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歴代最長総裁 金融政策の行方は

NHK
2021年9月29日 午前11:49 公開

日銀の黒田総裁の在任日数が、きょう2021年9月29日で3116日となり歴代単独トップとなりました。8年半にわたる金融政策は何をもたらしたのか、この先どうなるのか、考えます。

「異次元の金融緩和」のねらい

黒田総裁と言えば「異次元の金融緩和」です。それを象徴するデータが「世界の主要中央銀行の資産規模の推移(名目GDP比)」です。日銀・ヨーロッパの中央銀行(ECB)・アメリカのFRBが、それぞれの国のGDP、経済規模に比べてどのくらい資産を持っているかを示したものです。

グラフを見ると、黒田総裁が就任した2013年以降、アメリカやヨーロッパと比べて日銀の資産規模の急激な膨張ぶりが目立ちます。それだけ大量のお金を日銀が市場に供給したことを意味していて、これが「異次元緩和」です。

黒田総裁は、異次元緩和で猛烈な勢いで金融機関から大量に「国債」を買い取りました。また「ETF」という上場株式の投資信託も買い、お金を市場に供給しました。

シナリオではこれを呼び水にして、企業の投資や生産を押し上げ、給料・雇用を押し上げ、消費を押し上げるという、よい循環を2年ほどで生み出し、その結果として2%ぐらい物価が上がる経済にすることを目指していました。

異次元緩和 その効果と副作用

異次元緩和の結果、金融市場は好転しました。円相場と日経平均株価の推移を見ると、輸出企業を苦しめていた円高が是正され、株価も上がりました

ただ、肝心の物価は目標に届かず、異次元緩和はずるずると続き、副作用も目立つようになってきました。

国債と東証1部の株式について日銀の保有割合を円グラフで見ると、まず国の借金にあたる国債を44%(540兆円)も保有するまでになりました。

またETFを買い続けたため、日銀は東証1部の株式の7%相当(51兆円)を保有する大株主になってしまいました。

「いくら借金しても日銀が買い入れるから大丈夫」「株価も日銀が支えてくれる」という状況をつくり出し、財政の規律や市場の機能を損なっているという指摘もあります。

分かれる専門家の評価

8年半にわたる黒田総裁の金融緩和への評価は専門家の間でも分かれています。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、大胆な政策で日本経済に変化をもたらした点は評価できるといいます。

日本経済を大きく活性化した。伝統的な日銀のスタンスは海外の中央銀行に比べると、非常に行動に消極的で動きも遅いという特徴があったが、黒田総裁が就任して(市場の)期待を上回るような大胆な金融緩和を実行した

一方、日銀の元理事で、みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストは、日銀としてできることはしたものの、金融政策の限界があらわになったと指摘します。

金融政策だけで2%のインフレを起こそうとするのは非常に無理がある話だった。金融政策と物価との関係は実はなかったということを、日本の経験が証明している

金融政策の行方は

黒田総裁の残りの任期はおよそ1年半。黒田総裁は「この先も緩和を粘り強く続ける」考えです。

ただ気がかりなのは、再び金融危機のような大きなショックが起きた時に、日銀に打つ手はあるのか、という点です。

世界に目を転じると、アメリカのFRBはすでに金融緩和を縮小していく方針を打ち出しています。

みずから始めた異次元の緩和をどうやって元に戻していくのか。せめてその道筋は考えてほしいと思います。

【2021年9月29日放送】

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