【好き勝手対談】セ・リーグ開幕!ヤクルト3連覇を阻むチームはどこに…(後編)

NHK
2023年3月30日 午後0:28 公開

セ・リーグ開幕好き勝手対談、後半は去年残念ながらBクラスに終わった巨人、広島、中日のファンに聞きます。

巻き返しの秘策、下克上のカギは「生え抜きエースの成長」「解禁された”声出し応援”」そして…「スワローズができるなら、うちだってできる!」

(おはよう日本キャスター 伊藤海彦)

【前編はこちら】ベイスターズファン檜山キャスター、タイガースファン片山アナが語ります!

“常勝”巨人ファン「東京はやっぱりジャイアンツでしょ」

伊藤海彦キャスター

おはよう日本のスタッフの中で巨人ファンを探したところ、”生まれながら”の巨人ファンというディレクターを見つけました。

川上ディレクター、ずばり誕生日はいつですか?

川上慈尚ディレクター

1994年の10月8日。巨人ファン、野球ファンなら誰もが知る「10・8」という劇的な日に私は生まれまして。巨人と中日が最終戦まで同率首位で並んで、勝ったほうが優勝というとんでもない試合でした。槙原寛己さんが先発して、斎藤雅樹さんがリリーフ。最後の抑えは桑田真澄さんでした。

もちろん生まれた時は記憶がないですけど、家族がみんな巨人ファンで、母親は「あなたのせいで私は10・8を見られなかった」と(笑)。ちょうど陣痛が始まって母親は私を生むために専念していて、10・8という巨人ファン誰もが見たい試合を見れなかったというのをずっと言われています。そこから運命を感じて、自然と巨人ファンになっていきました。

海彦:実は、「10・8」の2日前の試合はスワローズ対巨人で、スワローズが勝ったんですよ。2日前に巨人が勝っていたらそれで優勝が決まっていた。スワローズのおかげで「10・8」が成立したんですよ。

川上:そうですか、じゃあ僕も、スワローズががんばらなかったら巨人ファンじゃなかったかもしれないですね(苦笑)。

<子どもの頃、宮崎キャンプを見に行った川上ディレクター(左)>

海彦:ただ最近、そんなジャイアンツが強くないという問題がありますね。2021年、22年は巨人ファンとしてはさみしい結果じゃないですか。

川上:いや本当にもう、去年4位でBクラスですけれど、巨人ファンとしては2位とか3位でも嬉しくない。常勝軍団であってほしいという思いがあって。2000年の高橋由伸さん、松井秀喜さん、清原和博さんがそろっていためちゃくちゃ強い巨人を見てきている世代なので。最近は日本シリーズでも勝っていないですから、あまり勝っている印象が正直昔みたいにはない。

海彦:僕はアンチ巨人なんだけれど、巨人が弱いのは実は嫌なんです。強い巨人を最後に倒して進むのをスワローズファンは望んでいる。それが前のシーズンなんて、巨人と12.5ゲーム差ですよ。

川上:東京に2つチームがあって、巨人戦は今地上波テレビでの中継もないですし、ヤクルトにファンをとられるんじゃないか、入れ替わっていくのが怖いですね。東京を巡る争い。「東京はやっぱりジャイアンツ」なので(笑)。

海彦:そこは「東京はスワローズ」でしょ(笑)。じゃあ今シーズン、スワローズを倒して優勝するためのポイントになる選手は?

川上:やっぱり戸郷翔征投手です。WBCに行って決勝マウンドにもたって、噂によればダルビッシュ投手からいろいろな教えを受けてきたと。まだ今年23歳なんで。

戸郷投手はストレートとフォークが持ち味で去年初めて2桁勝利したんですが、今まで菅野智之投手が引っ張っていったような感じだった。戸郷投手が15勝を超えて沢村賞を狙えるぐらいで投手陣を引っ張ってほしいなと。

海彦:ほんとだよね、ドラフト6位の選手がWBCでもすごく投げたし。やっぱり、巨人に大エースは必要?

川上:必要ですね。「誰が勝っている」というのがここ最近ないので。「ジャイアンツのピッチャーといったら戸郷」という感じになってほしいなと。

海彦:バッターはどうですか?ここ3年ジャイアンツから3割バッターが1人も出ていないんです。

川上:ちょっと、どうしちゃったのかなあ…っていうね、本当に。

注目しているバッターは同い年という思い入れもあって、吉川尚輝選手です。今までけがに泣かされて、去年初めて規定打席に到達して打率は2割7分7厘だったので、ことしは3割を超えてほしい。足も速いからかき回せるし、意外とパンチ力があってホームランも打てる。

生え抜きの吉川がことし副主将になってどんどん若手を引っ張って、背中を見せられる感じになっていってほしいなと。

海彦:じゃあ今年は巨人と争いながら、最終的には「東京はヤクルト」と(笑)

広島カープ「愛すべき新井監督を優勝させたい」

海彦:続いてはカープファンに話を聞こうということで、同期の深川仁志アナを呼びました。ずっと野球の話をしてきたけど、なんでカープが好きになったのかあまり聞いたことがなかったね。

深川仁志アナウンサー

僕は広島局にいたことがあって「勤務していたから好きになった」と思われがちなんですけど、実はそうじゃなくて。もとはといえば、東京に住んでいたんだけど少年野球の監督が広島県出身だったの。必然的にユニフォームは「赤」。みんなで球場に試合を見に行くのも、東京ドームのレフトスタンドでカープの試合だった。90年代前半のカープって強くて、すごく好きだったな。大野豊さんがむちゃくちゃかっこよくて!

<小2からピッチャーの深川アナ。白いスパイクが90年代のカープを思わせる >

海彦:仕事を始めて広島で勤務して、カープの試合へ歩いて見に行けるぐらいのところにいたっていうのはどうだった?

深川:生活の一部になっていたね。街の人は、あしたの天気は知らなくてもあしたの先発ピッチャーは知っている。それぞれ喜怒哀楽のポイントがあって「やっぱあいつだな」「次こいつが来る」みたいな話をエンドレスにする。みんなが本当に同じ方向を向いて”推し”の活動をする。これが広島県。

<2018年 広島県で放送された優勝特番 解説の小早川毅彦さんと>

海彦:じゃあ今年、深川アナの”推し選手“は誰ですか?

深川:個人的には林晃汰選手という、智弁和歌山高校出身で去年は1軍に出ていないけれど、いいバッターです。おととし少しブレイクして、去年コンディションがなかなか上がらなかったけれどヤクルトの村上宗隆選手を超えるポテンシャルはあるかな。ピッチャーはコアに推すとしたら、背番号16番の森翔平選手。去年のシーズン終盤に出てきて、左投げで先発もいける。

海彦:そんな推し選手がいる中で、着てきたのは新井貴浩監督のユニフォームですね。新井監督にかける思いはどう?

深川:弱かった時も強かった時も分かっている新井さんで、雰囲気もめちゃくちゃよくなっている。「新井さんを勝たせたい、優勝させたい」というのは選手も球団もファンも県民も共通の思いなんで、みんなが一つの方向に向かっていくことがヤクルトを倒すことにつながると思う。

海彦:なんで新井さんは県民にそんなに愛されてるんですか?

深川:最近WBCで大谷選手を見ると、やっぱり完璧じゃない。だけど新井さんはそれとは違って、すごくエラーするのよ。びっくりするほど大事なところでやらかすし、打てよ!っていうところで三振もする。でも、心を打たれる放物線を描くホームランがある。悲しい時に悲しい顔するし、うれしい時に喜ぶし。少年野球の時の僕らが大人になってもそのままな感じがする。

あと、広島の新井監督とヤクルトの高津監督は県立広島工業高校の先輩後輩ですからね。ヤクルトとの対戦もすごく楽しみです。

海彦:実はことしの開幕戦もこのカード、僕も深川アナウンサーと一緒に行く予定です。

深川:神宮は相性が悪いの。特にここ3年は神宮で1回も勝ってません。そして私が行くと村上宗隆選手が打つんだよね。

海彦:カープは去年、村上選手に13本もホームランを打たれている。

深川:でもこれ言うとあれだけど、そんな村上選手のファンになってる部分もある(笑)。すごいのよ、ほれぼれする。でも開幕は大瀬良大地投手と言われています。絶対負けません、開幕戦!目標はV奪還ですよ。

あと今年は声出しや選手別応援歌も解禁されて、あの雰囲気をもう一回味わいたい。声援がなくてカープが弱くなったって都市伝説があるんですよ。みんなの思いが強い球団なんで、声を出せないコロナ禍は本当に辛かった。今年は声援の力も借りて、強いと思うよ!

中日ドラゴンズ「ヤクルトにできるなら、うちも下克上!」

海彦:最後に話を聞くのは、おととし5位、去年最下位とここのところ低迷する中日ドラゴンズ。ファン歴24年という横井ディレクターに来てもらいました。

ドラゴンズファンになったきっかけは何でした?

横井:小学4年で地元のチームでソフトボールを始めたんですよ。1999年でドラゴンズが開幕11連勝した年で、僕は三重県桑名市出身なので「地元にこんな強いチームがあるんだ」って応援し始めた。星野仙一さんが監督で、今の監督の立浪和義さん、山崎武司さんとかが主力選手。福留孝介さんがルーキーで入ってきた年なんです。

海彦:1999年もそうだし、2004年から落合監督のもとで中日の全盛期がやってくると思うんだけど、その後8年間で優勝4回、2位が1回、3位が3回。全部Aクラスだった。

横井:至福の時間でした(笑)。落合監督時代は基本ロースコアだったんで1試合1試合は「大丈夫かな」っていうのはあるんですけど、「勝って当たり前」っていう感覚でしたね。

海彦:あのころスワローズも名古屋に行くと絶対勝てない、っていうか打てないの。ホームランも出ないし。投手陣盤石だったし。

横井:ナゴヤドームでは基本負けないと思ってやっていました。「どういういい試合で勝てるのかな」っていう感じで。どうやって料理してやろうかみたいな(笑)。

海:ずっと見てきて、印象に残ったエピソードとか試合はありますか。

横井:2007年日本シリーズの第5戦。山井大介投手から岩瀬仁紀投手への”パーフェクトリレー”はいまだに心に残ってますね。正直最初は「完全試合をしているのに代えるのか、代えちゃうんだ」っていうショックはあったんですよ。

<2007年の日本シリーズ、山井投手に交代を告げる落合監督>

でも日がたつにつれ、あの時53年ぶりの日本一で、落合ドラゴンズを1年目から支えてきたクローザーの岩瀬仁紀という選手がいて、最後をしめるというのが「落合さんがつくってきた野球」なんだなっていうのを理解しました。

それ以来、「貫く」という姿勢が自分の人生観でも大事になっているなという気がします。外野から言われても信念をもってやっていくことがかっこいいなあと思ってやってます。

海:落合さんぶれなかったですもんね。ディレクターとしても、番組を作っていてあっちいったりこっちいったりすると大変。仕事でも「ここだけは絶対残す!」とか、貫いてこられました?

横井:僕はふらふらしてる(笑)。だからこそ落合さんは難しいことをやっていたんだなあ、プロフェッショナルだなあと今になって分かりますよね。

海彦:落合さんの時代が終わって、そこからドラゴンズはなかなか勝てなくなった。ファンとしてどう思ってる?

横井:最初は負けてしまうことに慣れてなかったので「何でこんなに勝てないんだろう」と。でも逆に今は、一つ勝つだけでとてもうれしい。負けてもあしたにつながればいいやと。万年Bクラスチームのマインドに変わりつつある(苦笑)。

海彦:一時期の僕みたい。ずーっと勝てなくて、いい試合しただけで「きょうおしかったね」とか言いながら。不思議なもんだよね、ついさっき「どう料理してやろうか」って言ってたのに、マインドってこうも変わるかと。

横井:両方味わえてよかったと思います。これでまた強くなっても勝って当たり前じゃなくて、1つ勝つ大事さがファンとしても分かるので。より楽しめる。

海彦:実は投手陣は防御率も2位で、浴びているホームランの数も少ないし、毎年ドラゴンズのピッチャーはいいなと思う。

横井:今シーズンもいいんじゃないかなと思っています。大野雄大投手、柳裕也投手っていうエースクラスが健在で、小笠原慎之介投手がいい感じで上がってきて、涌井秀章投手が来た。で、なんといっても高橋宏斗投手!

<WBC決勝、アメリカのトラウト選手を三振にとった髙橋宏斗投手>

WBCにも選ばれてさらに磨きがかかって。やっぱりエースって、投球内容を超えたオーラがあるじゃないですか、そういったものを身に着けて帰ってきてもらいたいなって。15勝くらいしてほしいなと思ってます。

海彦:ただデータを調べると長年の懸案でもあるというか、ドラゴンズは打てない。チーム打率は4位。ホームラン、打点、フォアボールは全部6位。特にホームランはチーム全体で年間62本、村上選手は1人で56本!

横井:そこまで打っていないか…(苦笑)。

打者陣は大幅な入れ替えを断行して若い選手ばかりになったので、これがどう出るかですよね。岡林勇希選手とか、土田龍空選手、あと石川昂弥選手。期待しているのがルーキーの田中幹也選手で、たぶん2塁のスタメンになるんじゃないかと思っているんですけど、めちゃくちゃ打つし足速いんです。(この対談のあと、残念ながら田中選手は右肩の脱臼で復帰は未定となってしまいました。しっかりと治して、またプレーする姿を楽しみにしています:横井談)

海彦:彼は東海大菅生高校で、僕は神宮球場でよく高校野球を見てたんですよ。忍者みたいに素早いし守備もうまい。オープン戦もよかったよね。

横井:これまでの主力を放出してしまったんだけれど、若手がいまこれだけ躍動してると「未来に期待が持てるな」って感じがしますね。

海彦:ではことしの目標は?

横井:本当は優勝したいです…簡単じゃないっていうのはよく分かっていて、我慢することには慣れてきた。でも最下位からの優勝は奇しくもヤクルトさんが見せてくださったので、歯車さえかみ合えば、ことしドラゴンズは一気に優勝っていうのもあると思っています。ヤクルトもオリックスもやってるので、ドラゴンズができないはずがない!