日本のカキは冷凍品が多く輸出されています。しかし海外では生で食べるのが一般的で、新鮮なカキをどうやって生きたまま輸出するかが課題でした。それを可能にしたのがカキを“鍛え上げる”養殖法。いったいどんなもの?
宮城産カキ 生きたまま海外へ
日本有数のカキの生産地・宮城県。塩釜市で開かれたイベントで試食されたのは、生きたまま海外に運ぶことができる輸出向けのカキです。冷蔵で1か月近く新鮮な状態が続くといいます。
大きさは約6センチと国内で流通しているカキに比べ半分程度ですが、うまみがあり、味わいは濃厚です。
このカキを手がける水産加工会社の高田慎司社長は「何とか海外のマーケットに日本で作ったカキを導入したいと思っていた」と話します。
外気と日光で“鍛錬” 日持ちするカキに
このカキは、日本では珍しい新たな方法で養殖されています。
これまでの養殖は、海中深く10メートル程度まで縄でカキをつり下げて育てるのが一般的でした。
新しい養殖法は「かご」を使ってカキを徹底的に鍛え上げます。カキを入れたかごを海面近くに設置。するとカキは、潮が満ちている時は海の中で栄養源のプランクトンを取り込みます。
そして潮が引くと、カキを入れたかごは海面上に出て外気や日光にさらされます。カキは身の中の水分が蒸発する生命の危機に直面し、蒸発しないように必死に殻を閉じようとします。
こうしてカキは、長い時には1日の半分近くを水の外で過ごします。大きさは小ぶりになりますが、鍛え抜かれた分、殻と殻をつなぐ貝柱が強くなり日持ちするカキに育つといいます。
カキの輸出が盛んなオーストラリアなどの養殖方法を参考にしました。
新しい養殖法で育ったカキとこれまでのものを5日間冷蔵保存して比べてみると、これまでのカキは鮮度が落ちて殻が開いたのに対し、新しい養殖法のカキはその後1か月近く新鮮なまま生きていました。
担い手不足の養殖業 輸出で活路
このカキの輸出は、地元の養殖業に大きなメリットをもたらそうとしています。
国内向けのカキは消費者が調理しやすいよう殻をむいて出荷していますが、高齢化の影響などで担い手不足が指摘されてきました。
一方、海外は殻付きのまま食べるのが主流。課題を解決できるのではと期待されています。
水産加工会社の高田社長は「宮城県のカキもどんどん海外に輸出して、若い方に興味を持ってもらい(生産者が)増えていけばいい」と話しています。
このカキは2021年11月、試験的に香港やシンガポールに輸出され、22年春から本格的に輸出を始めることになっています。ちょっと小ぶりながらも鍛え抜かれたカキが、輸出を力強く引っ張っていってほしいと思います。
(仙台局 アナウンサー 黒住駿)
【2022年1月12日放送】