本土復帰50年 沖縄の学生は米軍基地に何を思う?(井上二郎)

NHK
2022年5月13日 午後7:16 公開

土日祝日キャスターの井上二郎です。  5月14日(土)と15日(日)は、本土復帰から50年を迎える沖縄から中継でお伝えします。 

▶▶5月14日(土)の放送はこちら(NHKプラスで1週間配信)◀◀

▶▶5月15日(日)の放送はこちら(NHKプラスで1週間配信)◀◀

実は私、NHKに入局して最初に配属となったのが、沖縄放送局でした。 

それから20年以上がたち、復帰の時に掲げられた「本土並み」(=本土との差をなくすこと)が今どうなっているのか、私がいた20年前とどう変化したのかを知るため、再び沖縄を訪ねました。 

今回は、沖縄が向き合い続けてきたアメリカ軍基地の存在について、特にこれからの沖縄を担う若者たちがどう感じているのかを知るため、地元の学生たちと対話をしてきたので紹介します。 

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学生たちに会うため、沖縄国際大学を訪ねました。 

大学は普天間基地のすぐ隣にあります。 2004年に、基地を飛び立ったヘリコプターがキャンパスの構内に墜落し、炎上。 今も崩れた建物の一部や焼け焦げたアカギの木が残っています。 

沖縄国際大学がある宜野湾市は本島中南部、那覇市から10キロほど北に位置しています。 

市の面積のおよそ4分の1を普天間基地をはじめとするアメリカ軍基地が占めていて、住宅街や公園を歩けば、すぐに“世界一危険”とも言われる普天間基地のフェンスが見えてきます。 

まさに基地と隣り合わせの場所で学ぶ学生たちは、基地との向き合い方をどう捉えているのでしょうか。手がかりとしたのは、復帰50年を迎えるにあたってNHKが行った世論調査の結果です。 

詳しい世論調査の結果はこちら

世論調査は、ことし2022年2月2日から3月25日にかけて、沖縄県と全国のそれぞれ20歳以上の1800人を対象に郵送法で行い、沖縄県では45.1%にあたる812人から、全国では61.9%にあたる1115人から回答を得ました。 

米軍基地についての質問で、沖縄に住む人のうち「基地を全面撤去すべき」、「本土並みに少なくするべき」という回答が合わせて79%に上りました。 

しかし年齢別でみてみると、29歳以下の若い世代では4割を超える人が「現状のままでいい」と回答していました。 

私が沖縄で基地問題について取材をしていた20年前には、世代を問わず「基地のない平和な沖縄になってほしい」という願いを多くの人から聞いた感覚がありました。 

10年前に行われた世論調査(個人面接法)でも、29歳以下の世代で「現状のままでいい」と回答した人がおよそ3割でした。 

世論調査の結果を見て、「米軍基地が現状のままで良い」という人が増えているのではないか、そう思いました。 

<メモ> 沖縄にアメリカ軍基地ができたのは終戦後です。 太平洋戦争の激戦地となった沖縄は、戦後27年にわたってアメリカの統治下にありました。 1972年の5月15日に「本土並み」を掲げて実現した沖縄の本土復帰でしたが、いまだに在日米軍専用施設のおよそ7割が沖縄に集中しています。 

「正直、沖縄と関係なくありたかったと思う時はあります」 

お邪魔したのは沖縄国際大学経済学部の前泊博盛教授のゼミです。 基地への賛否をディベート形式で討論する授業を行っていると聞いたからです。 

見出しの言葉は、その時、3年生のある女子学生が私に投げかけた言葉です。 

8人の学生が基地容認派、反対派に分かれ、調べてきた双方の主張に沿って意見を戦わせるディベートの授業を見学した後、私は時間をもらい、彼らの輪に入って話をさせてもらいました。 

私はこう切り出しました。 

「ここからディベートの立場関係なく、ぶっちゃけトークでお願いします。本音の部分で、沖縄にある米軍基地について、あなたは容認派ですか?反対派ですか?それとも『正直分からない』派ですか?」 

すると、このゼミにいた8人中3人が「反対」、5人が「正直分からない」に手を上げました。 

「分からない」という理由を聞いてみると、今の安全保障をめぐる状況を反映した答えが返ってきました。 

学生)  「ない方がいいけど、ウクライナとロシアのような関係になったらどうなるかと思うと…。その時々によって軍事力が必要になってくることもあると思います」 

経済的な理由を挙げる人もいました。 

学生)  「確かに自分の住む地域も基地が近いので騒音が結構あるんですけど、軍用地などでお金をもらったり基地で働いていたりして何らかの影響受けている人がいるので」 

井上) 「身の回りにそういう人がいる?」 

学生) 「はい、うちは親が軍雇用(基地で働く民間人)なんです」 

彼らは大学に入って、より真剣に基地問題を勉強するようになった人が多いということで、基地のメリット・デメリット、歴史、客観的データなどを日々学んでいます。 

そうした中で、学べば学ぶほど、知れば知るほど、逆に自分の意見が分からなくなるという人もいました。 

学生)  「SNSにある情報が正しいか分からないし、評論家の人が言っていることも正しいのかなとか思ってしまいます。 いろんな人たちに配慮しようと思えば思うほど、どっちの立場も分かって、どちらが正しいのか分かんなくなっちゃいました」 

話が深まって、「そもそもなぜ基地について考えなくてはいけないのか、と思う人は?」と聞いてみると、「分からない派」の学生の多くが手をあげました。 

学生たちにとって基地は、「生まれた時からある当たり前の光景。普段、日常の中では優しく陽気に接する隣人としての側面もあるから」というのがその理由でした。 

そして、このやり取りの中で投げかけられたのが、先ほど紹介した「正直、沖縄と関係なくありたかったと思う時がある」という、ある女子学生の言葉でした。 

そして彼女は続けました。 

「沖縄に生まれるかどうかは、自分では選べないから」 

彼女がこの言葉に込めた思い。 

なぜ沖縄に暮らす人ばかりが、基地の是非や存在の意義を考えろと言われなければならないのか。 

なぜ沖縄だけに問題が押しつけられるのか。 

考えることすら、沖縄と本土の間には不平等があるのではないか。 

厳しい現実を押しつけられてなお、その意味を考えることまでも強いられるのはおかしい、一方的すぎるのではないかという思いだと私は受け止めました。 

言葉に詰まる私に、彼女は「考えることを求められるけど、沖縄に生まれていないから簡単にそんなこと言えるのかなって、思っています」と話しました。 

私はこれが、復帰からの50年間、埋まらなかった沖縄と本土の間に横たわる溝であり、沖縄のあきらめと本土の無関心が交錯した結果、放置された現状なのかもしれないと感じた瞬間でした。 

基地の存在が“当たり前”となる中で 

ゼミを主宰する前泊教授によると、学生たちは生まれたときから基地が当たり前のように身近にある環境で育ち、基地の是非についても深く考えてこなかった人も多いのだそうです。 

 その中でロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起こり、情報の波の中で基地への思いも大きく揺れているようだといいます。 

沖縄国際大学 前泊博盛教授 

「どんなに考えても、どんなに願っても、基地問題は変わらないのだという無意識の先入観を私たち大人が与えてしまっていたのかもしれない。若い人たちが主体的に考え行動できるように、大人達が未来像を描ける社会をつくらなくてはいけないし、本土の人たちは、沖縄の基地や在日米軍の問題を傍観者としてではなく、自分ごととして一緒に考えてほしい」 

かつて基地や経済の「本土並み」を目指した沖縄。 

変わる意識、変わらない現状と関係性の中で、復帰50年の節目を迎えます。 

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