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「家族に会いたい」オミクロン株懸念で入国制限 日本の水際対策強化に翻弄される人々

NHK
2021年12月21日 午後5:31 公開

新たな変異ウイルス、オミクロン株の感染が世界の多くの国や地域で確認されています。
日本は、11月末、各国でオミクロン株の感染が広がっていることを受けて水際対策を強化しました。このうち外国人の新規入国の制限をめぐって、長期の在留資格のない日本人の外国人配偶者の入国ビザが、一時的に停止され、日本に入国できない状況となっています。

【2021年12月13日放送 2021年12月17日更新】

家族そろって帰国しようとした矢先に・・・

両親の介護のための渡航が延期になった杉田さん(仮名) 「ちょっと血の気がひくような思いですね」

ドイツに住む日本人女性の杉田さん(仮名)は、ドイツ人の夫と2人の子どもと暮らしています。日本に暮らす両親が2人とも認知症になり、介護のため帰国する必要がありました。
家族でそろって帰国しようとしていた矢先、日本の政府が外国人の入国を制限したことで、夫の短期滞在のためのビザが突然無効に。1人では両親と子どもの面倒を見ることが難しいため、いったん帰国を断念しました。

杉田さん(仮名) 「乳幼児がおりますので、夫のサポートは必須。なんとか家族での入国を認めていただきたかったんですけども、それが難しい」

外務省は
・病気の人の看護や介護
・家族の危篤や死亡
・未成年者の渡航の同伴など、「特に人道上、配慮すべき事情がある場合は入国を認める」としています。

この女性の場合も、外務省が示す例にあたるとみられますが、審査などが完了するまでにさらに時間がかかる可能性があり、すぐに帰国できる状況ではありません。
(※今回の放送後、女性の夫は事情を証明する書類とともにビザの再申請の審査を受け、ビザの停止から2週間後に再度ビザがおりたということです)

杉田さんの夫 「これまで帰国を目指して人との接触回数減らしてきたのに。とても悲しい。これまでやってきた感染対策が無駄になった気持ち。一緒に暮らしているのだから感染リスクは変わらないと思う」

家庭がバラバラに 当事者の声

当事者を対象にインターネットでアンケートを行ったところ、外国籍の配偶者が入国できずに夫婦が会えないケースや、国籍の違う子どもと会えないケースなど、多くの家族に影響を与えていることが明らかになりました。

「日本に住む子どもと会えず、家庭がバラバラになった」、「家族に会えない日が続き、めまいや頭痛に悩まされている」など、アンケートでは精神的に追い詰められているという声も多く見られましたが、こうしたケースが外務省の「人道上、配慮すべき事情」にあたるのかは明確ではありません。

こうした状況の改善を求めて、署名活動も始まりました。12月17日時点で、およそ9600人が賛同し、措置の撤回を求めています。

署名活動を始めた新井卓さん 「実際その措置によって何が起こっているのかということを知ってほしい。入国ができないと本当に困る人がいた場合に、それはちゃんと救済してほしい」

感染症対策と人道的な側面 どう考える?

当事者たちの間に不安や混乱が広がる中、日本の対策をどう考えていけば良いのか。この原稿を書いている12月17日時点ではまだ、オミクロン株の感染力や病原性についてわかっていないことも多く、感染症対策と人道的な側面とのバランスをどうとるかが課題となっています。日本は感染症対策として、外国人に原則ビザの取得を義務づけるなど入国を厳しく制限してきましたが、今回さらに水際対策を強化した形です。しかし、例えばシンガポールやドイツなどは外国人の配偶者の入国を原則認めているのに対し、日本は人道的な側面でまだ配慮が足りないという指摘もあります。

東京経済大学 教員 寺中誠さん 「ウイルスは国籍を選ばない。外国人を理由に入国できないのは根拠がない。国籍を根拠にすれば、海外と関係がある人たちに不当な扱いが集中してしまう」

一方で今の水際対策は、オミクロン株が入ってくるのをある程度抑えていると評価する声はあります。その上で今後の対応について、感染症の専門家で厚生労働省の専門家会合のメンバーの和田教授は、感染状況に応じたルールの指標などを公表していくことで、先行きが見えないでいる国民の不安を軽減できるのではないかとしています。

厚生労働省の専門家会合メンバー 国際医療福祉大学 和田耕治教授 「世界でオミクロン株の感染が広がる中で、どう国境をまたぐ移動を可能にするか、今の対策緩和の時期や指標など見通しを示していく必要がある」

感染拡大を防ぐために、本来、行えたはずの自由な移動を一定程度制限する以上、国内の感染状況などを踏まえて入国緩和の基準やタイミングをあらかじめ示すなど、対応の方向性をできるだけ明確にしていくことが欠かせないと、取材を通して改めて感じました。

(国際部 記者 田村銀河)

(社会番組部 ディレクター 江口ひな子)

【2021年12月13日放送】

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