堀菜保子です。
北京オリンピックからおよそ1年。
現地での様々な競技での取材を今でも鮮明に覚えていますが、大会最終日に銀メダルを獲得したのが、カーリング女子日本代表でした。
選手たちの一投一投の行方を見守った方も多いのではないでしょうか?
今月の筋肉体操は、カーリング界きっての「筋肉好き」山口剛史選手に登場いただきます。カーリング界に「筋肉部」を立ち上げ、筋肉を磨いてらっしゃいます。
2月5日に閉幕したカーリングの日本選手権では、所属するSC軽井沢クラブは2連覇を達成!世界選手権の切符をつかみ取りました。
実は1年前、北京パラリンピックの車いすカーリングの実況を担当した際、解説が山口選手だったんです。
その際にも、カーリングの奥深さ、面白さに加えて「筋肉愛」も教えていただきました。筋肉をこよなく愛する山口選手と、谷本先生の対談も必見です!
【NEW】第4回 腕立て伏せで「ダブルえくぼ」
谷本道哉さん
山口選手、やっぱり服の上からでもいい体をしてるのが分かりますけど、一番自信がある筋肉はどこでしょう?
山口剛史選手
だい・きょう・きん!ですね。
谷本さん
大胸筋じゃなくて、だい・きょう・きん!ですね(笑)。触らせていただいてもいいですか?右側のほうが大きいですかね?
山口選手
そうですね。
谷本さん
ちょっと力を入れていただいて…ここ、服の上からでも分かるんですが「えくぼ」があるんですよ。大胸筋って、回り込んできているので、大胸筋がしっかりついてる人はえくぼができる。
あっ、大胸筋の上と下で「ダブルえくぼ」になってないですか?
山口選手
そうですね(笑)
谷本さん
上のえくぼと下のえくぼと、最高ですよね。やっぱり魅力のある男は、えくぼが上と下に。えくぼが素敵って、よく言われるでしょう?
山口選手
そこまで言われないですけど(笑)
谷本さん
あ、でもちょっと非常にへこんでる部分がありますね?
山口選手
そうですね。スイーピングで傷めて、肉離れをしたことがありまして。
谷本さん
肉離れ!大胸筋の肉離れはあまりないものですけど、やっぱり相当すごくスイープするんですね。
このスイープで鍛えた技。トレーニングもされているとは思いますけれども、大胸筋は体を支えるのにも結構使うので、肉離れしない程度に(笑)皆さんもしっかり鍛えていただきたいと思います。
これだけの大胸筋は、何で作られたんですかね?
山口選手
トレーニングだと、ウエイト(トレーニング)のときはベンチプレスを。あとは、遠征中とかジムがないところでは、腕立て伏せですね。
谷本さん
では、皆さんにも肉離れしない程度の腕立て伏せをやっていただきたいと思います。上と下にえくぼをつくりましょう!笑顔で筋トレしたら顔にえくぼもできるし、しっかり腕立て伏せをしたら胸のえくぼもできる。
えくぼ2つでいきましょう!キャッチコピーにしてください(笑)。
山口選手
そうですね。「ダブルえくぼ!」(笑)ぜひやりましょう!
谷本さん
世界選手権が4月にありますけども、それに対する意気込みはいかがですか?
山口選手
世界選手権に行くのは久々ですので、まず今の「世界との差」というのをしっかり見たいなと思っているのと、今僕たちは世界の中盤ぐらいの位置まで来ているなと感じていますので、プレーオフ進出、そしてメダル獲得のチャンスは十分あるなと思います。日本の男子はまだ世界でメダルを獲得したことがないので、ぜひ高い挑戦をやってみたいなと思います。
谷本さん
歴史をつくって下さい!
山口選手
はい!さらに2026年、今度はイタリアでオリンピックがあるんで、そこはまた行きたいなと思います。女子がここ2大会連続でメダルを取っていますし、「カーリングと言えば女子」というイメージがあるんですけども、男子も迫力があります。男子のすばらしいカーリングもたくさんの皆さんに見ていただいて、応援していただいて、僕たちのスーパープレーを見ていただけたらなと思います。
谷本さん
やっぱり男子のほうが"ぶっ飛ばす力が強い"といった違いがあるんですか?
山口選手
そうですね。もちろんやっぱり、筋肉がありますので!
谷本さん
見応えがあると思います。期待しています。よろしくお願い致します。
第3回 カーリングストレッチで腰まわり楽に
谷本道哉さん
ストーンを投げるのは何と言うんですか?
山口剛史選手
投げることは「デリバリー」と言いますね。
谷本さん
投げるときに足を大きく前後に開くじゃないですか、柔らかいなって思うんですけれど、やっぱりストレッチはよくされるんですか?
山口選手
そうですね。あんまり僕はそこまで体が柔らかいほうではないんですけど、逆にやらないと、どんどん左右の差が出てきて思った形にならないので、やるようにしています。
谷本さん
十分にストレッチをしていないと、やっぱり姿勢が取りにくくなる?
山口選手
ちょっと伸びていないなと感じるときはありますね。
特に試合が続いていくと、体に疲労がどんどん重なってきて、そんな時にやっぱり足の開きが少しでも浅くなると、思った感覚に近づかない。カーリングって、40メートル先の的に向かって数センチの単位で狙って投げるので、数センチの誤差が大きい誤算になってしまうので。
谷本さん
デリバリーポーズをちょっと見せていただいて…足をしっかり引いて、膝が曲がっていますけれど、前足を目いっぱい出しますよね。前足の大臀筋。それから後ろ足の腸腰筋という足を前に振り出す筋肉。大臀筋がかたくなると後ろに引っ張られて猫背になったり、腸腰筋がかたくなるとその逆に、反り腰になったりするので、いい姿勢を保つためにもこのカーリングストレッチは皆さんも行ったほうがいいです。
ぜひ皆さん、カーリングストレッチで、腰まわりのコンディションをよくしましょう。
山口選手
レッツトライ!
第2回 投げる姿勢でバランス感覚⤴
谷本道哉さん
山口さんが投げるのは何投目ですか?
山口剛史選手
いまは5投目、6投目。サードです。投げるほうも大好きです。一番楽しいですね。
谷本さん
皆さんを見ていてよく思うのが、投げる時まったくぶれないですよね。
山口選手
そうですね。ぶれると、やっぱりコースに影響が出てしまうので。
谷本さん
股関節の屈曲が大きいので、大殿筋がすごく伸びてますよね。この姿勢を取るのは大変だと思います。後ろの足がきれいに引けているので、腸腰筋も柔らかいと思いますね。一切ぶれない。足が一直線になっていて、前の足を通ったあとを後ろ足が通っていくという感じですね。きれいですね!
山口選手
このポーズは結構きついです。
谷本さん
この形のフィギュアがほしいですね。めちゃめちゃかっこいいですよ。非常にバランスが取りにくいはずなんですけど。まったくぶれないですね。いやー、きれいですよね!ずっと見ていられる。
ピタッとまったく左右にぶれないですけれど、見ているとね、投げる時に足が左右一直線になっていますよね?もっと広げたほうがバランスを取りやすいかと思うんですけど、どういう理由があって足幅が狭いんですか?
山口選手
この足の開き方は個人それぞれありますけれども、確かにそんなに横に開いていないですね。滑っている間にあまり抵抗がないようにはしています。抵抗が多いと投げる強さに影響が出るというか、感覚がずれちゃうので。
谷本さん
前足が通った後に、後ろ足を通すみたいなイメージですね。前足が通って滑りやすくなったところをなぞっていくから、よく滑るという事なんですかね?
山口選手
そうですね。
谷本さん
あっ、答えが出ましたね!そのために足幅を狭めているのでバランスが相当難しいんじゃないかなって見えるんですけど。ちょっと投げて試させていただきます。
谷本さん
だいぶ遠くにあるように見えるんですが、距離は何メートルあるんですか?
山口選手
端から端まで45メートルぐらいですね。だから40メートルぐらい先に向かって投げます。
谷本さん
ボウリングよりずっと遠いですよね?感じとしては、ボウリングの5倍ぐらい向こうにあるように見えますね。山口選手はボウリング場なんかに行ったら、簡単に見えてしょうがないんじゃないですか?「そこじゃん!」みたいな。
山口選手
いやいや、そんな事はないですけどね(笑)。ボウリングはボウリングでまた難しいです。
でもカーリングの場合は長いですので、なかなか初めてやって真ん中に止めるっていうのは簡単ではない。曲がるんです。強さだけだとどんどんできるようになるんですけど。その曲がりまでコントロールしてとなると難しい。しかもあの的の中でも、1センチとか2センチとか、ピンポイントの場所を狙うので。
谷本さん
100メートル向こうにあるように感じますね。行き過ぎちゃダメですもんね。いやー、当てられる気がしないです。
山口選手
やれると思いますよ。筋肉があれば、できます!
谷本さん
筋肉があれば、できる!
ぶれないようにというのは、繰り返し投げていると、身についてくるんですかね?
山口選手
そうですね。僕がカーリングを始めたのが9歳の時からだったので、まだ小さい時はもしかしたらこけたかもしれませんけど、自然とできるようになっていました。
谷本さん
じゃあ、カーリングの動きでたくさん投げていれば軸は安定すると。それをまねたような動きを皆さんもすると、きっと安定して体を動かせるようになる。
高齢な方は転んでしまったりしますから、カーリングの動きを模した形で、バランス感覚の練習をぜひ皆さんにもやっていただきたいと思います。
山口選手
いいバランスがとれると思います。ぜひやってください!
第1回 スイープで筋持久力アップ
谷本道哉さん
カーリングと筋肉、山口選手はどう思っていますか?
山口剛史選手
カーリングにおける筋肉っていうのは、非常に大事だと思います。日本の選手が世界で勝つためには筋肉が必須ですね。
谷本さん
海外の選手と比べると違うというのはありますか?
山口選手
あります。もちろん体がどうしても小さい。特にスイーピングということに関しては、海外勢のほうが身長も体重も大きいので、同等のパワーをつけるためにはやっぱり筋肉をつけて、より低い姿勢でスイーピングしたほうが効果が高くなる。ですので僕たちは、海外勢の選手よりなるべく低いポジションで、筋肉をたくさん使っていい圧力をかけようと。
谷本さん
海外勢と戦う、スイーピングの筋肉という感じですね。「カーリング筋肉部」というのを立ち上げられていると聞きました。
山口選手
そうなんですよ。やっぱり世界で勝つために筋肉が大事だということで、筋肉好きな国内トップ選手で集まって筋肉部を立ち上げて。これから未来に、オリンピックに出ていくような若者の選手にも、筋肉の大切さっていうのを伝えていかなきゃというのをモットーに部をつくりました。
谷本さん
山口選手が磨いているのを見ていると、今の言葉の重みが分かりますね。
このブラシでスイーピングをやるんですね、軽いんですね。スポンジが硬い。かなりつるつるになりそうです。
山口剛史選手
氷の表面の温度を上げて、摩擦で氷を溶かして進みをよくさせる。持つところは、色が変わった黒いところですね。それで姿勢を低くして。なるべくブラシと足の距離を離すんです。体幹も使いますし、上半身の筋肉も使います。
谷本さん
こんなに体重をかけるんですね?
山口選手
体重をかけたほうが効果があります。こすったところ、先生がこすったところは氷の粒が残っているんですけど、僕のところは粒がないです。触ってもらうと分かるんですけど。これが筋肉の力です!
谷本さん
ほんとだ、すごい!全然違います、真っ平らですよ。僕のところはでこぼこしています。こんなに違うんですね!つるっつるですよ!山口選手に磨いていただいたら肌もつるつるになりそうだな。これ、モップがけしても家がきれいになりますよね。
山口選手
何かご要望があれば、やります(笑)。
谷本さん
山口選手と言えば「鬼のスイーピング」というイメージがあるんですけど、長い時ってどれぐらい磨くんですか?
山口選手
だいたい20秒前後ぐらいですかね。
谷本さん
20秒も!?相当長いですよね。それはストーンを投げた場合の「ちょっとうまくいかなかったから、やっぱり磨かなきゃ」とかっていう時もあったりするんですか?
山口選手
そうですね。ストーンが遅かった時に、こすると距離が伸びるようになるので、少し遅かった時に全力で40メートルずっとこすると、僕だと2メートルから3メートルぐらい距離が伸ばせるので。投げる人が2メートルから3メートルぐらい弱く投げてもなんとか調整できます。それで全力でこすって、決まったときは快感ですよね。
谷本さん
息もあがりますよね。筋力トレになりつつ、持久トレにもなる。
山口選手
きつい試合の翌日は筋肉痛になります(笑)。
谷本さん
上半身を鍛えながら持久運動もできるということで、お掃除もうまくなるかもしれませんね。ぜひ皆さんにも、このスイープを。おうちにあれば何か棒を使っていただき、なければエアーでもできる体操を行っていただきたいと思います。