愛媛県宇和島市吉田町へ 次の世代につなぐ“挑戦”(首藤奈知子)

NHK
2022年7月5日 午前10:58 公開

不安定な天気。
雷がゴロゴロ鳴ったかと思うと突然大粒の雨が降り始めました。
みかん農家さんが軽トラに乗って園地に現れました。
「こんな雨が降ると心配になるんよ。
 あの日を思い出す・・・」

西日本豪雨の被災地へ

4年前のショッキングな光景を忘れることはありません。
山が崩れ、大切なみかんの木がなぎ倒され、美しい緑の景色が茶色に塗りかえられました。
猛暑の夏、断水の中での過酷な復旧作業が何日も続きましたが、被災されたみなさんから聞こえてきたのは、ボランティアはじめ全国からの支援への感謝の言葉でした。

当時松山放送局にいた私は、発災直後はライフライン情報を、その後3年は復興応援番組などを担当してきました。4年目となる今年も、全国に西日本豪雨後の姿を伝えたいと強く思っていました。

今回訪ねたのは、宇和島市吉田町の河野雄哉さん。この地域は、西日本豪雨の際に県内でも特に被害が大きかった場所です。河野さんのかんきつ畑も、およそ2割が被害を受けました。

取材で訪ねた6月下旬、河野さんは復旧工事が進んだ急斜面のみかん畑で、草取りや摘果の作業をされていました。
この時期みかんはまだ緑色。小さいけれど、近づくと良い香りがします。

子どもたちが大きくなる頃には・・・

さらに河野さんが見せてくれたのは、山の中に切り拓いた園地。

そこに、紅プリンセス(べにぷりんせす)を植えていました。新たに開発され期待されている高級かんきつです。
新品種は、前例がないだけに、育てるのはなかなか難しそう。
でも、次の世代のためにもチャレンジです。

倉庫近くでは、3人のお子さんたちが苗木のポットに生えた草取りのお手伝い。手際良く草をぬいていきます。なんとも微笑ましい兄妹です。

河野さんは
「被害が大きかったので、あと数年は収入も元通りではなさそうです。
紅プリンセスが実をつけるのもまだ数年先だけど、子どもたちが大きくなる10年、20年先にたくさん収穫できるような木になっていればいい。私の父もそうしてきてくれたから」と話してくれました。
3人の子どもたちもまた、お父さんたちの背中を見て育つのでしょうね。


(番組スタッフより)

西日本豪雨から4年。
おはよう日本では、7月6日と7日の2日間にわたって被災地の今をお伝えします。
三條雅幸キャスターが岡山県倉敷市真備町、首藤奈知子キャスターが愛媛県宇和島市吉田町を取材。復興に向けた課題や、地域の可能性を見つめます。

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