ニュース速報

世界を変える!?量子コンピューターの可能性

NHK
2021年9月6日 午後1:42 公開

7月にIBMの量子コンピューターがアジアで初めて神奈川県に設置され、稼働を始めました。

グーグルが開発中の量子コンピューターが「スーパーコンピューターで1万年かかる計算を200秒で解いた」と発表されたこともあり、この分野がいま大きく注目されています。

研究・開発の最前線に迫り、その可能性を探りました。

注目の量子コンピューター 大きさは?内部は?

番組の布施谷キャスターが訪ねたのは、川崎市にある「かわさき新産業創造センター」です。間近で見る量子コンピューターはIBM製。高さ3メートルほどの筒状で、スーパーコンピューターと比べると意外にコンパクトに感じます。思ったより稼働音もせず、静かでした。

筒状の部分の大半は冷却装置で、コンピューターをマイナス273度に冷やし、電気抵抗のない状態をつくり出しています。

そしてこの中にある特殊なプロセッサー(演算装置)に量子力学の物理法則を使って計算させると、これまでにない能力を発揮するのです。

現在、東京大学や複数の日本企業が連携して、量子コンピューターのビジネスへの応用を目指して、日夜研究を行っています。

東京大学の理事・副学長を務める相原博昭教授は「何に使うと、この量子コンピューターが持つポテンシャル・可能性を引き出せるのか、はっきりさせる。イノベーションが生まれるきっかけになる。爆発的な展開の起爆剤になる」と期待します。

注目される量子コンピューターですが、使いこなすにはまだ技術的な課題があります。極小の量子は制御するのが難しいほか、ハード・ソフト両面の性能向上も必要です。

それでも、世の中をがらりと変える“ブレークスルー”をねらって研究が進んでいます。

どのような分野に活用が期待?

具体的に活用が期待されているのは、通常のコンピューターでは計算に時間がかかりすぎる分野です。

例えば、原子・分子レベルの膨大な計算が必要な新薬の開発、高性能バッテリーなど新素材の開発、無数の車をうまくコントロールして渋滞を解消するといった社会課題の解決などです。

中でも研究が活発な分野の一つが、世界中の株式市場などのデータを分析する金融の分野です。

大手金融グループの研究部門「みずほリサーチ&テクノロジーズ」では、川崎市にある量子コンピューターにつないで研究を始めています。

この会社では現在、従来のコンピューターを使って、株式投資やデリバティブなどのリスクを毎日何時間もかけて計算しているといいます。

将来、量子コンピューターで瞬時に計算できるようになれば、顧客の資産運用にもプラスになると考えています。

研究を担当する宇野隼平さんは「非常に高速な計算ができるようになることで、大きな価値を生み出すと思っている。(運用)リスクは減るので、より安全な資産運用ができるようになる」と話しています。

現場では、世界のどこかでブレークスルーがいつ起きてもおかしくないとの前提で研究が続いていると感じました。

世界との競争に後れを取るな

量子コンピューターの研究は、民間企業はもちろん国家レベルでも、アメリカ、中国が相当な勢いで進めています。

日本も2020年、「量子技術イノベーション戦略」をまとめて動き出しました。

東京大学の相原教授は「量子技術は予想よりも早く世の中に普及していく可能性がある。いま競争に参加しておかないと、取り返しのつかないことになる」と話しています。

量子技術が、デジタル社会をさらに変革するという声もあり、今回取材した以外にも、さまざまなタイプの量子コンピューターが世界中で研究されています。日本から、課題を突破するブレークスルーが起きることを期待します。

【2021年9月6日放送】

動画はこちら