山田裕貴さんが挑む”最強のサムライ”とは?大河ドラマ『どうする家康』インタビュー

NHK
2023年1月3日 午後5:00 公開

いよいよ1月8日から始まる大河ドラマ『どうする家康』。

戦国の世に生まれ、多くのピンチを乗り越えて乱世を終わらせた徳川家康を、現代に通じるリーダーとして描いていくドラマです。

松本潤さん演じる徳川家康の家臣団のひとり、本多忠勝(ほんだ・ただかつ)を演じるのは俳優の山田裕貴さん。57回の戦で一度も傷を負わなかったといわれる“最強のサムライ ”役への意気込みや現場の裏話を首藤キャスターが聞きました。

(おはよう日本 首藤奈知子キャスター、山内沙紀ディレクター)

“1つ決めたらグッと突き進む”忠勝とリンクした思い

首藤奈知子キャスター

撮影に入られて、現場の雰囲気ってどうですか。

山田裕貴さん

松潤さん、もう「殿」って普段は呼んでるんですけど、本当に殿がものすごいみんなを巻き込んで良い雰囲気にしてくださってるんですよ。ちょっとペースが落ちてきたら「はい、やるよー」って言って殿が率先して声をかけていたり、コミュニケーションのために僕らキャストとかスタッフさんともいろいろディスカッションしていたり。「もう本当に殿じゃん!」みたいな。殿のために頑張りたいなって思える現場ですね。

―山田裕貴さんは2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』にも出演し、今回は大河ドラマ2回目。ほかにも連続テレビ小説『なつぞら』の雪次郎、『ちむどんどん』の博夫など、心優しい青年の役を演じてきました。それが今回『どうする家康』で演じる本多忠勝は、生涯を通じて家康を支えた「徳川四天王」のひとりで、57回の戦に参加してかすり傷一つも負わなかったという武将だそうですが・・・。

(本多忠勝役の)オファーが来た時は、どんな気持ちでした?

“戦国最強のサムライ”なんですよ。なんで僕なの?って思ったんですよ、最初。

今まで本多忠勝をやってきた俳優さんはすごく武骨なイメージで、僕のこと知らない人たちは「なんでこの子なんだろう」とか、知ってくれてても「うわ、山田裕貴なんだ」っていう驚きがあるのかなとは思うんですけれども、演じてみたら僕に心持ちとして備わってる部分、自分が俳優を始める時の感情とリンクする部分が結構あって。

―どの辺がリンクしたなって思われました?

野球を中学校までやってたんですけど、父親がプロ野球の仕事をしていたこともあって、「プロ野球選手にならなければ、この地球上に一人勝てなかった男を作ってしまう」みたいな感覚が子どもの頃からあったんです。「やめたら、諦めたら死だ」くらいに思っていました。大人になった時に、親子であろうが、人生というものは誰かとの勝負じゃないっていうことには気付くんですけど…。結果的に挫折して、どんなことがやりたいだろうって考えながら学生時代過ごしました。

そのころ人の心にすごく興味があったので、心理学を学べたらと思っている時に「そういえば俳優さんって心の職業だよな」って思って。俳優だったら1回の人生でいろんな(感情を)体感できるんじゃないかって俳優の道を進むにあたって、「もう次は絶対に死ぬまでやり遂げよう」みたいな覚悟が18歳の時にできました。忠勝もずっと殿に従ってついていく男で、何かのことを1つ決めたらグッと突き進む、そんなところと自分を重ねましたね。

―殿の気持ちや、自分の心の動きがどうなのかって考えることも、お好きなんですね。

そうですね。まだ1話放送前ですよね、これ。2話でちょっとそういうシーンが来て…。

詳しくは言えないですけど…ものすごく俳優冥利に尽きるというような、お芝居じゃなくなったなって思えるぐらい殿と対話できたような気がしました。

―すごい。もう2話でですか?

はい。そこが本多平八郎忠勝にとってすごく大事なシーンだし、皆さんにどう受け取ってもらえるか楽しみだなとか思いながら。

―では役作りという意味では、「自然と」できたのでしょうか。

そうですね。家で「こうかも、ああかも」って考えることは一人分の脳なのでそんな大したこと考えられない。だから、僕はいつも現場のセットの空気感と、衣装さんに衣装を着せてもらってメイクしてもらって初めてスイッチが入る。いろんな力を借りながら、お芝居する相手に言葉をもらって、それに返していく。

その中で、2話のところは自分が想像もしないような、本当にこの戦国の世の人たちは毎日生きるか死ぬか分からない状況で、こんなことを思うのかもなって。それはやっぱり松潤さんが相手だったっていうのもあるし、演じる中ですごく信頼を置いてもらってるような気がして、これが「家康と忠勝」なのかもしれないなって。僕はそこで役の感覚はつかんだというか。

“ブレブレな家康殿”と演じて見つけた役のイメージ

―過去の大河ドラマにも家康の家臣・本多忠勝は何度か登場しています。

大河ドラマ『真田丸』では藤岡弘、さん、『おんな城主 直虎』では高嶋政宏さんが勇ましい姿で演じました。山田さんが表現したい「本多忠勝」とはどんな姿なのでしょうか?

人間味を見せたいなと。武士たるもの、もしかしたら涙は流さないのかもしれないですけど、涙を流す忠勝がいたっていいじゃないかって思います。人間なんですよ、絶対。悲しいとか、悔しいとか、怒り、楽しい、うれしいっていう感情は絶対的に持ってるはずで、寡黙でグッて(静かに)やってるだけじゃなくて、時にうるさく、時に子どもっぽく、時には強く、そんないろんな顔を見せる忠勝にできたらなって思いますね。

―ちょっとこれまでのイメージとは違う忠勝?

武骨でクールで無口なのも全然良いんですけど。心を動かして前に出してないと、そうそうたる面々がいらっしゃるから、たぶん印象のないキャラクターになっていってしまう。それは忠勝をやらせてもらっている以上もったいない。だから面白いことができればなと。

ここでできる顔は何なんだろう、殿のことを思っているのか、はたまた死んでいった者のことを思っているのか、純粋に楽しんでいるのかとか…毎シーン毎シーン、何を思っているんだろうって考えています。

―たしかに、人間味があったから(家康と)長く一緒にいられたのかもしれないですよね。

僕がそばから見ている家康殿は、この時代で一番優しい人だったと思うんです。「どうする」って決められないから「どうする家康」っていうタイトルなんですけど、どうするか決断をしないことって、人を決めつけないとか、今この状況を決めつけないとか、思いやりがあるんですよね。この(戦国)時代、裏切りや敵を倒していく、そんな世の中ですから。優しかったから(徳川の)時代が長く続いたんだろうなと思います。

今までの家康のイメージとは違うので、ブレブレになってる殿を見ると、「もう、何やってんの」って思いながら見ると思うんですけど、この時代で一番優しかった男が、必死に悩んで頑張って、突き進んでいくお話なので、そういうところを見てもらえたらなと。

“チーム家康”から刺激受ける日々 地元での撮影裏話も

―「どうする家康」の注目のひとつは、個性あふれる徳川家の家臣団ですね。

大森南朋さん演じる家臣団のリーダー、酒井忠次は宴会でえび踊りを披露するなどムードメーカーであり“まとめ役”。また、鋭い頭脳をもつ外交役として家康を支えた石川数正は、松重豊さんが演じます。そうそうたる皆さんの中で見て学ぶところってありますか。

いっぱいありますね。まだ登場時、本多平八郎忠勝は若いんですよ。13歳ぐらいからスタートなので、あどけなくていいし、若々しくていいんですけど、これだけ渋い俳優さんたちがそろっていると、甲冑を着ているだけで「俺、浮いてないかな」とか「なじめてないんじゃないか」とか、ものすごく不安になりました。それを皆さんに吐露したこともあります、「すごい不安です」って。だから目線一つ、動き一つ、日々(みなさんの演技を見て)感じることはいっぱいありますね。

―でも、不安を正直にも言える現場で、優しく皆さんが包み込んでくれているんですね。

はい。「別に全然大丈夫だよ」「やりたいようにやっていいよって」。この徳川の家臣団の皆さんと一緒にいることが多いんですけれども、殿をはじめ、家臣団の皆さんはすごく素敵な俳優さんたちばかりなので、一緒にお芝居できるのは本当にうれしいなって思います。

地元の愛知で少し撮影があったので、それも楽しかったです。鬼まんじゅうっていう地元の名物を差し入れしたら、グルメな松重さんが「これ美味しいよ」って言ってくださって。地元に帰れるっていうのはすごいうれしいですね。

まだ物足りない!?“最強サムライ”のアクション

―山田裕貴さんの俳優デビューは、2011年の『海賊戦隊ゴーカイジャー』のブルー役。映画『東京リベンジャーズ』(2021年)のドラケン役でも激しいアクションシーンを披露しています。今回の本多忠勝役の起用について、磯智明チーフ・プロデューサーからは山田裕貴さんに対する印象を「アクションもできる本格派の俳優さん」と話がありました。実際のアクションシーンはどうですか?

こんなこと言っちゃアレかもですけど…僕もっとやりたい(笑) 。

―おっ!物足りないですか、アクションシーン。

全然足りてないです。結構アクション作品やってきてて、その中でご一緒してきたアクション監督の方がまた今回の現場でも一緒になって、「もう山ちゃんならできるっしょ」っていう感覚なんですよ、毎回。だからもっと「これやるんですか?」っていうぐらいのやつやりたいですね。だから申し訳ないですけど、まだ全然物足りないです。

―まだまだできると。

うわ、これできないかも、難しい、って時にやっぱ燃えてくるんで。

ただ“今”を一生懸命生きたい

―本当にいろいろな作品で山田裕貴さんの姿を見るんですけれども、さらにどんなことに挑戦していきたいですか。

やりたい役が頭の中には4、5個あるんですけど。それよりも、僕はこんな人生になると思わなかったんですよ。もう僕の想像を超えていて、どうなるか分かんないなって思ってるんですね。僕が日々お芝居することによって、皆さんにそれが届いて、評価してもらって大きくなっていってる。

やりたいことをやれているってよりも、やらなきゃいけないことやってきた感じだから、これからのことが僕には想像つかなくて。ただ、“過去も見なくて良い、未来のことも考えなくて良い、ただ今を一生懸命生きていれば良い”っていう言葉があって、僕は今、必死に皆さんに見てもらえるように一生懸命やってるだけっていう感覚。次のことを考えていないし、その連続がつながっていけば良いなっていうのは思います。

―やり続けてたら、またやりたいことが膨らんでいくんでしょうね、きっと。

この世界、本当に戦国の世のような厳しさもありますからね。もちろん、本当に生死が関わるってことではないですが、例えばこの忠勝が皆さんに受け入れられなかった場合、その俳優は死にますからね。

―厳しい世界だと…。

だから、生き続けるっていうこと。それは俳優としても、下手なお芝居はできない。何がうまいかも分からないんですけど、一生懸命、熱を注ぐことしかできないなっていうのは思います。

ひとつひとつの質問に、丁寧に言葉を選びながら答えてくださった山田裕貴さん。

松本潤さん演じる“殿”とのシーンや、本多忠勝の喜怒哀楽をどう表現するのか今から楽しみです。

みなさんもぜひ、ご覧ください!

※インタビューは12月1日に収録しました。読みやすくするために一部修正しています。