1月2日。大好きなこの日がことしもやってきた。
心が弾む。ワクワクが止まらない。
なぜか。
『箱根駅伝』の日だからだ。
(おはよう日本キャスター 伊藤海彦)
箱根駅伝のコース沿いで生まれて
僕は箱根駅伝が大好きだ。
汗が染みこんだタスキを必死につなぐ姿、苦しいときなどに監督が車から選手を後押しする声、そしてゴールテープを切り仲間に迎えられる美しき光景。
すべてに人間のドラマがある。
そんな正月の風物詩に、小さいころから影響を受けてきた。
1985年5月28日、僕は神奈川県二宮町で生まれた。
家から箱根駅伝の沿道までは徒歩2分ほど。
往路でいうと4区、復路は7区だ。
小学生の時は応援する旗が欲しくて、朝早くからワクワクした気持ちで沿道に行っていたことを覚えている。
時には自転車で選手を追いかけたこともあった。
選手の走るペースに合わせるため、息を切らしながら全力でペダルをこいだものだ。
「人間ってこんなスピードで走ることができるんだ・・・」
衝撃的な出来事として今も胸に刻まれている。
箱根駅伝の日は茅ケ崎市にある祖父母の家にいることも多かった。
祖父母の家も箱根駅伝のコースに近かった(往路3区、復路8区)。
青空に浮かび上がる富士山と、茅ケ崎が生んだスター・桑田佳祐さん率いるサザンオールスターズの歌詞にも出てくる烏帽子岩を見ながら、沿道で声を枯らした。
少し冷たい湘南の風が気持ちよかった。
僕にとって箱根駅伝は、最も身近で最も心躍るスポーツイベントの1つだった。
<撮影:伊藤海彦>
早稲田に行きたい!子ども心に抱いた憧れ
小学2年生の時、1993年の大会は僕の人生に大きな影響を与えるものになった。
のちに箱根駅伝のスターにのし上がる早稲田大学の渡辺康幸選手(現・住友電工陸上競技部監督)が1年生で花の2区を走り、早稲田が総合優勝を果たしたのだ。
えんじ色で胸には白色のWの文字。
そのユニフォームを着た早稲田の選手が目の前を走り抜けていくのを、小さな少年は目を輝かせて見ていた。
「かっこいい・・・」
早稲田に大きな憧れを抱いたと同時に、生まれて初めて大学というものを意識する瞬間だった。
失意の受験・・・憧れが一転、早稲田がライバルに
「早稲田に行きたい」
小学2年生で抱いたその強い気持ちを胸に、高校まで野球しかしていなかった僕は大学受験を前に勉強に励んだ。
しかし、希望は一瞬で打ち砕かれた。
不合格。
人生そんなに甘くない。
あれだけ憧れた早稲田が、儚くかすんで消えていった。
失意のどん底にいる僕を拾ってくれたのは明治大学だった。
入学すると、周りには早稲田に惜しくも届かなかった人がたくさんいた。
「同志たちよ・・・」
その日を境に、憧れの早稲田が今度はライバルになった。
箱根駅伝がつないできた友情
実は、こうしてできた大学の友人たちが今でも1月2日になると毎年茅ケ崎の僕の実家に集まって、一緒に沿道で明治を応援している。
母校の応援をする正月恒例のイベントは、10年以上も続いている。
「早稲田には負けるな!!」
僕たちの合言葉だ。
箱根駅伝が仲間との結束を強めてくれて、37歳になった今でも昔と変わらない関係でいられる。
箱根駅伝は人と人をつなぐ、僕にとって大切な大会なのだ。
ところで・・・毎年晴れるのはなぜ?
沿道で応援していると毎回気になることがある。
「当日、雨が降った記憶がない」
大体晴れている。それこそ富士山がきれいに見える日が多い。
なぜなのか。そうだ!おはよう日本の気象キャスター檜山さんに聞いてみよう。
実は檜山さんは明治大学政治経済学部政治学科の先輩だ(そして、早稲田を受験していた仲間だ)。
普段はベイスターズファンの檜山さんとスワローズファンの僕はライバル関係にあるが、
箱根駅伝は2人とも明治を応援している。
檜山さんが見せてくれたのは、気象庁の過去の天気のデータ。
それを見ると、箱根駅伝当日の1月2日の降水量は0ばかり。
2007年から2022年にかけては16年にわたって1ミリも雨が降っていないのだ。
檜山さんに理由を聞くと「お正月のこの時期、冬型の気圧配置になりやすいので、関東は晴れる日が多い。ただ、ここまで雨が降っていないとは思わなかった」と話していた。
檜山さんからも、箱根駅伝へのメッセージをもらった。
「大学時代は応援団吹奏楽部に所属していましたが、現役時代は箱根への出場がなく応援に行けませんでした。74年ぶりの優勝を!」と明治愛を語るとともに、「ベイスターズもことしこそ25年ぶりの優勝を。強いスワローズに勝たなければ!」と、ライバル心もむき出しだった。
ことしはどんなドラマが・・・
ことしの箱根駅伝は、学生三大駅伝のうちすでに2つを制した駒澤大学が3冠を達成するのか、それとも青山学院大学が意地を見せ2連覇を達成するのか、それとも我が明治大学が僕たちを喜ばせてくれるのか。
どんな展開になろうとも、沿道で応援している子どもたちは、選手たちの圧倒的なスピードに目を丸くし、歯を食いしばって走るその姿に憧れ、将来の夢を描くだろう。
かつての僕がそうだったように。
箱根駅伝は、今年も多くのドラマを見せてくれるに違いない。
すべてのランナーに激励と感謝をこめて。そして最後に・・・
「早稲田には負けるな!!」