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カメラにプラス! ニコンの新戦略
NHK
2021年6月11日 午後12:36 公開

大手精密機器メーカー「ニコン」のコンパクトデジタルカメラの販売台数は、ピーク時に年間1700万台でしたが、今では年間26万台に落ち込みました。そこでニコンは、カメラで培った技術を生かしながら新たな収益の柱となる事業を育てようとしています。

“光でモノを見る”技術を生かした金属3Dプリンター

ニコンが開発した金属3Dプリンター。ステンレスやチタン合金など金属の粉末を吹き付けながら、レーザーで溶かし、製品を加工していきます。

人工の骨から衛星の部品まで、軽量かつ強度の高いさまざまな製品を製造できます。複雑な形の部品を精密に作る秘けつが、装置の中にあるカメラです。製造過程で、仕上がり具合を人工の目で自動的に計測し、レーザーを当てる位置などを調整していきます。

次世代プロジェクト本部長の柴崎祐一さんは「装置の中に“目”を持っていて、見ながらやるから正確にできる。ニコンが誇る、光でモノを見る・計測する技術を入れて、見ながら加工できるようにしたのが特徴」と説明します。

この3Dプリンターのもう一つの特徴は、冷蔵庫ほどのコンパクトさです。大学の研究機関やベンチャー企業などの限られたスペースでも使えるとして、幅広い市場に売り込みを図っていきたいとしています。

馬立稔和社長は「光を使っていろんなものを計測する、三次元立体物の寸法を測ることは長い歴史があり、非常に私どもの強みを発揮できる領域だと考える」としています。

脱炭素社会に向けた需要を取り込む

もう一つ会社が磨きをかけようとしているのが、微細な加工技術です。4月に加工装置が完成。緑色のレーザーが金属などの表面に、1ミリの100分の1の幅で細かな溝を彫りこみます。

こうした微細な溝を飛行機や風力発電のプロペラなどに刻めば、空気抵抗が減り、エネルギー効率が上がります。CO2の削減につながるということで、脱炭素社会に向けた需要を取り込めると期待しています。

馬立社長は「将来5年ではなくて、10年20年先を見て事業は育てていかないと、なかなか大きい事業にはならない。新しい事業領域に今までより一層力を入れて成長させる」と話し、他社にはない特徴を持つという金属3Dプリンターと微細加工の技術を、カメラに続く新たな事業の柱に育てようとしています。

ニコンは“カメラの目”で製品を正確に計測するとしていましたが、「VISION(長期展望)」を持ち、これから社会や産業界で何が求められるのか、正確に見抜く“社長の目”が改めて問われていると感じました。

(経済部 記者 根本幸太郎)

【2021年6月11日放送】

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