月25日 午前11:59 公開

記録的な大雨による浸水被害などが相次ぐ中、被災した人たちの生活再建に必要になるのが損害保険です。新技術を活用することで、保険金の迅速な支払いにつなげようという取り組みが始まっています。

ドローンとAIで浸水高を算出

8月19日、佐賀県武雄市で損害保険大手の三井住友海上がドローンによる被害状況の調査を行いました。武雄市では市内を流れる六角川が氾濫して広い範囲が水につかり、住宅およそ1650棟が浸水したとみられています。

ドローンを使うねらいは、浸水したエリアの正確な地形を把握することです。1秒間に3回撮影された画像をつなぎ合わせ、高精細な3Dモデルを作成します。その3Dモデルに雨量などのデータを加え、AIで分析することで、被災した建物の浸水高を算出できるのです。

この保険会社で損害サポート業務部の課長を務める丸山倫弘さんは「ドローンを使って正確な地形の情報を得る。3DモデルにAIで水を流すことによって、最終的に何センチまで浸水したかアウトプットを出す」と説明。1軒1軒に調査員を派遣する必要がなくなるため、保険金の支払いにかかる時間を大幅に短縮できるといいます。

人工衛星で災害直後から被害状況を把握

今回の水害で、人工衛星を使って被害状況を把握しようと氾濫発生の直後から動き始めたのが、損害保険大手の東京海上日動です。人工衛星は特殊なレーダーを備えているため、厚い雨雲に覆われた場所や夜間でも撮影が可能です。

撮影した画像では、水に覆われた部分が黒く映ります。被災前と後の変化を比べることで、浸水の範囲とその深さを算出することができ、支払いまでの期間を2週間程度短縮することにつながるといいます。

この保険会社で損害サービス業務部の課長代理を務める大橋洋介さんは「大きな被害が生じる場合は、被害直後は普通であれば撮影ができない条件になるが、(人工衛星では)発災したその日の夜間に撮影することができた」と話しました。

増える保険金支払い 脱「人海戦術」図る

損害保険会社が新技術の導入を急ぐ背景には、風水害などに伴う保険金の支払額が増えていることがあります。2018年度・2019年度は1兆円を超え、保険金の迅速な支払いに支障をきたしかねないと危機感を抱いているのです。

ドローンを活用している三井住友海上では、今後さらに広域で災害が起きても対応できるよう、最新型の導入を進めています。最新型は従来型に比べ、飛行速度が4倍、飛行時間が3倍。飛行できる範囲が大幅に広がり、撮影に1か月以上かかるところを数日程度に短縮できると見込んでいます。

損害サポート業務部の丸山課長は「人海戦術ではもう現実的には無理だと思っている。あらゆる場面を想定して対応できる体制をつくっていくことが重要」と話しました。

人工衛星を活用している東京海上日動では、集めた地形などのデータを自治体に提供して、防災減災につなげる取り組みができないか検討を始めています。災害の被害が大規模化、深刻化する中、新技術やデータの有効活用を急いでほしいと思います。

(経済部 記者 藤本浩輝、経済番組 ディレクター 金武孝幸)

【2021年8月25日放送】