“普通の中国”を描く竹内亮さん 首藤キャスターがインタビュー

NHK
2023年5月22日 午後6:22 公開

中国・長江をテーマにしたドキュメンタリー映画が公開されました。

監督を務めたのは中国在住の日本人で、中国の人々のありのままの暮らしや文化を題材にドキュメンタリー作品を作り続けている竹内亮さん(44)です。

以前に一緒に仕事をしたことがある首藤奈知子キャスターが、その思いを聞きました。

“普通の中国”を映画に

東京・有楽町で5月19日に行われた映画の上映会は、平日の午前中にもかかわらず満席でした。

上映されたのは中国・長江をテーマにしたドキュメンタリーで、監督を務めたのは中国在住の日本人、竹内亮さんです。

舞台挨拶に立った竹内さんは、流ちょうな中国語と日本語を交えて、時には笑いもとりつつ、映画に込めた思いを熱く語りました。

報道では見ることのできない、“普通の中国”を伝えたいと思って撮りました。皆さん、映画を見たあとはSNSで拡散してください

2013年に中国・南京に移住した竹内さん。中国のSNSで500万人以上のフォロワーを持ち、中国の町に生きる“普通の人”たちや日本の文化を紹介する作品などをインターネット上で発信してきました。

首藤キャスターが竹内亮さんにインタビュー

私(首藤奈知子キャスター)は、竹内さんたちが制作した2011年放送のNHK「長江 天と地の大紀行」という番組のナレーションを担当して一緒に仕事をしたことがあります。

竹内さんは日本に住んでいたころ、制作会社のディレクターとして仕事をしていて、その時からご縁があるんです。

竹内さんにお会いするのは12年ぶり!明るい雰囲気は当時と変わりません。昔話に花を咲かせながら、和気あいあいとした雰囲気でインタビューは始まりました。

首藤キャスターどうして移住を決めたんですか?

竹内亮さん2011年に首藤さんと一緒に作った『長江 天と地の大紀行』。あの番組がきっかけです。当時、長江の源流辺りから上海まで6300キロを撮ったんです。あの撮影の時に、あ、俺この国に住みたいって思ったんです。僕が中国の田舎に行くと、『日本人か?』と聞かれるので『そうだよ』と答えると、『高倉健さん元気か?』『山口百恵さんは元気ですか?』と確実に聞かれるんです。中国の人たちの日本に対する知識とか印象が、1980年代で止まってるんですよ。それに衝撃を受けました

それから10年間、中国の人々を撮影し続けてきた竹内さんは、中国の日本人に対する意識の変化を感じているといいます。

竹内さん2015年頃を境にガラッと変わりました。爆買いブームが起きて、会う人会う人、『ああ俺、最近日本に行ってきたんだよ。銀座行ってきて、よかったよ。きれいだよ日本って』と日本を褒めてもらえるようになりました

この10年間で中国の社会そのものも大きく変わっているといいます。

竹内さん社会全体が猛スピードで進んでいる感じです。科学技術とかITは圧倒的に進んでいます。都市によっては無人タクシーも走っているし、財布も持ち歩く必要がない

中国の変化を間近で感じ続けてきた竹内さんは、ベテランの撮影スタッフが多かった、この日の日本でのインタビューの撮影現場そのものに驚いていました。

竹内さんこの現場の状況を、まず見たことないです。中国では

首藤キャスターなんのことだろう?

竹内さん失礼ですけど、平均年齢

首藤キャスター汗がどっと出ちゃった。中国はもっと若いんですか?

竹内さん現場に出る人はみんな若いです。もうみんな20代です。カメラマンはまず確実に20代です

印象に残った「最先端の村」

日本との違いを、その肌身で感じながら中国を撮り続けてきた竹内さん。印象に残っているのは、NHKの番組の取材で訪れたある村だといいます。

竹内さん母系社会の村があるんですけど、すごい印象的ですね。女性が偉い村があるんです。少数民族で、女性がトップ、全ての物事は女性が決めます

その村に今回、映画の撮影のためおよそ10年ぶりに訪れると、新たな発見があったといいます。

竹内さん時代がこの村についてきているのです。10年前にそこを取材した時は、変な村だと思いました。今行ってみたら『わあ!すげえ、時代の最先端いってる』って思いました。そこでは女性リーダーの下、経済発展よりも環境保護を一番大事にし続けた村でした。だから経済は発展してないけど、環境がめちゃくちゃきれいで。いま中国は経済発展だけじゃなくて環境保護にすごく力を入れ始めたので、時代の最先端をいっています。中国でも、女性の生き方、女性の働き方、女性の権利意識がすごく強くなっているけれど、この村はもっと先をいっているんです。女性が物事を決めて治めて環境保全もして経済も発展してきているというのが、今見ると先進的だって思ったのが印象的でした

日本人がリアルな中国を伝えるということ

中国から見た日本、日本から中国、それぞれの目線から作品を発信し続ける竹内さん。リアルな姿を発信し続けることが大切だと感じています。

竹内さんどうしてもステレオタイプになってしまうんですよ、お互いに。“中国ってこうだよね”みたいに。いやいや、14億人いるんですけど。“日本人ってこうだよね”、いやいや、こっちも1億2000万人いるんですけどって。僕は、僕が見たリアルを、ウソをつかないで伝えていく、ただそれだけなんです。日本の方に、中国面白いよっていうのを伝えたいという思いがあります。逆に日本を伝える番組も両方やってるんです。日本の面白いところも伝えたい

<一番右が新人の竹内ディレクター>

インタビューの終わり、この日見学していた、4月から社会人になったばかりのNHKの新人職員・竹内ディレクターからこんな質問が(たまたま同じ名字でした!)。

新人の竹内ディレクター竹内さんは中国語を話せる日本人として中国の人に認識されていると思うんですが、逆にちょっと“よそ者”になりきるというか、それで新しい話を引き出そうみたいにすることってありますか?

竹内さん深い質問だ(笑)取材相手によって、“日本人”を使えるところは使います。田舎の方に行くと日本に慣れていない。田舎の方に行く時はなるべくもう全部中国語で、しかもなるべく流ちょうな。かなりネイティブに近いスピードで喋るようにしています。その方が『おっ、こいつ日本人なのに中国語上手いな』ってすぐ仲良くなれる。だけど沿岸部に行くと、逆に日本人らしさを出したほうがウケます。やっぱり外国好きだし、日本文化好きだし

首藤キャスター相手のタイプによって使い分けながら?

竹内さんそうですね!

情報があふれる日々、全てをキャッチするのは難しいですが、さまざまな媒体から違った角度で、伝えている情報に触れることが大切だと改めて感じました。できれば実際に訪ねて、自分で感じて判断すること、その力をつけていくことが求められているのではないでしょうか。そうした行動が、平和な未来につながっていくと強く思いました。

竹内亮さんのインタビューは5月23日(火)放送のおはよう日本でお伝えする予定です。