ニュース速報

復旧を遅らせる災害廃棄物 対策は?

NHK
2021年8月1日 午後4:37 公開

3年前の西日本豪雨の際に浸水した岡山県倉敷市では、がれきや水に浸かった家具などの廃棄物が、2か月にわたって公園や道路に積まれたままの状況が続きました。最新の研究から、こうした災害廃棄物が大都市で発生すると、復旧への影響がさらに深刻化することがわかってきました。対策はどこまで進んでいるのでしょうか。

復旧妨げる災害廃棄物 被災地の苦悩

岡山県倉敷市真備町に住む鈴木知子さんは、3年前の西日本豪雨で自宅が浸水する被害を受けました。1階にあった畳や冷蔵庫、テレビ、たんすはすべて水に浸かったと言います。市は、こうした廃棄物の一時的な保管場所として、真備町内に7か所の仮置き場を順次開設しました。一方、鈴木さんは軽自動車しか持っておらず、廃棄物を仮置き場まで運び込めなかったため、市に伝えた上で、自宅前の公園に置くことにしました。

しかし、思わぬ事態が起きます。わずか1週間足らずで、公園ががれきや生ごみなどで、あふれかえったのです。始めは、鈴木さんと近所の人たちのための“置き場”でしたが、見知らぬ人たちも持ち込むようになっていったのです。

置き場所のなくなった廃棄物は道路にもあふれ、最長2キロにわたって廃棄物が並べられた場所もありました。廃棄物置き場は200か所以上にのぼり、被災地では激しい渋滞が発生しました。救急や復旧車両の通行にも遅れが生じる事態となりました。

収集作業に追われることになった倉敷市には、住民からのクレームが相次ぎました。市役所には、いくつもの段ボール箱に詰め込まれたクレームの記録が残されています。市では、廃棄物置き場の状況把握も出来ない中、鳴りやまない電話の対応に人員を割かざるを得ず、復旧業務の停滞につながったといいます。

倉敷市一般廃棄物対策課 大瀧慎也課長 「想像以上に廃棄物が出てくるスピードが速かった。今後は、それを前提として最悪の事態を踏まえて行動するように努めたい」

大都市で深刻化する 災害廃棄物処理

災害廃棄物が復旧に与える影響は、大都市部ではさらに深刻になると警鐘を鳴らすのが、岡山大学大学院の藤原健史教授です。藤原教授は、倉敷市での住民の行動や実際の排出量を詳しく調べ、大都市が広域に浸水したらどうなるのかシミュレーションを行いました。対象としたのは、東京や埼玉を流れる荒川の下流域。300万人以上が暮らす地域です。都内で1日に処理が可能な廃棄物の量は、全体で約1万7000トンですが、シミュレーションでは、最悪の場合3日目でその限界を上回り、およそ1か月にわたって廃棄物が出続けるという結果になりました。こうした量の災害廃棄物が出た場合、住宅が密集する荒川の流域では、街のいたるところに廃棄物が積み上がり、暮らしの再建に深刻な影響を及ぼす可能性があると藤原教授は指摘します。

岡山大学大学院 環境生命科学研究科 藤原健史教授 「これだけ一度に廃棄物が発生することになると、もう収拾がつかない。仮置き場の問題を真剣に考えていく必要があると思います」

災害廃棄物の処理 対策は?

対策はどこまで進んでいるのでしょうか。国は2014年に全国の自治体に災害廃棄物の処理計画の策定や、一時的な仮置き場の確保を求めています。しかし、7年たった今でも処理計画のある自治体は全国で約6割にとどまっています。仮置き場を決めているところは、もっと少ないとみられます。

東京23区を対象にNHKが2021年7月、独自に行ったアンケートの結果では、12の区が廃棄物を置くための場所が「選定中」や「見つかっていない」などと回答しました。主な理由は「空いている土地がない」というものです。

ただ、一時保管場所を「選定済み」と回答した11区についても、候補地を決めただけでは、対策は十分とはいえません。荒川が氾濫すると甚大な被害が想定される足立区では、区内に313か所の仮置き場の候補地を用意しています。そのすべてが区立公園ですが、実際に活用するとなると、施設の一部を改修するなどの対応が必要になるそうです。区の担当者に案内してもらった公園の場合、現在の入り口では廃棄物の運搬車両が通れないため、フェンスごと取り外すなどの対応が必要ですが、誰がその対応を担うかといった具体策の策定については、これからだということでした。

そうした中で、一部の自治体で始まっているのが、災害廃棄物の処理に住民にも関わってもらう仕組みづくりです。南海トラフの巨大地震で大きな被害が想定される三重県の南伊勢町では、「仮置き場」の開設から運営までを、住民が担う方法を模索しています。今月、町が開いたワークショップでは、可燃ごみや家電など、廃棄物の種類ごとに置き場をどう分けるのか、住民自身が議論しました。住民全員に“自分事”として、災害廃棄物の処理について考えてもらおうというのです。こうした取り組みを通して、町は、災害廃棄物の処理方法が住民の中に共有され、廃棄物の処理がスムーズに進められると期待しています。

大規模な災害になると支援の手は、届きにくくなります。だからこそ、住民自身が取り組むことが結果的に早い復旧につながります。災害が多発する時代、被害をどう防ぐかだけでなく、廃棄物の問題も、事前の準備が必要ということで、対策を前に進める必要があるのではないでしょうか。

(社会部 記者 飯田耕太)

【2021年7月20日放送】