小栗旬さんに聞く 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』主人公・北条義時は「異色」!?

NHK
2022年1月6日 午後5:00 公開

2022年1月9日。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が、いよいよ始まります。 舞台は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて。源平合戦や鎌倉幕府誕生を通して繰り広げられた権力の座を巡るパワーゲームを、シチュエーションコメディの名手・三谷幸喜さんが描きます。 主演を務めるのは小栗旬さん。これまで数々の大河に出演し、今回は初の主演。その意気込みをぜひ聞きたい!と思っていましたが・・・小栗さんの言葉は意外なものでした。 「主人公だが主役ではない」。 それって、どういう意味なのでしょうか?? インタビューの様子は1月7日の「おはよう日本」7時台で放送予定です。こちらの記事では、企画に入りきらなかった内容も含めてたっぷりお届けします。

1月7日の放送はこちらから(NHKプラスで1週間配信予定)

(インタビュー:桑子真帆アナウンサー / 太田緑ディレクター)

「いろいろな人が“遊びに来てくれる”」現場

桑子:
今日はよろしくお願いします。撮影が始まってからもう半年がたちますが、現場の雰囲気はいかがですか?

小栗:
雰囲気ですか。やっぱり大河は、ちょっと普通の作品とは違うかな。
毎日、撮影現場に行っているのですが、日々、いろいろな方が遊びに来てくれるような感じです。
「遊びに来る」という表現は、少し違うかもしれませんが。

桑子:
遊びに来てくださるという表現が出るくらい楽しんでいらっしゃる?

小栗:
はい。楽しいです、すごく。

桑子:
ハードさはどうですか?

小栗:
今のところはまだそんなにハードだと感じていないですね。これまで体験してきたものに比べると、ものすごく適度なスケジュールで撮影できています。過去の大河で言うと、『八重の桜』に出演していたときは、一生終わらないんじゃないかと思う現場だったですからね。

桑子:
そんなに大変だったんですね!

小栗:
『八重の桜』で撮影した象山塾のシーンは、本当に一生終わらないんだろうなと思ったりしていました(笑)。

初の主演!“主役らしくない”義時を演じるということ

小栗さんは、大河ドラマ8作品に出演。 最近では、2013年放送の『八重の桜』で、幕末の思想家・吉田松陰を。 2018年放送の『西郷どん』で、幕末の英傑・坂本龍馬を演じており、今や大河ドラマ常連の俳優となっています。 そして今回は、北条義時役で初の主演。役への向き合い方に変化はあったのでしょうか?

桑子:
数々の大河にご出演いただいてきましたが、今回は主演という事で、作品に臨まれるご自身の心持ちですとか作品との向き合い方は、これまでと大きく異なるものですか?

小栗:
撮影に入る前はいろんな思いを持っていましたし、どうなるかなと思っていました。
けれど、自分が演じている北条義時というのは、“主役、主役”しているキャラクターじゃないので、ありがたいことにと言ったら違うのかもしれないですけれど、 “主役だから”といった部分での苦労は、あまり感じずにやらせてもらっているかもしれないです。

今回のタイトルにある『鎌倉殿』(かまくらどの)とは、鎌倉幕府の将軍のこと。もっとも知られているのは、鎌倉幕府をひらいた征夷大将軍、源頼朝ですよね。 そして『13人』は、鎌倉殿を支えた13人の家臣団のこと。 大河ドラマの主人公・北条義時は、この家臣団のひとりで、頼朝亡き後、最終的に権力を手中に収めた人物です。義時はもともと、伊豆の弱小豪族の次男坊で、ドラマの序盤、争いごとを積極的には好まないキャラクターとして描かれています。 ところが、姉・政子が、権勢を誇る平家に追われる源頼朝と結婚したことをきっかけに、運命が一変。周囲に振り回されながら、強大な平家に立ち向かう大博打へと、身を投じていくことになるのです。

小栗:
義時は、どちらかというと、ものすごいパワーを持っている人たちに振り回されながら過ごしていくことが多い。もしかしたら、義時が引っ張っていくようなキャラクターだったら、もう少し違う振る舞い方になったのかもしれないですけれども。そういった意味で、今回の大河ドラマに臨む自分の心持ちとして、そんなに頑張らなくてもいいかなという感じでいられるのかもしれないです。それに、義時には主従もいないですからね。「こいつら、俺が引っ張らなきゃ」みたいなこともないので。

桑子:
そういう意味では、これまで大河ドラマの主演の方々を見て抱いてきたイメージと違いはありますか。

小栗:
これまで自分が参加してきた大河ドラマは、主演の人がすごく引っ張っていっているなと感じる現場が多かったんです。主人公がいて、そこに主従と呼ばれる仲間たちがいて、大きなチームとなって撮影をしていて。それを、羨ましいなと思ってみていました。
一方、今回、義時には、そういう人がいないために、心のよりどころというか、「こいつらがいれば俺はいけるぜ!」みたいなことが、あんまりないんですよね。大河の主演をやらせてもらう上で、そういったことは期待している部分があったので、「あれ?今回、自分の周りには、信じられる人が誰もいない!?」みたいな(笑)。

桑子:
義時という役だから、そこの部分は、ちょっとかなわなかったですかね。

小栗:
はい。義時を演じていると、どこかで常に誰かのことを疑いながらいなければいけないみたいなところがあるので、複雑な感じです。
今のところは、この人に絶対ついていかなければいけないという頼朝(大泉洋さん)と過ごしているんですが、この作品を通して最初から最後まで一緒に走る人って誰なんだろうって考えてみると、(北条政子役の)小池栄子さんと、(三浦義村役の)山本耕史さんぐらいだと思うんですよね。いろいろな出来事があって、どんどん皆、途中でいなくなってしまう。

桑子:
義時自身が振るい落としていく人もいるわけですよね。

小栗:
いっぱいいるんです。だから複雑です。

“主役も作品のピース” 40歳を迎えるからこその新境地

“引っ張らない主演”という、自らが抱いていたイメージとは異なる主人公・義時を演じる、小栗旬さん。 20年のキャリアを積みあげ、40歳を迎えようという今だからこそ、難しい役柄と向き合うことができているといいます。

小栗:
もう少し若くて、それこそ主演をやり始めたころは、「俺が引っ張っていくんだ」と肩肘はりながらやっていた時もあったんですけど、それをしたところでよくなるわけでもないし、それをしなかったからといって悪くなるわけでもないというところを経験してきた。
だからこそ今は、結局、あくまで僕らも作品を作っていく上でのひとつのピースでしかないと、そこは特に考えずにいようと思っています。本当にすべての部署の皆さんが、等しく重要であると思っているので、(主演だからといって)特に、こうしよう、ああしようというのはないです。

あと、今回の現場では、40歳になろうとしている自分が若いほうなんです。大河ドラマという作品のありがたいところで、これまで数々の主演をされてきた方たちが、自分を囲んでくださっています。それぞれ、現場での振る舞い方、盛り上げ方、締め方も理解されている方たちばかりで、僕は、皆さん好きにやってくださいという感じで、しっかりされている方に甘えている状況なのかもしれません。そして、北条義時というキャラクターには『甘え』のような部分があります。そうした『状況』と『キャラクター』をひとくくりに抱えてやっている感じかもしれませんね。

桑子:
40歳を迎えられる節目に、北条義時を演じることの意義を、どんなふうに感じていらっしゃいますか?

小栗:
本当に自分にとっては、良いタイミングでした。若くもなく、そして、老いをそこまで感じているわけでもない今この瞬間に、義時という人物の若い時から人生が終わるまでを演じさせていただくのは、今ぐらいの年齢が一番いい時だったのかなと思っています。めぐりあわせのありがたみを感じています。

“キャラが濃い”共演者たち 三谷脚本に大泉洋さんが・・・

小栗:
撮影に入る前に監督陣とお話しした時、この作品はしばらく「主役って誰なんだっけ?」って思われた方が面白いと思うんですよね、って言われて。自分としても、それはものすごくいいなと思いました。あくまで、この『北条義時』という人は、はじめのころは埋もれている存在というふうに見えていた方がいいのかなと思って。 

三谷さんが、「キャストそれぞれのキャラクターや顔を思い浮かべながら書いている」ことがものすごく伝わってくる脚本なので、その人が動くとそこにキャラクターが立ってくるという感じがいつも現場にはあるんですよね。本当に、すごくキャラクターの濃い人たちが次から次へと出てくる。

桑子:
序盤で義時が仕える源頼朝を演じている大泉洋さんですが、一緒に演じられている中で、どんな印象を持っていらっしゃいますか。

小栗:
洋さんは、作品の捉え方とか、芝居の捉え方というものがちょっと自分とは違う方で。お客さんにとって、一番いい形で受け取れるものってなんなのかということを、常に考えている人だと思うんですね。だからこそ、そこに対して自分とちょっと違うなと思う時には確実に意見も言われるし、自分たちにもアドバイスをくれたりするんですよ。そこは非常にありがたいなと思っている点です。
三谷さん脚本の独特なところ・・・すごくシリアスなシーンに突然ちょっと笑いが入ってくるみたいなところって非常に難しいんですよね。そういったシーンを演じるとき、どこかで自分は、下手に笑いを取りに行ったり、面白くしようとして演じたりとかっていうことではなく、演者がまじめにやった結果が滑稽に映ればいいと思っている部分があるんですけれど。でもそれが時々、もったいない形になっていることもあったりするんですよね。

桑子:
もったいないというのは?

小栗:
(笑いのシーンは、それとして)わかりやすく表現した方が、お客さんにとっては、「あ、ここ笑っていいところだったんだ」って伝わるんじゃないの?と。洋さんは、そういったことを非常に考えられている方なので、そうした意見はとても参考になるなと思っています。

義時の姉で、源頼朝の妻・北条政子を演じる小池栄子さんについても聞いてみました。

小栗:
存在が強いので、いるだけで安心するって感じですね。小池栄子さんって、彼女と一緒にお芝居した人たちを勝手に輝かせる人っていうイメージが自分の中ではあって。それは過去の彼女がやってきた作品から感じることなんですけど。こうやって何度も栄子ちゃんと芝居をさせてもらっているということは、俺は彼女に勝手に輝かせてもらっているんだろうな…なんて思いながら現場にいたりもします。

桑子:
信頼を置いてらっしゃるんですね。

小栗:
はい。

桑子:
共演者の方の中で、ほかにも刺激を受けていらっしゃる方はいますか?

小栗:
(梶原景時役の)中村獅童さんは、所作・立ち居振る舞いに関して、ちょっと自分がうまくいってなかったりする時には、必ずチェックをしてくれて言いに来てくれるので、非常にありがたいなと思っています。

小栗:
この『鎌倉殿』の撮影に入る前に映画で共演させていただいた時、獅童さんに、「ちゃんとした身のこなし方を勉強したいんですけど、どうしたらいいですか?」という話しをしたら、獅童さんからご紹介いただいて、日本舞踊を習う機会をいただいたんです。
それで、鎌倉時代の所作に膝行(しっこう)といって、膝で詰めていく所作があるんですけれど、これは、体の軸の置き方みたいなものがちゃんとできていないと、バランスが悪くなり、格好悪く見えてしまうというもので。そういうことは学んでおいた方がいいんじゃないかって獅童さんにアドバイスをいただいて。事前に学ぶ時間を作っていただいたので、本当に助かりました。

「“義”が多すぎる」!撮影秘話 見どころも

撮影の裏話も教えていただきました。それは、名前に関する“ややこしい”お話―――

小栗:
十数話くらいまでは、誰が誰なのか覚えるのも大変かもしれないですね。この作品は。
『義』が多すぎて。誰が『義時』でだれが『義盛』かみたいなことになってきちゃうんですよ。
あるシーンなんか、本当に最初の文字が全員『義』の人たちしか集まってないと、時々自分も人のセリフを覚えて行っちゃったりして。

桑子:
そうなんですか!

小栗:
台本に、義時、義村、義時、義村って、二人のせりふが交互に続いているところがあって。ある日、僕、義村さんのセリフをすっかり自分のセリフだと思って、段取りのときにせりふを言ったら、(義村役の)山本耕史さんから「旬君、そのセリフ言いたい?」って言われて。「あ、いえ、え?これ俺のじゃなかったでしたっけ?」て台本見たら義村のセリフで。「俺すっかり自分のセリフだと思ってました」ということがあったんです。

桑子:
なるほど。この時代ならではですね(笑)。
改めて、今回の大河ドラマの見どころを教えてください。

小栗:
今回の大河は、ホームコメディみたいな部分もあり、サスペンスもあり、ちょっとしたミステリーもあり、人間ドラマももちろんあって、そこに三谷さんのユーモアが混ざっている・・・義時たち登場人物が、ただただ真面目にその時代を生きていただけではないということを、お伝えできるのではないかと思います。
ドラマといわれるものの、すべての要素が入っている『鎌倉殿の13人』を楽しんでいただければと思います。

落ち着いた雰囲気の中にも、時折ユーモアを交えてお話しされる小栗さん。
謙虚でありながら、責任感もしっかり伝わってくる。こんな座長って素敵だなと感じました。
小栗さん演じる義時を中心に、どんなドラマが待ち受けているのか。
わたしも今から楽しみです!皆さんも是非、ご覧ください。

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